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アングル:米小売り大手が天候分析の活用拡大、異常気象の影響増で

ロイター / 2024年11月10日 8時6分

 11月4日、大手ウォルマートなど米小売り大手の間で、天候データを分析してさまざまな分野で生かす取り組みが広がっている。写真は2022年12月、ニューヨークで雨の中、ホリデーシーズンの百貨店前を歩く男性(2024年 ロイター/Eduardo Munoz)

Nicholas P. Brown

[4日 ロイター] - 大手ウォルマートなど米小売り大手の間で、天候データを分析してさまざまな分野で生かす取り組みが広がっている。天候は販売動向への影響が大きいが予測は難しい。気候変動によって異常気象が増える中で小売り大手は、かつて専ら在庫管理に利用されていた天候分析を、広告を地域ごとに最適化したり、季節商品の値引き開始時期を判断したりする業務にも役立てるようになっている。人工知能(AI)技術の進化もこうした流れを後押ししている。

ウォルマートはAIソフトウエアによる在庫管理に天候分析を組み込んでいる。同社のスキンケア商品の在庫管理アドバイザー業務を請け負うカービー・ドイル氏によると、今年は米国の一部地域で秋の雨量が平年よりも多くなるとの予測に基づき、地域によって日焼け止めの値引き開始を前倒しした。数年前ならこうした経営判断をすることはなかった。

ドイル氏は 「(天候データは)当初、高レベルの計画のための予測モデルに過ぎなかった」のに対し、「今ではシーズン前の計画立案時やシーズン中にも天候の影響を分析し、販売促進活動のスケジュール立てなどにも利用している」と説明した。

ドイツのメテオノミクスや米国のプラナリティクス、ウエザー・トレンズ・インターナショナルなどの天候コンサルタント企業はクラウドコンピューター技術の進化により、以前では想像もつかなかった量のデータ量を処理できるようになっている。

気候変動による異常気象の増加で、こうしたデータに対する需要は高まっている。全米小売業協会(NRF)は7月に発表したプラナリティクスと共同でまとめた報告書で、小売業者に天候分析への関心をもっと高めるよう促した。

価格に焦点を当てた新しい天候データツールがまもなく市場に登場しそうだ。プラナリティクスと経営コンサルティング企業ベアリングポイントは小売業者が価格設定のための分析モデルに組み込めるソフトウエアの開発を進めている。

ベアリングポイントのライアン・オラボーン氏は先月のイベントで「天候は制御できないが、分析は制御可能で、価格設定は完全に制御できる」と述べた。

今年のように温暖な10月は、年末商戦シーズンを控える小売業者にとって悩みの種だ。ペレットストーブや防寒具といった寒冷気候用製品を手掛け、天候分析を活用しているトラクターサプライのハル・ロートン最高経営責任者(CEO)は先月の決算発表で「第4・四半期にビジネスを成功させるには気温の低下が欠かせない」と述べた。

プラナリティクスのフレッド・フォックスCEOによると、天候分析はトラクターサプライのような企業が冬物商品の値引きのタイミングを決めるのに役立つ。プラナリティクスはスポーツ用品小売り最大手ディックス・スポーティンググッズや家庭用品安売り大手ロス・ストアーズなどを顧客に抱えている。予測通りに11月の気温が昨年より下がるなら、今は値引きに踏み切らない方がよいというわけだ。

ホームセンター大手のロウズのブランドン・シンク最高財務責任者(CFO)氏は8月、24年5―7月の四半期の販売不振は寒冷で雨が多かった5月の天候が原因になったと説明した。

しかし、天候分析を手掛けるウェザー・トレンズの創設者ビル・カーク氏によると、こうした説明は事実に基づいていない。カーク氏のデータによれば、5月は確かに雨量が多かったが、気温は低くなかった。今年は5月としては過去6年間で最も気温が高く、過去40年でみても3番目だった。ウェザー・トレンズは小売り大手ターゲットや衣料品大手ギャップ、トラクターサプライを顧客に持つ。

ロウズはコメントの要請に応じなかった。

<気温が需要を左右>

米海洋大気局(NOAA)によると、米国では今や約3週間に1度のペースで損害額10億ドル超の自然災害が発生し、1980年代の3カ月に1回と比べて発生頻度が高まっている。

小売業者が天候による販売への影響を把握できるよう支援するため、プラナリティクスはコンピュータモデルを駆使している。同社幹部のエバン・ゴールド氏によると、今年は昨年の2倍のモデルを提供する予定で、その数は2019年の9倍となる。

メテオノミクスのステファン・ボルネマン氏は、小売業者は通常、天候によって店舗の客足や売上が影響を受けると指摘。「より厳しい天候パターンが続くなら、その影響も一段と大きくなるだろう」と予想した。

カーク氏は気温が1度変わるごとに特定の製品の売上高がどのように増減するかを分析している。気温が1度下がることに売り上げは、馬用ブランケットで7%、スターバックスのコーヒーで2%増えるという。一部の顧客は、需要に応じて価格を調整する「ダイナミックプライシング」にカーク氏のデータを利用している。

カーク氏は「小売業者が決算不調の言い訳として天候を持ち出す時代に終止符を打つべきだ」と訴える。「ウォール街はこの種の言い訳を嫌っている。投資家に対して『われわれは事業を管理できない』と宣言するようなものなのだから」

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