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アングル:IPO銘柄、個人投資家に落とし穴 アームも高値づかみの危険

ロイター / 2023年9月12日 15時36分

 9月11日、ソフトバンクグループ傘下の英半導体設計大手アームが今週中にも実施するとみられる新規株式公開(IPO)への期待が高まっている。写真はアームのロゴ。3月撮影(2023年 ロイター/Dado Ruvic)

Noel Randewich Hannah Lang

[11日 ロイター] - ソフトバンクグループ傘下の英半導体設計大手アームが今週中にも実施するとみられる新規株式公開(IPO)への期待が高まっている。だが、その最初の波に乗ろうとしている個人投資家は用心しなければならない。なぜなら人気のIPOに飛びついた個人投資家は、やけどを負うケースが少なくないからだ。

アームはナスダック市場への上場を通じて約50億ドル(約7300億円)の調達を目指す。実現すれば今年最大規模のIPOとなる。しかし、近年に実施されてきたこれに匹敵するIPO案件の大半は、期待を裏切られる結果になっている。

事業の性質からアームは消費者になじみが薄いため、IPOの売り込み相手として重視しているのは機関投資家だ。つまりほとんどの個人投資家は、いざ株式を買うことができるようになった時点で、より高い価格を提示される可能性がある。

そして、最近の事例では、個人投資家が何らかの個別銘柄を保有する期間が1年未満であれば、損失を被ってもおかしくないことがロイターの分析から見て取れる。

LSEGデータが8日時点で行った分析に基づくと、過去4年間で規模別ランキング1位から10位までの米IPO銘柄では、足元の株価が上場初日の終値を平均で47%も下回っている。話題を集めたIPOで起こりがちなその日の高騰局面で買った場合だと、下落率はさらに大きく53%に達する。

10銘柄のうち、現在も株価が公開価格より高いのは、クラウドサービスのスノーフレークと民泊仲介のエアビーアンドビーの2社のみだ。

アマチュア投資家にとって気安く個別銘柄に手を出すことは危険が大きいという話は有名だ。だが、今回の分析結果は、上場初日に人気のIPO銘柄を買うことが、いかに危ういかを浮き彫りにした形となった。

この10銘柄については、買いに応募した機関投資家でさえ、保有株で平均リターンが18%のマイナスを記録している。

一方、S&P総合500種は、9件が2020年と21年に実施されたこれらの各IPO以降、平均で13%上昇した。

IPOの研究をしているフロリダ大学のジェイ・リッター教授は「流通市場で(IPO)株を買う際は、平均的に公開価格にプレミアムが乗っている。ほぼ全ての個人投資家にとっては、低コストのインデックス・ファンドを買って保有し続けるのが最適な戦略だ」と改めて主張した。

人工知能(AI)ブームの中心的存在になったエヌビディアも、半導体メーカーで消費者との接点が少ないのに今年の個人投資家の人気銘柄になっている。その点からすると、アームのIPOも個人投資家の関心を引く公算は大きいだろう。

米株式市場で個人投資家が一躍、存在感を高めたのは21年。当時は低金利や手数料ゼロの取引アプリの登場、ゲームストップなどいわゆる「ミーム株」を巡る盛り上がりなどが背景だった。

ただ、バンダ・リサーチのシニア・バンスプレジデント、マルコ・イアチーニ氏は、昨年の株安を受けて個人投資家の姿勢は、より慎重になってきていると指摘する。

「アームのIPOがどんな結果になっても、個人投資家の一部はそこに参入しようとするだろう。ただし、21年のIPOで見られたレベルにはならない」という。

<IPO銘柄は低リターン>

アームが目指している公開価格の上限は51ドルで、評価額は500億ドル超になる可能性がある。これはニューヨークの上場企業としては、21年に上場を果たした新興電気自動車(EV)メーカーのリビアン・オートモーティブ以来の大きさになる。

もっともリビアンは増産体制確立のために現金を消費し、時価総額は上場以降で600億ドル余り目減りした。近年の大型IPOで言えば、料理宅配サービスのドアダッシュの株価は、20年12月の上場初日につけた高値の半分弱にとどまっている。

確かに過去数年間は、IPOにとって厳しい局面が続いた。昨年は株安に見舞われ、金利は上昇し、米国の景気後退懸念も浮上する中で、上場した企業は黒字化する前にバリュエーションが大きく切り下がってしまった。

しかし、リッター氏などの研究からは、そもそもIPO自体がさえないリターンしか提供しない傾向がうかがえる。

LESGによると、過去4年間では260件余りの評価額10億ドル超のIPO(大半がハイテク、ヘルスケア、一般消費財)が行われたが、足元の株価は平均で公開価格を29%、上場初日の高値を49%も下回っている。

唯一の例外的な存在は、半導体受託生産大手グローバルファウンドリーズ。21年の上場以降で株価は23%上昇し、この間に3%下げたS&P総合500種をアウトパフォームした。

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