情報BOX:英EU、離脱協定骨抜き法案提出で予想される展開
ロイター / 2020年9月11日 12時28分
9月11日、ジョンソン英政権が9日、欧州連合(EU)と結んでいた離脱協定の一部を骨抜きにする「国内市場法案」を下院に提出したことで、EUが猛反発し、自由貿易協定(FTA)を柱とする将来関係を巡る協議に暗雲が漂っている。ロンドンの英議会前で4月撮影(2020年 ロイター/Gonzalo Fuentes)
[ブリュッセル/ロンドン 10日 ロイター] - ジョンソン英政権が9日、欧州連合(EU)と結んでいた離脱協定の一部を骨抜きにする「国内市場法案」を下院に提出したことで、EUが猛反発し、自由貿易協定(FTA)を柱とする将来関係を巡る協議に暗雲が漂っている。これに伴って「合意なきブレグジット」のリスクは高まってきた。
英国とEUは10日、緊急会合を開催。EUは、英政府が協定を順守するという保証が得られない場合、同国に対して法的措置を講じる構えだ。
EUは国内市場法案の修正を要望しており、それが実現しなければ、移行期間が終わる年末に、何の取り決めもないまま、突然たもとを分かつ事態への準備を双方ともに進める公算が大きい。
今後想定される重要な節目は以下の通り。
◎9月14日
国内市場法案が成立するためには英議会の上下両院による可決が必要。14日に下院で基本的問題について、その後4日間に詳細を巡る審議が行われる。各議員が修正案を提示し、採決に付すことができる中で、与党・保守党の圧倒的な多数議席を背景としたジョンソン政権の「威光」と足場の強さが改めて試されることになる。
上院は保守党が過半数を握っていないため、より厳しい情勢が見込まれる。審議日程はまだ決まっていない。
◎合同委員会
国内市場法案の問題を受けて、数週間ほどのうちに、EU欧州委員会のシェフチョビッチ副委員長とゴーブ英内閣府担当相が主宰する合同委員会によって事態の沈静化が図れるかどうかも注目されている。
EU側は貿易交渉に向けて、英国が検討している国家的な補助計画を巡る次回協議の前に状況を明確にしておく必要があると考えている。そうでなければ、公正な市場競争を確保するための企業への補助金についての項目で、英政府と合意できないとみているからだ。
◎閉じない交渉の扉
英EUの将来関係を巡るさらなる交渉は9月28日-10月2日の予定。EUは、交渉決裂の際に責任を追及されるのを絶対に避けようとしており、離脱協定でもめている中でも、決して交渉のテーブルから立ち去らないと強調している。
◎トンネル協議
EUの説明では、離脱協定と将来の関係を巡る交渉とは別の話だが、実際には離脱協定に関する論争が将来関係の交渉に影を落としている。EUとしては当面、英政府に対し、将来関係についての新しい合意を駄目にしないように、また離脱協定を必ず順守するように説得を続けたい考えだ。
貿易交渉の面では、漁業権や国家補助を含めた公正な競争確保、将来の紛争解決方法などで意見が折り合わず、話し合いの主な障害になってきた。これらの分野で暫定的な進展が見られた場合は、10月半ばまでより集中的・選別的な「トンネル協議」に入ることができる。ただ国内市場法案に対するわだかまりが尾を引くようなら、そうした展開は期待できない。
◎10月15日/EU首脳会議
ジョンソン首相は10月15日までにEUとの将来の関係について交渉をまとめたいと表明、それがかなわなければ貿易交渉を打ち切り、合意なき離脱に向けた計画に専念するとしている。
EUは10月15-16日に首脳会議を開く。この時点までに将来関係の交渉が完了していない場合は、EU側も緊急計画の準備が必要だと強調する公算が大きく、合意なきブレグジットの現実味が増してくる。
◎10月末/11月初旬
EUはこれまで、英国との将来関係交渉は10月末まで、あるいは最悪でも11月の最初の数日間までにまとめないと、欧州議会や多くの加盟国議会で年末までに批准できなくなるとの見解を示してきた。
一部のEU高官は、これらの時期が過ぎても英国と話し合いを継続する可能性があると認めている。しかしそれでは来年から新たな関係の枠組みを実施できる可能性が低下し、英EUともに貿易やビジネス、市民生活の分野でリスクが高まる。
◎年末/来年1月1日
英国のEU完全離脱までの移行期間が終了。新たなFTAが成立していなければ、従来の緊密なつながりは幕を閉じ、世界貿易機関(WTO)の定める貿易規定に基づく関係に戻る。つまり来年1月1日以降、英EU間の貿易には関税と数量割り当てが導入される。
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