焦点:米長期国債の利回り急上昇 次期政権の起債政策変更見込む
ロイター / 2025年1月9日 15時4分
1月8日、 米国債市場で長期債の利回りが短期債を上回るペースで上昇し、数カ月ぶりの高水準に達した。長期債と短期債で利回りの上昇ペースに差が生じている背景には、トランプ次期政権は短期債偏重の現行政策の見直しを迫られるとの見方があるとトレーダーは指摘している。ワシントンの米財務省前で2023年1月撮影(2025年 ロイター/Jim Bourg)
Karen Brettell
[ニューヨーク 8日 ロイター] - 米国債市場で長期債の利回りが短期債を上回るペースで上昇し、数カ月ぶりの高水準に達した。長期債と短期債で利回りの上昇ペースに差が生じている背景には、トランプ次期政権は短期債偏重の現行政策の見直しを迫られるとの見方があるとトレーダーは指摘している。
バイデン政権下でイエレン財務長官は償還期間が1年以下の財務省短期証券(Tビル)の起債を増やしており、Tビルは短期金融市場の投資家から強い需要を得ている。
しかしこうした政策を進めた結果、発行済み国債に占めるTビルの割合は推奨される水準を上回っており、次期政権はこの問題への対応が避けられないとみられる。
クルーズ・アンド・アソシエーツの金利取引・販売部門の責任者、ダン・マルホランド氏は「市場は財政状況、財政赤字、そして長期国債の発行増加を織り込み、長期利回りにより高いリスクプレミアムを求めている。これはイエレン氏の政策の巻き戻しの一環だ」と述べた。
10年物米国債の利回りは2024年6月から速いペースで上昇したが、9月ごろまでは2年物の利回りを下回っていた。10年物の利回りは8日に4.73%と2023年4月以来の水準に上昇。一方、2年物の利回りは比較的安定して推移し、4.27%近辺を維持している。
トレーダーによると、22年7月から昨年9月までの期間に米国債で通常よりも長期間にわたり長期債の利回りが短期債を下回る「逆イールド」が生じたのは短期債の供給過剰が一因だ。逆イールドは足下では修正されつつある。
カーバチュアー・セキュリティーズの債券取引責任者、トム・ガロマ氏は「(短期債の発行増加で)逆イールド状態が続いたが、今ではそれは適切ではないと受け止められているようだ」と話す。
長期債の利回り上昇の要因は今後の長期債発行増加の見通しだけではない。トランプ次期政権の政策は経済成長とインフレを促進すると予想されており、こうした動きは金利上昇につながる可能性がある。
財務省は通常、短期債の発行を調整弁として活用し、借入需要の大きな変動に応じて発行規模を増減させている。しかし長期的にみると短期債への過度の依存は市場環境が変化した場合の借り換えリスクを増大させるため、望ましくないと市場関係者は指摘している。
米国債の発行残高は2019年末の23兆ドルから36兆ドルに急増しており、政府は歳出を借り入れに依存し、財政赤字を埋める流れが続くとアナリストは予想している。
Tビルが全債務に占める割合は現在22%で、財務省借入諮問委員会の推奨する15─20%を上回っている。
2020年には新型コロナウイルス関連の歳出増加に伴いこの割合が25%に達したが、その後22年には15%程度まで低下。しかし最近は国債発行全体に占める割合が再び上昇している。
財務省がすぐに長期債の発行増加に動くとは予想されていないが、市場参加者はその可能性を織り込み始めており、タイミングをつかもうと米政府の四半期ごとの調達計画を注視している。
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