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正念場の「アベノミクス相場」、逆回転する3つの原動力

ロイター / 2020年3月9日 18時49分

 3月9日、「アベノミクス相場」が正念場を迎えている。写真は2016年3月、都内で撮影(2020年 ロイター/Yuya Shino)

伊賀大記

[東京 9日 ロイター] - 「アベノミクス相場」が正念場を迎えている。株高・円安の原動力だった、グローバル景気拡大や流動性相場、金融緩和(効果)への期待感が急速に萎んでいるからだ。日経平均<.N225>は弱気相場入りと言われる20%安水準に到達。自律反発のパワーも溜まってきているが、海外勢の売りが強まれば、底値を探りに行く展開も想定される。

<世界の景気敏感株>

「アベノミクス相場」の原動力は「3本の矢」ではない。2012─13年の当初はある程度の期待があったが、今や財政出動は補正予算を編成してもマーケットの話題にならず、成長戦略は「場当たり的で失望に変わった」(外資系証券)という。

新型コロナウイルス禍が襲う前の「アベノミクス相場」を支えていたのは、3本の矢で残る金融緩和期待と、グローバル景気拡大期待、そして流動性相場だ。

しかし、グローバル景気は新型ウイルスの影響で大きく減速。国際通貨基金(IMF)のゲオルギエワ専務理事は4日、20年の世界経済の成長率は19年の2.9%を下回り、金融危機以降で最も低い水準になる可能性があるとの見方を示した。

日本株のイメージは世界の景気敏感株。10─12月実質国内総生産(GDP)が年率7%も下落したことも、投資家のそうした見方を裏付けてしまった。グローバル景気の減速懸念が強まる際には、流動性の高さもあって真っ先に売られやすい。

野村証券のクロスアセット・ストラテジスト、高田将成氏は、日本市場は投機的な下攻めトレードが猛威を振う局面に入った可能性が高いと指摘する。「最近の日本株は夜間に良く売られる。これまでのアベノミクス相場ではなかったことだ。CTA(商品投資顧問業者)などが本格的な日本株売りに動くか正念場に差し掛かっている」という。

<高まらない日銀緩和期待>

日銀の金融緩和期待が低いことも円高・株安を招いている一因だ。円高に対抗する政策の1つは利下げだが、金融機関に負担を強いるマイナス金利の深掘りは、地方経済に大きなダメージが及んでいる現局面では難しいと市場に見切られてしまっている。

マーケットはすでに17─18日のFOMC(米連邦公開市場委員会)で、0.5%から0.75%の追加利下げを織り込んでいる。0.1─0.2%の深掘りでは、日米の利下げ余力が浮き彫りになるだけで「焼け石に水」となりかねない。

市場が「次の一手」の最有力候補として見込むのはETF(上場投資信託)の買い入れ増額だが、急激な株安で懸念も生じてきた。

ニッセイ基礎研究所のチーフ株式ストラテジスト、井出真吾氏によると、2月末時点で日銀が保有するETFの含み益は昨年末に比べ約4.2兆円吹き飛んだ。損益分岐点は日経平均で1万9443円と試算しており、9日安値は1万9472円とギリギリだ。

日銀のETF買い入れ増額で株価が反転してくれればいいが、そうでなければ、日銀保有分の含み損化や債務超過への警戒感がマーケットの懸念材料とされかねない。

<リスクマネーの逆回転>

「アベノミクス相場」を支えていたもう1つの要因であるグローバルなリスクオン相場も変調を来している。

アベノミクス相場前夜を12年11月14日とすると、日経平均は8664円73銭から今年の高値(1月17日)2万4013円75銭まで2.77倍に上昇したが、米ダウ<.DJI>も過去最高値を付けた2月12日までの間に2.35倍に上昇している。

「アベノミクス」を評価されて日本株だけが上昇したわけではなく、信用拡大を背景としたグローバルなリスクオン相場があって、それに連動するように「アベノミクス相場」が株高を享受したというのがマーケットの一般的な見方だ。

しかし今、グローバルなリスクマネーは今、未知のウイルスに怯え、逆回転を始めている。世界的に金利は歴史的な水準まで低下しているが、投資家が怯えていてはマネーは回らない。むしろリスク資産からマネーを引き揚げようとしているのが、今の世界的な株安の需給的な側面だ。

さらに9日は原油価格の急落というショックが襲った。「原油プロジェクトの採算ラインを割り込めば金融機関の収益にも影響が出る」(国内証券)とされ、信用リスク不安が強まったのが日経平均を1000円以上も押し下げた要因だ。実際、業種別数では鉱業株に次いで値下がり率が大きかったのは銀行株だ。

一方、マネックス証券のチーフ・アナリスト、大槻奈那氏は米国の預金保険機構(FDIC)が大規模なリストラを前週5日に発表したことが「救い」だと指摘する。もし本当に金融機関の信用リスクを心配しなければならない状態なら、米政府はこの時期にFDICの人員削減はしないといういうわけだ。

しかし、すべての主要7カ国(G7)で1%以下だった10年国債利回りは、イタリアで再び1%を超えてきている。マーケットがリスクに敏感になり始めている証拠だ。「今の危機はリーマン・ショックのような金融危機ではないが、マーケットは非常に怯えている。心理的な悲観の連鎖には警戒が必要だ」と大槻氏は話している。

(編集:石田仁志)

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