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為替変動による直接的な政策の変更検討、「全くない」=日銀総裁

ロイター / 2024年4月10日 12時3分

 日銀の植田和男総裁は4月10日、衆院財務金融委員会で、基調的な物価上昇率が2%に向けて持続して上がっていくことをサポートするために当面は緩和的な金融環境が継続すると述べた。3月19日、都内の日銀本店で撮影(2024年 ロイター/Kim Kyung-Hoon)

Takahiko Wada Yoshifumi Takemoto

[東京 10日 ロイター] - 日銀の植田和男総裁は10日、衆院財務金融委員会で、為替が動いたから直接的に金融政策の変更を考えようということでは「全くない」と言明した。円安などで輸入物価が大きく上昇してもすぐに政策対応するのではなく、想定以上の賃金・物価の好循環の動き、基調的な物価の上昇、基調的な物価上昇率が2%を超えて上がっていくリスクが出てくるのなら金融政策の変更を考えないといけないと語った。

「通貨および金融の調節に関する報告書」(半期報告)の概要を説明し、各委員からの質問に答えた。

植田総裁は、基調的な物価上昇率が2%に向けて持続して上がっていくことをサポートするために当面は緩和的な金融環境が継続すると述べた。その上で、基調的な物価上昇率が見通し通りに上がっていくのであれば、緩和の度合いを縮小していくのが適切になるとの見解を示した。

<3月の政策変更、「機は熟した」と判断>

日銀は3月に、マイナス金利解除を含む大規模な金融緩和の修正を決めた。植田総裁は短期金利の上昇は0.1%にとどまるとし、今回の政策変更で住宅ローン金利を含む貸出金利が大幅に上昇するとはみていないと指摘した。

3月に政策変更に踏み切った背景として植田総裁は、それまでの金融政策運営の基本的な考えを踏まえ「機は熟したとみた」と説明。春闘の1次集計の数字が非常に強かったことが追い風になったという。もっと遅く判断した場合には、基調的な物価上昇率が2%に接近し、急いで利上げする事態に追い込まれる可能性もあったとの見方を示した。

<下振れリスクなら緩和強化、量と物価に相関ない>

企業の賃金設定も「他社が上げないから自分も上げないとのノルムから他社が上げるので自分も上げるに変わってきている」と表現した。

2%物価目標達成への下振れリスクが少なくなったことも政策判断の理由と説明したが、「リスクがどの程度か定量的な数字はない」とも述べた。

総裁は、下振れリスクが大きい場合は「金融緩和を強める選択肢もある」と発言。ただしマイナス金利やイールドカーブ・コントロール(YCC)に戻るとは明言せず、これら政策の「効果を点検」しつつ「その他の選択肢も点検し判断する」と述べた。

日銀は長年デフレ脱却のため量的緩和手法を続けてきたが「マネタリーベースとインフレ率は、過去のデータをみても理論的文献からもはっきりした相関はない」と指摘した。

<国債買い入れ減、「しばらく先に」>

植田総裁は9日で総裁就任から1年が経過した。就任当初は「技術的にも複雑になっていた金融緩和の枠組みを、経済・物価情勢が許せば簡素でわかりやすいものにしたいとの気持ちはあった」と振り返った。

3月の政策修正後も継続している国債買い入れについては「しばらく先に長期国債の買い入れを縮小する局面に移行できればと考えている」と述べた。

日銀の国債買い入れは政府の財政支援ではないとの原則論も強調。「政府が中長期的な財政健全化について市場の信認を確保することは重要」、「日銀の金融政策は政府による財政資金調達の支援が目的の財政ファイナンスではない」と述べた。

一方、日銀が保有する上場投資信託(ETF)や不動産投資信託(REIT)の処分のプロセスは「大変難しい」と指摘し、時間を掛けて検討していく考えを改めて示した。

<異次元の緩和11年、「ネットでプラス」>

2013年4月の開始から約11年にわたった大規模金融緩和については、実質金利の低下を通じてデフレではない状態を作り出したとし「ネットでプラスと評価している」と述べた。

植田総裁は、名目金利がゼロないしはゼロ近辺で推移することが長期化する中、「マネーの量を増やす政策の効果は強くない」と指摘。過去10年の金融緩和でも、単純に量を拡大するだけではなく、長期国債を買う中で金利を下げ、経済を刺激してきたと話した。

長年の大規模緩和の副作用に関しては「現時点では重大な不均衡がないと認識している」と述べた。

(和田崇彦、竹本能文編集:田中志保)

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