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アングル:ガーナで違法金採掘が急拡大 影で健康被害や環境汚染、犯罪や汚職も

ロイター / 2024年10月13日 8時9分

 違法な小規模採掘が行われている、西アフリカ・ガーナの金鉱山。人々の生活を支え、ガーナ経済にとって非公式な収益源を生み出している急成長中のビジネスの一例だ。だがその裏では、鉱山労働者の健康被害や水系の汚染、森林やカカオ農場の破壊が進行し、犯罪の引き金にもなっている。8月17日、西部プレスタ・フニ・バレーの違法採掘現場で撮影(2024年 ロイター/Francis Kokoroko)

Maxwell Akalaare Adombila

[プレスタ・フニ・バレー(ガーナ) 7日 ロイター] - 違法な小規模採掘が行われている、西アフリカ・ガーナの金鉱山。Tシャツに短パン、ゴム長靴姿の男らが、水銀を含む泥水の中を歩いて渡り、素手で岩石を掘り出し、金と砂利をより分けるための粗末な流し樋(とい)を操る。

この、いまにも崩壊しそうな鉱山は、人々の生活を支え、ガーナ経済にとって非公式な収益源を生み出している急成長中のビジネスの一例だ。だがその裏では、鉱山労働者の健康被害や水系の汚染、森林やカカオ農場の破壊が進行し、犯罪の引き金にもなっている。

「危険ではあるが、とにかく生きていかなくては」。同国西部プレスタ・フニ・バレーの違法採掘現場を訪れたロイターの記者に対し、24歳の男性はこう語った。

違法行為に携わっているため匿名を希望しているこの男性は、会計学を専攻する学生だ。10代で父親を亡くし、生活が苦しいために、金を見つける可能性に賭けて授業をサボっている。

鉱山には専門的な防護具はなく、男たちは薄っぺらいレジ袋を頭にかぶっていた。水泳用ゴーグルを着けている人もいれば、上半身にコメ袋をかぶった人もいた。

こうした未認可の金採掘産業を、ガーナでは「ガラムセイ」と呼ぶ。国際金価格が約30%上昇したことを受けて新規参入が増え、急激なペースで成長している。

ガーナの鉱業監督当局のデータによれば、今年1ー7月に小規模鉱山で産出された金は120万オンスで、2023年の総量を超えた。

多国籍企業が採掘権を得て運営する鉱山がある一方で、ガーナの金産出量の約40%は小規模鉱山からのもの。こういった鉱山の約7―8割は無認可だ。

<利益の裏で健康被害、環境汚染も>

鉱業監督当局であるガーナ鉱物委員会のマーティン・アイシ委員長は、ガラムセイ産の金の大半は国外へと密輸されているため、国の金輸出収入には貢献していないと話す。

アイシ委員長から見れば、金価格の上昇はガーナにとって福音であり、国際通貨基金(IMF)から30億ドルの支援を受けざるを得なかった2022年の深刻な経済危機から回復する上で助けになっている。

「大きく稼げるようになり、恐らくIMFの救済プログラムからも予定より早く離脱できるはずだ」とアイシ氏は言う。今年の金輸出による歳入は前年比2倍以上の100億ドルになると見込んでいる。

だが業界の専門家によれば、合法的な採掘とガラムセイの境界は曖昧であり、無認可鉱山が産出する金による収益の比率は、当局の認識より大きいという。

ただし、ガラムセイの危険性については議論の余地がない。

報道や人権団体によれば、坑道の崩落によりここ数年で数十人の鉱山労働者が死亡した。病院や医療センターからは、鉱山労働者や、鉱山に近い町・村の住民が肺疾患により若くして亡くなる例が多数報告されている。

こうした疾患が生じるのは、鉛などの重金属を含む粉じんや、堆積物から金を抽出するために鉱山で用いる水銀や硝酸からの有毒ガスを吸い込んでしまうためだ。

こうした化学物質は、使用後に土壌や河川に投棄される。ガーナの水管理当局は、水源の約65%が鉱業由来の水銀や重金属で汚染されていると話している。

一方で、森林破壊監視サイト「グローバル・フォレスト・ウォッチ」のデータによれば、数千ヘクタールのカカオ農園や原生林が違法鉱山の操業により破壊されているという。

アクフォアド大統領率いる現政権がこうした問題への対処を怠ってきたとして、ここ数週間、首都アクラの街頭では抗議活動が展開されている。「指導者らよ、あなた方は私たちを失望させた」と書かれたプラカードも見られる。

9月22日、ガーナ国旗を身にまといデモ行進に参加したアブバカル・サデクさんは「ガラムセイは禁止すべきだ。私たちは長生きしたいし、病気になりたくない。病院に行きたくない」と語る。

政府は、ガラムセイを放置しているわけではないと主張する。アクフォアド大統領は2017年に就任した際にこの問題に取り組むことを公約。政権は取り締まりに乗り出し、軍を動員して違法採掘者を逮捕している。採掘設備を押収、破壊する場合もある。

<犯罪組織の関与も>

総選挙を12月7日に控え、世論調査では「ガラムセイ対策」が有権者の重視する争点として上位5位以内に入っている。

退任するアクフォアド大統領の後継を狙う主要候補であるマハムドゥ・バウミア副大統領とジョン・マハマ前大統領は、金の試掘を行う国家機関への予算配分、地元住民の採掘を認める地域の指定など、ガラムセイの制度化を公約している。

だが歴代政権は以前からずっとこの問題への取り組みを約束してきたが、大きな進展は見られない。専門家によれば、有力者がこの産業から利益を得ていることが背景にあるという。

ガーナにおける小規模金鉱山の規制を目指す英国支援によるプログラムの責任者クリス・アストン氏は、職人レベルの採掘者らは犯罪組織の言いなりになっているという。他の金融機関と違って、採掘設備の費用を前払いで提供してくれるからだ。

「犯罪組織が金のサプライチェーンに侵入する方法の1つが、採掘者への事前融資だ」とアストン氏は言う。その上で資金提供者は「採掘者に対し、採掘した金を有利な条件で組織に売り渡すよう要求している」

アクラを拠点とする安全保障コンサルタントのエマニュエル・クウェシ・アニング氏は、ガラムセイは銃器密輸の増加を助長していると指摘する。違法鉱山を監督している組織は、ライバル組織や盗難への対策として武装警備員を必要としているからだ。

さらにアニング氏は、一部の地域では政治家や伝統的な有力者がガラムセイの利益の一部を懐に入れており、問題をさらに複雑にしていると語る。

「このビジネスには手を触れないというのがエリート層の暗黙の了解になっている」

犯罪組織の関与や銃器密輸との関連、汚職といった疑惑についてガーナ情報相にコメントを求めたが、回答は得られなかった。

国家安全保障省のある高官は匿名で、違法採掘とマネーロンダリング(資金洗浄)、銃器密輸とのつながりに対処するため複数の当局が取り組んでいると述べた。

(翻訳:エァクレーレン)

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