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最大限の緩和「少しずつ調整必要」との意見も=10月日銀会合

ロイター / 2023年11月9日 11時24分

 11月9日、日銀が10月30―31日に開催した金融政策決定会合では、2%物価目標の実現の確度が「7月の会合時点と比べ一段と高まっている」として「最大限の金融緩和から、少しずつ調整していくことが必要だ」との意見が出ていたことが明らかになった。東京都内で9月20日撮影(2023年 ロイター/Issei Kato)

Takahiko Wada

[東京 9日 ロイター] - 日銀が10月30―31日に開催した金融政策決定会合では、2%の物価目標の持続的・安定的な実現の確度は「7月の会合時点と比べ一段と高まっている」として「最大限の金融緩和から少しずつ調整していくことが必要だ」との意見が出ていたことが明らかになった。日銀が9日、決定会合で出された「主な意見」を公表した。

<物価目標巡り温度差>

決定会合では、賃上げ交渉の出発点となる民間の物価上昇率見通しが昨年を上回っているなどとして「来年の賃上げ率は本年を上回る蓋然性が高い」とし、予想物価上昇率や基調的な物価上昇率の上昇も踏まえると「物価目標の実現が視野に入ってきた」との指摘もあった。この委員は、今年度下期は見極めの重要な局面だと述べた。

一方で、物価目標の実現を「十分な確度をもって見通せる状況にはなお至っていない」として、イールドカーブ・コントロール(YCC、長短金利操作)の下で粘り強く金融緩和を継続する必要があるとの声も出ていた。

YCCの枠組みやマイナス金利は「少なくとも2%物価目標を安定的に持続するために必要な時点まで継続する方針だ」として、「今後の賃上げ動向を始め、賃金と物価の好循環を双方向からしっかりと確認していく必要がある」との指摘もあった。

<YCCの運用さらに柔軟化>

今回の決定会合では、YCCの運用をさらに柔軟化することを賛成多数で決めた。

賃金と物価の好循環を通じた2%目標の達成には「未だ距離がある」ため、金融緩和の継続で賃上げのモメンタムを支え続けることが重要だとして、「イールドカーブ・コントロールは運用を修正しつつも、枠組みとしては維持すべきだ」との声が出ていた。

今回の柔軟化は決定会合に向けて10年金利が上昇を続け、1%到達が視野に入る中での決定となった。「米国における長期金利上昇の影響を受けて、日本の長期金利に想定外の上昇圧力が掛かっている」として、粘り強く金融緩和を続けていく必要性からYCCの運用柔軟化を支持する声が上がった。YCCの運用柔軟化で「投機的な動きを生じにくくすることにより、イールドカーブ・コントロールの耐性向上につながる」と期待する向きも見られた。

日銀は昨年12月の10年金利の許容変動幅拡大に続き、今年7月と10月にYCCの運用柔軟化を決めた。10年金利は上昇を続けているが、決定会合では「予想インフレ率が上昇し、実質金利が非常に低い中、緩和効果は十分保たれている」との指摘が出ていた。

「足元では物価上昇により投資家の金利目線が高まっていることから長期の資金調達に影響がみられ始めている」との意見もあった。この委員は「長期金利の厳格なコントロールによって、ヘッジ取引が困難化するなどの副作用は避ける必要がある」とも述べた。

一方で、物価上昇を上回る賃上げが実現するかはまだ不透明だとして「このタイミングでイールドカーブ・コントロールを修正すると、金融引き締めと受け止められる可能性がある」との意見も出た。

<円滑な金融正常化の観点からも「大きなプラス」>

今回のYCC柔軟化をやや長めの目線で評価する声もあった。ある委員は、YCCの柔軟化は「出口までの間、副作用の発現を抑制し、金融緩和を効果的に継続する」意義があると述べた上で「将来の出口以降は、金融緩和を維持しつつ円滑に金融正常化を進める上でも大きくプラスだ」と語った。

将来の出口を念頭に「『金利の存在する世界』への準備に向けた市場への情報発信を進めることが重要だ」との指摘も見られた。

<自律的な賃金・物価の好循環が必要>

日銀は決定会合で改訂した「経済・物価情勢の展望」(展望リポート)で再び物価見通しを引き上げた。

物価見通し上振れの主因はコストプッシュだとして、2%目標の持続的・安定的な実現には「コストプッシュがなくなった後も、自律的に賃金と物価の好循環が回り続けることが必要だ」との指摘が出た。賃金と物価の好循環の強まりを確認していくためには「来年の春季労使交渉とともに、賃金上昇が物価に反映されていくかも注視していく必要がある」との意見も聞かれた。

賃金動向を反映しやすく、粘着的な企業向けサービス価格の伸びが着実に高まっているとして「賃金上昇に伴う物価上昇圧力が中小企業を含めて一段と高まっていくかを注視している」とする委員も見られた。

一方で、輸入物価の転嫁や賃上げ、人件費の転嫁、価格戦略の多様化や商品の高付加価値化を組み合わせながら企業は賃金や価格を設定しているが「どの要素も依然まだら模様だ」との声もあった。

<政府側、「適切な政策運営を期待」>

YCCの運用をさらに柔軟化することについて、財務省の出席者は「適切な金融政策に取り組む観点から、適切に判断いただきたい」と述べた。内閣府の出席者は運用見直しの趣旨を対外的に丁寧に説明するよう求めた。その上で、財務省・内閣府ともに、物価目標の実現に向けて適切な金融政策運営を期待するとした。

(和田崇彦)

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