アングル:ファストファッションの「最終処分場化」に抵抗するガーナ
ロイター / 2023年9月11日 13時40分
ガーナの首都アクラには、欧州や北米、アジアから、毎週約1500万点の古着が圧縮梱包の形で到着する。ここは世界最大の古着市場だ。写真は6月にコペンハーゲンで開かれた「グローバル・ファッション・サミット」で、アクラのビーチから集められた古着を手渡すアベナ・エッスーン氏(右)ら。提供写真(2023年 ロイター/Global Fashion Agenda/Global Fashion Summit 2023)
Bukola Adebayo
[アクラ 31日 トムソン・ロイター財団] - 昨年のマストアイテムだったドレスやつい昨日までのヒット商品など、西側先進諸国が脱ぎ捨てた膨大な衣類が、いわゆる「グローバルサウス」を悩ませている。ファストファッション産業に過剰生産の責任を取るべきだという声が高まっている。
ガーナの首都アクラには、欧州や北米、アジアから、毎週約1500万点の古着が圧縮梱包の形で到着する。ここは世界最大の古着市場だ。
アクラで活動するオール・ファウンデーションによれば、こうして輸入された衣類のほぼ半分はその後再利用されずに廃棄されるという。同団体は、遠い国の消費ブームがもたらした汚染に対する補償を求めるキャンペーンを展開している。
アクラの廃棄物処理当局を指揮するソロモン・ノイ氏は、「こうした衣類の多くはその国で処分されるべきだが、圧縮梱包の形でここまで運ばれてくる。ファストファッションは無駄を加速させている。こちらの税金であちらの過剰消費の後始末をさせる、そういう形で我々を利用し続けられるとは期待しない方がいい」と言う。
ノイ氏はトムソン・ロイター財団に対し、衣類からボロ布に至るまで毎日数百トンもの繊維製品が廃棄され、排水溝や水路を詰まらせ、かつては無垢の美しさを誇ったビーチを汚し、海底に堆積している、と語った。
「毎週、ビーチや水路から廃棄された古着を回収している。埋立地は満杯だ。この国は西側先進諸国のゴミ捨て場ではない」とノイ氏は言う。
大手ブランドと消費者の双方から発生する衣料廃棄物は、第二の人生を歩むべくガーナに運ばれてくる。アフリカには使用済みの繊維製品をバルク購入し国内市場向けに再利用する大規模な輸入拠点が数十カ所あり、アクラもその1つだ。
ノイ氏によれば、この中古衣類市場からは毎日少なくとも100トンの繊維製品が廃棄されるが、アクラ市のゴミ運搬トラックが運べるのは30トンまでだという。
降雨や洪水があると、無許可のゴミ集積所に溜った廃棄衣類が水路に流出し、市内のビーチへと向かってしまう。
<世界一の古着市場>
アクラ市内、廃棄された鉄道車両の背後に広がっているのが、「カンタマント」と呼ばれる世界最大級の古着市場だ。
手作りの屋台が数百も並び、しわくちゃになったポロシャツ、使い古しのバッグやすり減った靴を並べる。どれも西側の人気ファッションブランドだ。
アジアで生産された偽ブランド品も多い。
売り手と買い手は、山のように積まれた古シャツや女性もの衣料品を覗きこみ、照りつける陽射しのもと、値段交渉に励む。
アベナ・エッスーン氏(42)は、1年前にはこの市場に屋台を構え、ガーナのオフィス労働者を相手に、ロンドンから仕入れた古着のブラウスやスカートを販売していた。現在では、欧州諸国を回って衣料廃棄物危機への取組みを支援するよう働きかけるロビイスト団体に参加している。
「#StopWasteColonialism(廃棄物植民地主義を止めよう)」と称する運動の参加者は、過剰生産で悪名高いファッション業界は廃棄物を押しつける先として「グローバルサウス」の古着市場を利用しており、その代価を支払うべきだと主張する。
このような声は、環境面であれ、あるいは社会面や財政面であれ、企業や国は自らがもたらした損害に対する補償を行うべきだとする、世界的な運動の高まりの一環である。補償を求める運動には汚染や奴隷労働、迫害の犠牲者がいずれも参加しているが、その成功の度合いはまちまちだ。
エッスーン氏は、ロンドンから押しつけられる質の低い在庫にウンザリして、古着を売る立場から活動家へと徐々に軸足を移していったという。
「ほとんどの古着には染みがあったり、塗料やオイルが付いていたり、裂け目があったりした。残りの半分はぼろきれだ。半分だけ販売に回して、それ以外は捨てた」と2児の母であるエッスーン氏は言う。
「そういう売り物にもならない衣料品を仕入れるために、私たちの多くは借金をしている。利益が上がらないから返済もできない。借金の悪循環だ。どうにかしなければならない」とエッスーン氏は言う。
3万人を超えるカンタマントの露天商のあいだでは同じような怒りが高まり、ガーナの廃棄物担当当局も苛立ちを強めた。その結果、富裕国に対して、古着を装ったボロ布を押しつけるのを止め、廃棄物を開発途上国に輸出することで生じた損失を補償するよう求める声が高まった。
オール・ファウンデーションによれば、カンタマントには、北米や英国、アジアから毎週約1500万点の衣料品が流入しており、そのうち約40%は最終的に廃棄されるという。
<ファッション補償>
根本的な問題は、変わり続けるトレンドに合わせて低価格な衣料品を大量生産するサイクルが蔓延したファストファッション市場の生産過剰にある、と活動家らは指摘する。
ファッション業界情報サイト「ファッション・ユナイテッド」によれば、アパレル産業では年間1000-1500億点のアイテムが生産されており、生産点数は過去20年の間に2倍に増加したという。
世界経済フォーラムはあるレポートの中で、アパレル産業が出す廃棄物の量を年間1000万トン近いとしており、しかもこの数字は2030年までに少なくとも50%は増加すると予測している。
ノイ氏とエッスーン氏は他の衣類露天商らとともに、この6カ月間にパリとブリュッセルで欧州の指導者らと会談し、「グローバル・ファッション・アジェンダ」が運営するフォーラムに参加して、拡大生産者責任(EPR)の導入について議論した。EPRは、製品のライフサイクル全般にわたって製造元ブランドに責任をとらせる環境政策を指す。
EPRはすでにバッテリーやエレクトロニクス製品の処理管理ツールとして用いられているが、ファッションの世界での採用は遅れている。
衣料品についてEPRの体勢を整備しているのはフランスだけだが、EUではフランスの例に倣い、EU域内で操業する衣料品企業に対してEPRを義務づける計画だ。
提案されている規則案では、EUが衣料品メーカーから衣料品1点あたりの手数料を取り、EU内の社会貢献企業によるリサイクルや処分のための資金調達を支援する。
だがガーナの活動家らは、こうしたやり方ではEU加盟国だけが恩恵を被り、活気あるガーナの古着市場は蚊帳の外に置かれるという。
彼らはEUに対し、計画を修正し、手数料を直接、汚染の大部分を負担してきたカンタマント地区を中心に、ガーナを含む古着のサプライチェーンに配分するよう要求している。
ノイ氏は、そうした資金があればリサイクル工場の原資にできると語る。
また活動家らは、衣料廃棄物危機を根元から絶つべく、各ブランドが生産した点を申告し、今後5年間で生産量を40%削減することを公約することを望んでいる。
オール・ファウンデーションのリズ・リケッツ氏によれば、補償には2つのメリットがある。劣悪な廃棄品を押しつけられる露天商に対する補償を行えること、そしてこの危機によって生じた惨状をガーナが解決しやすくなることである。
「こうした汚染によって生活や健康面で影響を受け、環境を破壊されたガーナのコミュニティに対し、ファッション産業に補償を行わせるという、正しい方向への第一歩だ」とリケッツ氏は言う。
「私たちはこうした汚染に関して、現実の、エコロジカルな補償を必要としている」
(翻訳:エァクレーレン)
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