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アングル:中国、債務拡大しても景気対策強化へ トランプ関税に対抗

ロイター / 2024年12月11日 17時33分

 中国共産党は12月9日、経済政策について過去10年超でも屈指の「ハト派」的な声明を出し、米次期政権による関税の影響に対抗するために総力を挙げる構えを示した。甘粛省酒泉市のホース接続器具工場で10月撮影(2024年 ロイター/Tingshu Wang)

Ellen Zhang Kevin Yao

[北京 10日 ロイター] - 中国共産党は9日、経済政策について過去10年超でも屈指の「ハト派」的な声明を出し、米次期政権による関税の影響に対抗するために総力を挙げる構えを示した。

共産党・中央政治局会議の後に出された声明で指導部は、「適度に緩和的な」金融政策と「より積極的な」財政政策に転換すると表明した。

中国人民銀行(中央銀行)は過去14年間、金融不安定化のリスクを避ける「穏健な」政策姿勢を貫いてきた。この間、政府部門と家計、企業を合わせた総債務は5倍超に膨らみ、国内総生産(GDP)は約3倍に拡大した。

中央政治局会議が今回メッセージを転換したことは債務を一段と膨らませ、少なくとも短期的には金融リスクよりも経済成長を優先する姿勢を示すものだ。

スタンダード・チャータードのグレーターチャイナ・北アジア担当主席エコノミスト、シュアン・ディン氏は「穏健(な政策)から金融緩和に移行したのは大きな転換だ」とし、「大いに想像をかき立てられる」と語った。

北京大のタン・ヤオ准教授(応用経済学)は、成長が減速すれば債務返済は一層難しくなるため、政策転換は必要なものだとの考えを示した。

ガベカル・ドラゴノミクスの中国調査副ディレクター、クリストファー・ベダー氏は「指導者らは債務の対GDP比率が一段と拡大するという事実と、多かれ少なかれ折り合いをつけた」とし、債務比率は「拘束的な制約要因」ではなくなったと語った。

人民銀行がどの程度の金融緩和を実施し、財務省が来年どの程度債務を増やすかは不明だ。ただアナリストらは、こうした政策が中国政府に恩恵をもたらすと予想している。

トランプ米次期大統領は中国からの輸入品に60%以上の関税を課すとけん制している。中国政府の対応は、関税実施の時期と最終的な税率次第で決まってくるだろう。

マッコーリーの主席中国エコノミスト、ラリー・フー氏は「彼らはGDP目標を達成するためには『何でもする』方針だ」とした上で、「ただ相手の出方に反応する形で政策を実施するだろう。2025年にどの程度の政策を行うかは、GDP目標と米国の新たな関税という2つの要因で決まる」と話した。

2025年の経済成長率や財政赤字の目標は、今月開催の「中央経済工作会議」で協議される。しかし、結果は発表されない見通しだ。

ロイターは11月、大半の政府顧問らが5%前後の成長率目標を維持するよう提言していると報じた。ただ、今年はこの目標の達成が難しそうだ。

中国銀行の主席リサーチャー、ゾン・リアン氏は、中央政治局会議の声明のトーンから考えて、政府が25年の成長目標を引き下げることはないと予想。ただ、財政赤字の対GDP比率目標は当初、過去最高の4%前後に設定される可能性が高いと述べた。

野村証券の現地法人の主席中国エコノミスト、ティン・ルー氏は「政府は『5.0%前後』の成長率目標を掲げることによって、トランプ氏がちらつかせる60%の関税や、その他の抑圧的政策に屈しない姿勢を示したいのかもしれない」と語った。ルー氏も財政赤字目標が今年の3%から4%に引き上げられると予想している。

財政赤字比率の1%ポイントの上昇は、1兆3000億元(27兆1700億円)程度の追加景気刺激策に相当する。しかし中国政府は、必要なら予算外の特別債を発行したり、地方政府による特別債発行を許したりすることで、刺激策をさらに積み増すことが可能だ。

<最重要課題は消費押し上げ>

中国の消費者は長引く不動産危機とぎりぎりの社会保障によって以前より懐が寂しくなったと感じており、中国経済は強いデフレ圧力に直面している。個人消費需要の弱さは、経済成長に対する重要なリスクだ。

中央政治局会議が「非伝統的なカウンターシクリカル(景気循環に対抗する)調整」を実施し、「消費を大幅に押し上げる」と誓ったのはこのリスクを認識しているゆえだろう。

ゴールドマン・サックスはこうした新たな文言が採用されたことについてノートで、景気刺激策の構成が「過去の景気サイクルとは大幅に異なるものになり、伝統的なインフラ・不動産投資ではなく、消費、ハイテク製造、リスク封じ込めに重点がシフトする可能性が高い」と分析した。

モルガン・スタンレーも中央政治局会議の声明について、消費の押し上げが「25年に最優先の主要任務」になることを示しているとみている。ただ、モルガンは「実行されるかどうかは依然として不透明だ」とした。

中国政府はこの1年、消費を押し上げるとの発信を強めてきたが、自動車や家電購入への補助金を除けば実行した政策はわずかしかない。

政府が他にどのような消費促進策を行う用意があるのかも分かっていない。だが、何十年にもわたって生産を中核に据えてきた中国経済で金融緩和需要の効果を高めるためには、消費に焦点を絞った措置が鍵を握ることになる。

キャピタル・エコノミクスのアナリスト、ジュリアン・エバンスプリチャード氏は「中国では金融緩和の効果がかつてに比べてはるかに薄れている。家計、そして民間セクターの大部分では、たとえ金利が下がっても債務を増やそうという意欲が乏しくなっている」と解説した。

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