IMF、中国とユーロ圏の成長予測引き下げ 「世界経済なお弱い」
ロイター / 2023年10月10日 18時26分
10月10日、国際通貨基金(IMF)は、最新の世界経済見通し(WEO)を発表し、中国とユーロ圏の成長予測を下方修正した。米首都ワシントンで2018年撮影(2023年 ロイター/Yuri Gripas)
Andrea Shalal
[マラケシュ(モロッコ) 10日 ロイター] - 国際通貨基金(IMF)は10日、最新の世界経済見通し(WEO)を発表し、中国とユーロ圏の成長予測を下方修正した。米経済は「顕著な強さ」が見られるが、世界全体の成長は依然として弱く不均一との見方を示した。
IMFは2024年の世界の実質国内総生産(GDP)成長率を2.9%と予想し、7月から0.1%ポイント引き下げた。23年は3.0%に据え置いた。22年は3.5%増だった。
IMFの首席エコノミスト、ピエールオリビエ・グリンシャ氏は記者団に、新型コロナウイルスの世界的流行やロシアのウクライナ侵攻、昨年のエネルギー危機から世界経済は回復を続けているとしながらも、成長は世界でますます差が広がり、中期的な見通しは「あまり良くない」と述べた。
見通しは概してソフトランディング(軟着陸)となることを示しているが、中国の不動産危機、不安定な商品価格、地政学的な分断、インフレの再燃などに関連するリスクをIMFは引き続き懸念していると話した。
イスラエルとイスラム組織ハマスの衝突についてロイターに「状況がどう展開するかによって非常に異なる多くのシナリオがある。われわれはまだ検討を始めてさえいない。現時点ではまだ評価できない」と述べ、世界経済に及ぼす影響について判断するのは時期尚早との考えを示した。
コロナ禍による影響の長期化やウクライナ戦争、分断の拡大に加え、金利上昇、異常気象、財政支援の縮小などの影響により成長が抑制されていると分析した。23年の世界のGDPはコロナ前の予想を約3兆6000億ドル(3.4%)下回る見込みとしている。
グリンシャ氏はロイターのインタビューで「世界経済は底堅さを示している。過去2、3年に経験した大きなショックによって打ちのめされてはいないが、あまり好調でもない」と指摘。「世界経済の足取りは弱く、まだ全速力には至っていない」との認識を示した。
中期的な見通しもさえず、IMFの28年の成長率予想は3.1%にとどまる。これは08─09年の世界金融危機前に示した5年間の予測(4.9%)を大きく下回っている。
グリンシャ氏は不確実性が存在するとし、地経学(ジオエコノミクス)的断片化、低い生産性の伸び、人口動態の問題などを踏まえると、中期的な成長は鈍化すると予想した。
<インフレ克服は道半ば>
エネルギー価格と食料価格の下落によりインフレ率は世界的に低下しており、22年の平均8.7%から23年は6.9%、24年には5.8%に鈍化すると予想されている。
食品とエネルギー価格を除いたコアインフレ率は22年の6.4%から23年は6.3%、24年は5.3%へ減速するとした。労働市場がなお逼迫しサービス価格の上昇が予想よりも根強いため、低下ペースがより緩やかと指摘した。
グリンシャ氏は記者団との別の会合でインフレについてまだ到達していないとし、IMFは金融当局に対し早すぎる利下げをしないよう警告していると指摘。「賃金が物価に追随し、物価が賃金に追随するという制御不能なスパイラルの顕著な兆候は見られない」とも述べた。
IMFは4月のWEOから不確実性が大幅に低下し、成長率が2%を下回る確率は4月の25%から15%に下がったとした。ただ来年については依然として上振れリスクよりも下振れリスクの方が大きいとの見方を示した。
金利上昇、財政支援の中止、融資条件の厳格化を背景に企業は事業拡大やリスクを取る意欲を低下させており、投資はコロナ前よりも一様に減少していると指摘した。
グリンシャ氏は、インフレ率が持続的に目標に向かって低下するまで金融政策に警戒を続けるようIMFは各国に助言する一方、将来の課題やショックに対処するために財政上のゆとりを回復するよう促していると明らかにした。
<米成長率、コロナ前の予想を上回る見込み>
IMFは米国の今年の成長率見通しを0.3%ポイント引き上げ2.1%、来年は0.5%ポイント引き上げ1.5%とした。堅調な設備投資と消費の拡大を理由に挙げた。これにより主要国で唯一コロナ前の予測を上回った。
これに対し中国は不動産危機と外需の低迷により、23年の成長率を0.2%ポイント、24年は0.3%ポイント引き下げ、それぞれ5.0%、4.2%とした。
グリンシャ氏は不動産業界の問題を一掃するために中国は「強力な行動」が求められており、当局は一定の措置を講じたがさらなる取り組みが必要だと述べた。「さもないと問題が悪化する恐れがある」と警告した。
ユーロ圏の23年の成長率見通しは0.7%、24年は1.2%と、それぞれ7月予想の0.9%と1.5%から下方修正した。
英国は23年の予想を0.1%ポイント引き上げ0.5%とする一方、24年は0.4%ポイント引き下げ0.6%とした。
日本は繰り越し需要、訪日観光客の急増、緩和的な金融政策、自動車輸出の回復などを理由に23年の予想を2.0%と、0.6%ポイント上方修正した。24年は1.0%に据え置いた。
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