LIBOR移行、市場参加者の迅速な対応を=雨宮日銀副総裁
ロイター / 2021年6月8日 21時52分
6月8日、日銀の雨宮正佳副総裁はロンドン銀行間取引金利(LIBOR)の公表停止に伴う対応について、移行作業の先送りが続けば膨大な金額の契約の移行が難しくなり、日本の金融システムや金融市場に重大な影響を及ぼしかねないと警鐘を鳴らした。2019年7月撮影(2021年 ロイター/Issei Kato)
[東京 8日 ロイター] - 日銀の雨宮正佳副総裁は8日の講演で、ロンドン銀行間取引金利(LIBOR)の公表停止に伴う対応について、移行作業の先送りが続けば膨大な金額の契約の移行が難しくなり、日本の金融システムや金融市場に重大な影響を及ぼしかねないと警鐘を鳴らした。市場参加者に改めて迅速な移行作業を求めた。
米ドルを除く全通貨のLIBORが今年末に公表が停止されるが、金融機関が保有している円LIBORを参照した契約のうち、今年末を越えて満期が到来するものは昨年末時点で計2000兆円に達する。
雨宮副総裁は、移行には多くの人員を投入して事務運用の変更やシステムの改定など大きなコストが掛かるため、「後戻りが効かない分、判断は慎重になる」と指摘。「『他者の動向や市場のスタンダードを見極めてから自分の行動を決定する』というインセンティブが働きやすくなる」との見方を示した。
しかし、移行作業の先送りが続くことで秩序だった移行が難しくなり、金融システムや金融市場に重大な影響が生じかねないと警戒感を示した。雨宮副総裁は質疑応答で、移行対応がうまくいかなければ「個々の取引だけではなく、市場取引全体が大きな混乱に陥るリスクがある」と述べた。
<気候変動対応、ミクロの資源配分や市場中立性など課題>
雨宮副総裁はまた、日本経済は「大きく見れば回復途上にある」と指摘する一方、新型コロナウイルス感染への警戒感から消費者の慎重な行動がしばらく続く可能性があり、宿泊や飲食など対面型サービス業を中心に経済活動がコロナ前と比べて低めで推移する蓋然性が高いと述べた。
9月末に期限となる「新型コロナ対応資金繰り支援特別プログラム」については、「感染症の影響が今後どうなるのか、先行きの展望なども踏まえ、必要と判断すればさらなる延長も検討する」と話した。「状況に応じて、必要であれば追加的な緩和措置も躊躇なく実施する構えだ」とも述べた。
気候変動対応については「日銀の使命に大きく関係する重要な課題」と指摘した。ただ、金融政策はマクロ経済政策であり「ミクロの資源配分や市場に対する中立性をどう考えるのかという論点もある」とし、「そうした論点も頭に置きながら、中銀として何ができるか、各国の中央銀行とも議論を重ねつつ検討していきたい」と語った。
雨宮副総裁の講演は8日午後7時に開始予定だったが、NIKKEI Financialのシステムトラブルで午後8時30分から始まった。
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