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アングル:国外移住か残留か、大統領選に決断託すベネズエラ国民

ロイター / 2024年7月8日 10時32分

 かつては石油産業で栄えた南米ベネズエラ西部の都市マラカイボ。その貧困地区で暮らすダニエル・ブリセノさん(44)は、米国への移住を許可する書類が届いていないかと郵便受けを確認するのが日課だ。写真右はブリセノさん。左は母親のプラヘディス・リベロさん。6月13日、マラカイボで撮影(2024年 ロイター/Gaby Oraa)

Mariela Nava Tathiana Ortiz

[マラカイボ/サン・クリストバル(ベネズエラ) 2日 ロイター] - かつては石油産業で栄えた南米ベネズエラ西部の都市マラカイボ。その貧困地区で暮らすダニエル・ブリセノさん(44)は、米国への移住を許可する書類が届いていないかと郵便受けを確認するのが日課だ。

過去10年間、電力や水道といった基本インフラの急激な不足に苦しみ続けているマラカイボの状況にうんざりし、ブリセノさんは母親とともに米国への移住を望んでいる。

ただ、7月28日に予定されている大統領選挙の結果次第では気が変わるかもしれない、とブリセノさんは言う。

「政府が変わるならベネズエラに残りたい。石油産業が完全に再開すると分かっているから」

ブリセノさんはベネズエラの経済危機のあおりを受けて2020年に失業するまで、15年間にわたって油井採掘の監督者として働いていた。

与党・統一社会党(PSUV)を率いるマドゥロ大統領に挑む野党候補のエドムンド・ゴンザレス氏は選挙活動の中で、長年にわたる経済的・政治的な情勢不安により祖国をあとにした約770万人のベネズエラ人を帰国させると約束している。ゴンザレス氏が強調するのは、家族の再会を願う声だ。

選挙で現政権の続投が決まれば、より多くの国民が国外移住を目指す可能性もある、とコンサルティング会社ORCコンサルトレスのオズワルド・ラミレス代表は言う。

ORCが5月に実施した調査では、大統領選で支持候補が勝利しなかった場合、約16%がすぐに国外へ向かうと回答。マドゥロ氏よりも野党候補の支持者の間で、その傾向が極めて高かった。

すでに近隣国への移住を選択したベネズエラ人もいる。約280万人がコロンビア、約150万人がペルー、約56万8000人がブラジルで暮らしている。また、米国への入国を目指して北上する人々も急増している。

首都カラカスにある高等経営研究所(IESA)の研究者らは、今回3期目を目指すマドゥロ氏が2013年に大統領に就任して以降、ベネズエラの国内総生産(GDP)の73%以上が失われるなど、経済危機に見舞われ続けていると指摘した。

また、カラカスを拠点とするコンサルティング会社ポデル・イ・エストラテイアのリカルド・リオス代表は、多くのベネズエラ国民が生活水準の悪化に歯止めをかけるため、マドゥロ氏以外の候補に票を投じたいと考えていると分析する。

ただ、西側諸国の政府は、同国で自由で公正な投票が実現されるには大きな障壁があるとの懸念を示す。マドゥロ氏が2期目に再選された2018年の大統領選では、選挙が見せかけに過ぎないとして野党や多くの欧米政府から非難の声が上がった。

<再建には「時間がかかりすぎる」>

もし仮に政権交代が実現したとしても、その影響は小さく「時すでに遅し」と考えている人もいる。

前出のブリセノさんの母親は、米国に住むもう一人の息子と一緒に暮らすことを望んでいる。現在は西部ユタ州で配達員として働き、マラカイボで暮らすブリセノさんたちに食費や医療費として毎月300ドル(約5万円)を仕送りしている。

米国の政策に基づき、ベネズエラ、キューバ、ハイチ、ニカラグアからの移民が米国で申請の審査を受けている間、その家族は最長1年、合法的に資金を援助することができる。ブリセノさんの兄弟も例外ではない。

ブリセノさんの母プラヘディス・リベロさんは政権交代には懐疑的な見方で、いずれにせよベネズエラを出るつもりだという。台所でニンニクの皮をむきながら、こう語った。

「現政権はベネズエラを良くしていない。かつての状態を半分取り戻すにも、時間がかかりすぎるだろう」

マドゥロ大統領は以前、ベネズエラを出国した移民が「より裕福な国のトイレ掃除をしている」と笑いものにしたこともあった。だが今回の選挙期間中は、同国の経済が回復しつつあるとして、こうした人々に帰国を呼びかけている。

マラカイボから南に約430キロ離れた、コロンビアとの国境近郊の都市サン・クリストバルにある病院では、看護師のユビセイ・チャコンさん(29)が月に約130ドルを稼いでいる。

6歳の娘を育てるチャコンさんは時折、個人的に患者の世話をして1日あたり30ドルの副収入を得ているという。

それでも、生計を立てることは困難な状況だ。非政府組織「ベネズエラ教師連盟・社会情報分析センター」が発表した5人家族の5月の平均食料価格は、約547ドルだった。

多くの国民と同様チャコンさんも、より良い生活を求めて出国を考えている。

「外国に行けば、もっと働くことになるとわかっている。ただ、労働という犠牲を払えば家計の問題は解決し、平穏や安定、安心感を得られる」

マドゥロ大統領の続投が決まれば、国外移住が唯一の選択肢になるかもしれない、とチャコンさんは言う。一方で野党候補のゴンザレス氏が勝利すれば、「雇用機会が増え、労働者としての待遇も改善するだろう」と楽観的な見方を示した。

「国を去るのは悲しい。誰が勝つか、その結果次第だ」

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