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焦点:中絶問題で米共和党に逆風、大統領選へ迫られる戦略立て直し

ロイター / 2023年11月9日 17時22分

米国で今週行われたケンタッキー州知事選、オハイオ州の住民投票、バージニア州議会選は、いずれも人工妊娠中絶擁護派と与党民主党が勝利を収め、野党・共和党は中絶問題でジレンマに直面している。写真はミシガン州デウィットで、中絶の権利を擁護する人。7日撮影(2023年 ロイター/Evelyn Hockstein)

Gabriella Borter Tim Reid

[ワシントン 8日 ロイター] - 米国で今週行われたケンタッキー州知事選、オハイオ州の住民投票、バージニア州議会選は、いずれも人工妊娠中絶擁護派と与党民主党が勝利を収め、野党・共和党は中絶問題でジレンマに直面している。

来年の大統領・議会選を制する上で不可欠な穏健派の有権者に愛想をつかされてもいけないし、長らく支持を受けてきた保守層もつなぎ留めなければならないからだ。

オハイオ州では中絶の権利を保障する州憲法改正が賛成多数で可決され、バージニア州議会選も中絶の権利が争点となる中で、民主党が上下両院で多数派を握った。

与野党のストラテジストはこうした結果について、共和党がこれまでひたすら中絶禁止を唱えてきた戦略が、来年の選挙に向けて今や「足を引っ張る要素」になっていることが証明されたと話す。

共和党は、連邦最高裁が昨年6月、中絶を憲法上の権利と認めた1973年の判決を覆したことで悲願がかなったと勢いづき、同党が優勢な全米の半数近くの州でより厳しい中絶規制を導入した。

ところが、これは保守層を喜ばせた半面、穏健派の支持者、特に女性を離反させてしまった。

つまり共和党としては、バイデン大統領や民主党との接戦が見込まれる来年の選挙において、より多くの保守票を掘り起こしつつ、世論調査では中絶規制反対が圧倒的な無党派層と郊外在住の女性の票が逃げるのを防ぐという課題が残されている。

同党ストラテジストのジョン・フィーヘリー氏は「これは中絶に関して正しい情報発信と正しい政策とは何かを理解しろという党への警鐘だ。今のやり方は、どれも有権者に不評だからだ。党は中絶を禁止しようとしていると国民にみなされる政策を推進するのをやめなければならない。(中絶全面禁止と全面擁護の)中間地点を探り当てる必要がある」と主張した。

昨年の連邦議会中間選挙でも、共和党は総じて選挙戦で中絶問題に触れるのを回避していたにもかかわらず、この問題が足かせとなって上院で過半数を確保できなかった上に、下院での勝利も限定的にとどまった。

バージニア州ではヤンキン知事に率いられた共和党が、議会選で勝てば妊娠15週目以降の中絶を禁止する方針を打ち出していた。現在の26週目以降の禁止よりは厳しくなるものの、他の南部諸州ほど過激な中絶規制ではなく、穏健派に向けてアピールする狙いだったとみられる。

それでも7日の州議会選では下院多数派を民主党に奪われ、上院でも過半数の議席に届かなかった。

ヤンキン氏陣営に直接助言を行ったある人物は、共和党が今回の中絶禁止案で折り合いをつけていたから、この程度の負けで済んだと分析。その上で、民主党側は資金面で優勢だったほか、共和党が多数派になれば結局もっと厳格な中絶規制に乗り出すと有権者に訴えたことが勝因になった、との見方を示した。

<まだ足並みそろわず>

各種世論調査によると、米国民の多数は全ての事例、あるいはほとんどの事例で中絶の合法化に賛成している。ただ、ロイター/イプソス調査では、4割強の人々が妊娠15週目以降の中絶禁止を支持していることも分かる。

バージニア州では、共和党の連邦議員候補を選出し直し、発信するメッセージを刷新するかもしれない。

同党内ではまだ、中絶問題で意見が割れており、一部は最高裁の判断に基づいて15週目以降の中絶禁止を主張している。だが、新たに下院議長に選出されたマイク・ジョンソン氏などは最短で6週目以降の禁止措置を連邦レベルで導入することを支持している。

大統領選の党候補指名を争う有力者の間でも、見解はまちまち。現在、最も支持率が高いトランプ前大統領はメッセージを「使い分け」している様子で、最高裁が中絶合憲判決を覆したのは自分が保守派判事を指名したからだと手柄だと誇る一方、共和党が与党になっている一部の州が妊娠6週目以降の中絶を禁止しているのは「ひどい間違い」だ、と9月のNBCテレビのインタビューで発言した。

指名争い2番手のデサンティス・フロリダ州知事は、6週目以降の中絶を禁止する州法に署名した。3番手のニッキー・ヘイリー元国連大使は、中絶問題で全米的な合意形成が必要だと語りつつも、具体的な制限には言及していない。

これに対し、民主党は引き続き中絶の権利擁護を掲げ、来年の大統領選に向けて党勢拡大を目指す方針。同党ストラテジストのカレン・フィニー氏は、今週のバージニア州議会選やオハイオ州住民投票などで、有権者が中絶問題に強い関心を持っていることが明らかになったと述べた。

中絶反対派団体の幹部は「共和党の政策協議者らは目を覚まし、各候補は資金をつぎ込んで民主党の攻勢に反撃するメッセージを送らなければ、これからも負けっぱなしに終わる」と危機感を募らせている。

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