1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 経済
  4. 経済

当面の使命、実質賃金プラス転換の早期実現=野口日銀委員

ロイター / 2023年10月12日 12時21分

 10月12日、日銀の野口旭審議委員は、新潟県金融経済懇談会であいさつし、日銀の当面の使命は粘り強い金融緩和の継続を通じて実質賃金がプラスに転じる状況を「可能な限り早期に実現させることにある」と述べた。写真は都内にある日銀本店。2015年5月撮影(2023年 ロイター/Toru Hanai)

Takahiko Wada

[新潟 12日 ロイター] - 日銀の野口旭審議委員は12日、新潟県金融経済懇談会であいさつし、日銀の当面の使命は粘り強い金融緩和の継続を通じて実質賃金がプラスに転じる状況を「可能な限り早期に実現させることにある」と述べた。

2%物価目標の持続的・安定的な実現には、2%を明確に上回る名目賃金上昇がトレンドとして定着し、日本に根付いた物価も賃金も上がらないというノルム(社会規範)が払しょくされることが必要だとも指摘した。

厚生労働省の毎月勤労統計によれば、実質賃金は8月速報分までで17カ月連続のマイナス。今年の春闘で高い賃上げが実現したとは言え、賃上げ率が物価上昇率に追いつかない状況が続いている。

野口委員は「物価上昇による実質消費の抑制傾向が足元でやや強まっている」と指摘。家計の消費抑制傾向は、実質賃金の上昇が実現され「それが継続すると家計が確信するようになるまでは残り続ける」とし、まずは実質賃金がプラスに転じることが必要だとした。

野口委員は、物価の基調が2%近傍で安定するには名目賃金が2%物価目標と整合的な水準で上昇し続けることが必要だとも話した。あいさつ要旨の欄外で、物価目標と整合的な名目賃金上昇率について、労働生産性上昇率も加味した3%と記した。ただ、労働生産性上昇率は研究開発や事業・生産プロセスの改善といった個々の企業の努力を通じて事後的に決まるものであり「その値をあらかじめ特定できるわけではない」とも指摘した。

<YCC、先手打って柔軟化しないと維持困難に>

野口委員は7月のイールドカーブ・コントロール(YCC)の運用柔軟化について、インフレ期待などの変化を伴わない過度な金利上昇は抑制するとして「金融緩和の縮小を意味するものではない」と述べた。

7月の段階で運用柔軟化を決めた背景として、YCC政策は本来「先手を打って柔軟化していかないと維持が困難になるという性質を持つからだ」と説明した。インフレ期待が上昇し始める段階では「イールドカーブ・コントロール政策による金融緩和の継続のためにも、ある程度の柔軟化が必要になる」と話した。

<中国の動向を注視>

野口委員は海外経済のうち、中国の不動産業の苦境や若年層を中心とした失業の拡大、最近の低インフレなどは事実だとした上で、「中国当局の今後の財政・金融的対応策も含め、注視が必要だ」と述べた。

一方、欧米では「ようやく目標に向けたインフレ抑制の道筋が見え始めてきたようにも思われる」との見方を示した。仮に各中央銀行がこれ以上大きく利上げする必要もなく高インフレが沈静化していくとすれば、緩やかな経済の減速がある程度は続くにしても「ひところ喧伝されていたハードランディングのリスクは減少していくようにも思われる」と述べた。

(和田崇彦)

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください