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アングル:中国EV対応に悩む欧州、関税検討の一方で工場誘致

ロイター / 2024年6月11日 18時20分

 6月10日、 欧州は、中国自動車メーカーへの対応を巡って大いなる矛盾を抱えている。写真はミラノにあるBYDの店舗前で3月撮影(2024年 ロイター/Claudia Greco)

Giulio Piovaccari

[ミラノ 10日 ロイター] - 欧州は、中国自動車メーカーへの対応を巡って大いなる矛盾を抱えている。

欧州連合(EU)は域内市場に安価な中国製電気自動車(EV)が大量流入する事態を懸念し、中国メーカーが得ている政府助成措置を調査して輸入関税の発動を検討中だ。しかし加盟各国は、中国メーカーの工場を誘致して投資を呼び込み、雇用創出につなげようと激しい競争を繰り広げている。

ベイン・アンド・カンパニーのパートナー、ジャンルカ・ディロレト氏によると、BYD(比亜迪)や奇瑞汽車、上海汽車(SAIC)などにとって中国国内で生産する方がコストはずっと低いとはいえ、ブランド定着化や、出荷費用や将来的な関税リスクを抑える目的で、欧州での製造拠点確立に熱心になっている。

ディロレト氏は「中国メーカーは、欧州の顧客に関心を持ってもらおうとするなら、欧州(ブランド)だと認識してもらわなければならないと分かっている」と語る。

EUは週内に、中国製EVに追加関税を課すかどうか決める見通し。関税は一面では確かに中国メーカーに対する欧州メーカーの競争力を向上させる可能性がある。だが、中国メーカーの長期対欧州投資をかえって加速させることにもなりかねない。

アリックスパートナーズによると、昨年の欧州自動車市場における中国メーカーの売上シェアは4%で、2028年までには7%に高まると予想される。

EU加盟各国のうち、最初に中国メーカーの工場建設投資を確保したのはハンガリーで、BYDが昨年発表した。BYDは来年中に欧州で2番目の工場を建設することも検討している。

ハンガリーは長城汽車の欧州最初の工場を誘致する交渉も進めている、と地元メディアが伝えた。同国は雇用助成金や税額控除の提供、規制緩和などを打ち出し、経済特区への外資導入を図りつつある。

ステランティスと合弁で欧州市場向けにEVを販売する方針を打ち出した中国の新興EVメーカー、リープモーターは、ポーランドにあるステランティスの既存の生産設備を活用する考え。

ポーランド政府も投資支援策を整備している。

<インセンティブ>

欧州でドイツの次に自動車生産台数が多いスペインは、奇瑞汽車の誘致に成功。バルセロナの旧日産自動車工場で今年第4・四半期に地元メーカーと共同で生産を開始する。

奇瑞汽車には、スペイン政府が2020年に導入したEV・電池分野における37億ユーロ規模の投資支援プログラムが適用される。

事情に詳しい関係者がロイターに明かしたところでは、奇瑞汽車はより大規模な欧州第2の工場建設も計画しており、イタリア政府などと協議している。

イタリアは「フィアット」ブランドを展開するステランティスに次ぐメーカーを国内に呼び込む取り組みに力を入れており、自動車の買い手とメーカー双方に向けたインセンティブを25─30年に提供するための60億ユーロ規模の政府基金を用意した。

中国メーカーでは東風汽車などが、イタリア政府と投資交渉に入っている。

一方事情に詳しい2人の関係者はロイターに、SAICが欧州2カ所で工場建設を目指していると述べた。

1つ目は既存設備を生かし、年間最大5万台の生産を目標としたもので、早ければ7月に正式発表される可能性がある。もう1つはゼロから建設し、年間生産量は最大で20万台の見込み。ドイツ、イタリア、スペイン、ハンガリーが最終候補地に残ったという。  

<生産の最適地>

中国メーカーは欧州で人件費からエネルギー、規制順守まで全ての面でコスト上昇に見舞われている。

ただ、中国国内の生産車を輸出するコストもすぐに跳ね上がり、利益率を圧迫してもおかしくない。

ベイン・アンド・カンパニーのディロレト氏は、定価1万5000ユーロの中国生産車は、出荷と流通にかかる費用が500─3000ユーロだと説明した。

ディロレト氏によると、欧州北部ではもう中国メーカーが競争力を維持しながら生産を続けるには人件費が高くなり過ぎているが、イタリアやスペインといった南欧は人件費が相対的に低く、特に高級車にとって大事な製造品質基準とのバランスが取れている。

これに対して低価格車の場合は、東欧とトルコが生産拠点として魅力的だという。

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