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焦点:イスラエルとUAE正常化、共同声明の細部に宿る「悪魔」

ロイター / 2020年9月9日 16時43分

 歴史的な国交正常化の発表を受けてイスラエルとUAEが出した共同声明は、パレスチナが注目するように、英語版とアラビア語版に違いがある。写真は8月31日、アブダビで撮影。左からクシュナー米大統領上級顧問、UAEのガルガーシュ外務担当国務相、イスラエルのベンシャバト国家安全保障会議議長。提供写真(2020年 ロイター/Ministry of Presidential Affairs/WAM)

[ガザ/アブダビ 2日 ロイター] - 歴史的な国交正常化の発表を受けてイスラエルとアラブ首長国連邦(UAE)が出した共同声明は、パレスチナが注目するように、英語版とアラビア語版に違いがある。そこから浮かび上がるのは、ヨルダン川西岸の併合計画を取り下げるとするイスラエルの主張を、UAEが過大に解釈している可能性だ。

UAEとイスラエル、これに米国を加えた3カ国が8月31日に出したこの共同声明、英語版には「合意はイスラエルの主権拡大に向けた計画の凍結をもたらした」とある。UAEの国営通信社WAMが伝えたアラビア語版は、「この合意によって(略)、パレスチナ人の土地を併合するイスラエルの計画は停止された」となっている。

湾岸諸国の中がUAEが初めてイスラエルと関係を正常化する合意を見届けるため、トランプ米大統領の娘婿のクシュナー氏はUAEを訪れた。パレスチナで何より注目を集めたのは、この表現の食い違いだった。

パレスチナ解放機構(PLO)のサエブ・エレカト事務総長は9月1日、「2つの版を比べてほしい。(英語版は)パレスチナ人の土地併合を停止するのではなく、主権の拡大を凍結するとなっている」とツイッターに投稿した。

UAEは合意について、イスラエルが占領しているヨルダン川西岸地区の併合を阻止する手段と位置付けている。同地区は、パレスチナ側が国家樹立を希望している地域だ。

UAEの外務省で政策計画・国際協力部門を率いるジャマル・アル・ムシャラク氏は、文言の相違は単に翻訳上の問題だと説明する。

同氏は記者団に対し、「『凍結する(suspending)』の類義語として『停止する(Eeqaf)』以上に良い単語があったら教えてほしい」と語った。

ムシャラク氏は「関係正常化の前提条件の1つは、併合の停止だった」と言う。UAE政府にさらなるコメントを求めたが、回答は得られなかった。

だが、PLO幹部のハナン・アシュラウィ氏は、これはアラブ世界の世論を動かそうとする「二枚舌」だと指摘する。

<「計画に変更なし」>

「翻訳の問題だとは思わない。議論を歪めようとする不誠実なやり方だと思う」と、アシュラウィ氏はロイターに語った。

「アラビア語版は、併合の阻止に成功したように表現してアラブ世論をミスリードしている。実際には、凍結したというだけなのに」

イスラエルのネタニヤフ首相は今年前半の総選挙期間中、ユダヤ人入植地を含むヨルダン川西岸地区にイスラエルの主権を適用することを約束したが、それには米政府の同意が必要だとしていた。

UAEとの合意が発表された8月13日、ネタニヤフ首相は国民に対し、聖書で用いられる西岸地区を指す地名を使って、ヘブライ語で「米国との完全な協調のもとで、ユダヤとサマリアの地に我が国の主権を適用する計画に変更はない。私は本気だ。変更はない」と強調した。

併合の希望を維持し続けることは、右派の有権者からの支持を固めようとするネタニヤフ氏の選挙戦略であるというのが大方の観測だ。入植地の指導者たちは、ネタニヤフ氏が、併合を口にしては国際的な圧力に屈するパターンを繰り返してきたと批判する。

イスラエル外務省の広報は2日、8月13日に発表された当初の声明に付け加えることは何もない、と述べた。「この外交面での画期的成果により(略)、イスラエルは、(トランプ)大統領和平構想に盛り込まれた地域における主権の宣言を凍結することになる」

ホワイトハウスはUAE訪問時の共同声明についてコメントを控えている。事情に詳しい米関係者によると、ホワイトハウスはアラビア語訳については責任を負っていないという。

トランプ大統領は8月13日の発表後にワシントンで行われた記者会見で、西岸地区併合について「現時点では棚上げ」と語っている。

米国のデビッド・フリードマン駐イスラエル大使は、「すべての当事者により、慎重に選択した結果が凍結という表現。ご存知のように、『凍結』とは定義上、一時的な停止を意味する。今のところ棚上げだが、永遠に棚上げされるわけではない」と語った。

今週のUAE訪問の最中も、クシュナー氏が「凍結」という言葉を用いている。

クシュナー氏は通信社のWAMに対し、「イスラエルは併合を凍結すること、当面これらの地域へのイスラエル国内法の適用を凍結することに合意した」と語った。「だが、将来的には協議の対象になると確信している。とはいえ、近い将来ではない」

(翻訳:エァクレーレン)

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