アングル:中国の女性に広がる非婚主義、出生率低下に悩む当局の難題に
ロイター / 2024年3月8日 18時39分
中国では夫や子どものいない未来を思い描く女性が増えており、政府にとって避けがたい課題となっている。写真はコピーライターのチャイ・ワンロウさん(28)。陝西省西安市で1日撮影(2024年 ロイター/Xiaoyu Yin)
Laurie Chen
[西安(中国) 7日 ロイター] - 中国では夫や子どものいない未来を思い描く女性が増えており、政府にとって避けがたい課題となっている。北西部の都市、西安でロイターのインタビューに応じたフリーランスのコピーライター、チャイ・ワンロウさん(28)もこうした女性の一人で、結婚は不公平な制度だとの考えを持つ。
「大成功を収めようが、全く平凡だろうが、女性は常に家庭で最も大きな犠牲を強いられている」とチャイさん。「これまでの世代では結婚した多くの人たち、特に女性は自分自身とキャリアアップを犠牲にして、約束されていた幸せな人生を手に入れることができなかった。自分の人生をしっかり生きることは、今とても難しい」という。
中国は人口が2年連続で減少し、出生数が歴史的な低水準を記録したことから、習近平国家主席は昨年「結婚と出産の新しい文化を育てる」必要性を強調。李強首相も今年、出産に優しい社会への取り組みと保育サービスの強化を打ち出した。
中国共産党は核家族を社会安定の基盤と見なしており、未婚の母親は汚名を着せられ、福祉手当もほとんど受けられない。しかし、若者層の失業率が記録的な水準となり、景気後退で社会不安がこれまでになく高まる中、「非婚主義」を支持する高学歴の女性が増加している。
公式統計によると、中国では15歳以上の独身人口が2021年に過去最高の2億3900万人に達した。婚姻届提出数は22年に歴史的な水準に下がった後、パンデミック期に見送られていた分の届け出があったため、昨年わずかに回復した。
共産主義青年団が21年に都市部の未婚の若者約2900人を対象に行った調査によると、結婚する予定はないと回答した女性が44%に上った。
中国では結婚して「一人前」との考え方が根強く、未婚の成人の割合は依然として低い。だが、国勢調査によると、平均初婚年齢は10年には24.89歳だった20年には28.67歳に上昇しており、高くなる傾向にある。
米在住の中国人フェミニズム活動家、リュー・ピン氏は「フェミニズム活動は基本的に(中国では)容認されていないが、結婚や出産を拒否することは、家父長制国家に対する非暴力的不服従の一形態だと言える」と指摘する。
<広がる連帯の輪>
中国当局は過去数十年間にわたり女性の教育レベルの引き上げ、労働市場への参加、社会的流動性の向上に取り組んできた。ところが、当の女性の間で政府の宣伝工作に対する反発が足元で強まっており、当局はジレンマに陥っている。
中国では独身生活を長期にわたって続けるライフスタイルが徐々に広まっており、志を同じくする人々との連帯を求める独身女性を中心としたオンラインコミュニティーが生まれている。
中国版インスタグラム「小紅書」では30代、40代の女性インフルエンサーが「結婚しない、子どもも作らない」というハッシュタグを付けて投稿、定期的に数千の「いいね!」を得ている。
南部の南寧市に暮らす新卒で無職のリャオ・ユェイさん(24)は最近、母親に子どもを持つつもりはないと宣言したと、対話アプリ「微信」への投稿で明かした。「考え抜いた末に、結婚もしないし、子供も作らないと決めた。誰にもわびる必要はないし、両親も受け入れてくれている」という。代わりに生活を切り詰め、将来の旅行のために貯金することにした。
「誰かと付き合ったり、同棲したりするのはいいと思うけれど、子どもは大きな投資なのにリターンが小さい」と話すリャオさん。老後は女友達と家を借りようと話し合っている。
インタビューした女性の多くは非婚で子どもを持たないと決めた要因に、自己探求の気持ち、家父長制的な中国の家族の在り方への幻滅、「啓蒙的な」男性パートナーの不足を挙げた。
ジェンダーの平等性も関係している。女性は一様に、女性の自主性を重んじ、家事労働の平等な分担を当然と考える男性を見つけるのは難しいと話した。
カリフォルニア大学デービス校のシャオリン・シュウ教授(社会学)は「高学歴の女性が多いのに対して、高学歴の男性が不足している」と指摘する。公式統計によると、数十年にわたる一人っ子政策の結果、22年には男性の数が女性の数を3230万人上回る見通し。
インタビューに応じた全ての女性がフェミニズム主義者を自認しているわけでも、意図的に政府に反発していると考えているわけでもなかった。だが、こうした女性たちの行動から、中国の女性が自信をつけ、それが個々人の人生の選択に表れていることが分かる。
生涯独身を貫く人の数が今後急激に増加することはないと考えるアナリストもいるが、結婚時期の遅れと出生率の低下は人口動態の目標達成を揺るがしそうだ。
リュー氏は「長い目で見れば、女性の結婚・出産に対する熱意は下がり続ける一方だろう」と予想。「これは中国が直面する最も重要で長期的な危機だ」と警告した。
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