1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 国際
  4. 国際総合

アングル:EU委員長再選に不透明感 欧州議会選で右派伸張

ロイター / 2024年6月10日 15時19分

EUの執行機関、欧州委員会の次期委員長は、フォンデアライエン氏(写真)の再選が最も有力視されている。ただ、欧州議会選挙でEU懐疑派のナショナリズム政党が議席を伸ばしたことで不透明感も出ている。写真はブリュッセルで9日撮影(2024年 ロイター/Piroschka van de Wouw)

Jan Strupczewski

[ブリュッセル 9日 ロイター] - 欧州連合(EU)の執行機関、欧州委員会の次期委員長(任期5年)は、フォンデアライエン氏の再選が最も有力視されている。ただ、欧州議会選挙でEU懐疑派のナショナリズム政党が議席を伸ばしたことで不透明感も出ている。

再選には加盟27カ国首脳の「特定多数」と、欧州議会議員(定数720)の過半数支持を獲得する必要がある。

2019年の前回委員長選でフォンデアライエン氏は辛うじて9票差で選出された。自身が所属する中道右派の「欧州人民党」(EPP)は最大会派だったものの、単独で必要議席数に及ばず、2番目会派の中道左派の「欧州社会民主進歩連盟」(S&D、中道左派)と3番目の「欧州刷新」(RE、中道リベラル)の支持を取り付けた。

EPPは依然最大会派だ。今回欧州選挙の最初の議席予測では、中道左派やリベラル派、「緑の党」がフォンデアライエン氏に投票すれば、過半数361票を超えることになる。

ただ、ナショナリズム政党やEU懐疑派、極右の「ドイツのための選択肢(AfD)」が合わせて22議席増やして計149議席に伸張する見通しだ。

無所属は102議員に上る。このうち何人がユーロ懐疑派の会派に正式合流するか次第で、ナショナリズム政党らの勢力はさらに膨らむ可能性がある。

しかもフォンデアライエン氏を推す各党の中で造反議員がどのぐらい出てくるのか予想が付かない。そうした情勢では再選戦略の余地はかなり限られる可能性がある。

<政策は右傾化か>

支持固めを急ぐフォンデアライエン氏はEU懐疑派が結集した欧州保守改革(ECR)と重要な政策課題で協力する用意があることを示唆している。

ECRにはメローニ首相率いる右派「イタリアの同胞」(FDI)やスペインの極右政党「ボックス」(VOX)、ポーランドの強権的な保守政党「法と正義」(PiS)が含まれる。外交官らの間では、欧州委員会が欧州議会に提出する法案は一段と右傾化しかねないと取りざたされている。

中道左派の社会民主主義系やリベラル派、緑の党など従来の支持層は、フォンデアライエン氏が2期目戦略として右派ECRとの協調路線を採れば支持を取り下げると表明している。

<一筋縄では行かない>

EU加盟27カ国の首脳27人のうちEPP所属は13人にとどまるものの、フォンデアライエン氏の再選戦略は多少容易になっている可能性がある。EPPが欧州議会で依然として最大会派である上、委員長1期目の実績として新型コロナウイルスワクチンの早期供給やロシアのウクライナ侵攻を受けたEU団結が広く認識されているためだ。

ただ、一筋縄では行かない面もある。再選に必要な「特定多数」は加盟国首脳27人のうち15人の支持。しかも、その15カ国の総人口はEU全体の65%を占めている必要がある。現在EPP所属の首脳13人の国は人口合計がEUの26%しかない。この中の最大はポーランドだ。

実際の再選戦略にはEPPに属していないドイツのショルツ首相やフランスのマクロン大統領の支持票も欠かせない。ただ、フランスはマクロン大統領がイタリアの前首相で、欧州中央銀行(ECB)総裁も歴任したドラギ氏をEU機関の重職に起用するべき人材の1人と強調しており、フォンデアライエン氏支持を確約していない。

委員長ポストは今年決定される一連のEU高官ポストの一部。欧州議会各会派は、高官人事に支持を打ち出す際、自分たちの政策公約だけでなく各代表が重要なポストに就くこととバーターにするため、先行きは一段と複雑になっている。

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください