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アングル:個人の脳神経データ保護へ、米で相次ぐ法制化の動き

ロイター / 2024年10月12日 13時38分

 10月10日、米国では、考えるだけで操作できるコンピューターゲームや集中度を測るヘッドフォンなど、脳の信号を読み取る電子機器が一般に出回るようになり、プライバシー権の観点から個人の脳神経データ保護を法制化しようとする動きが起きている。写真はメタが発表した眼鏡型の拡張現実(AR)端末「オリオン」の試作機。サンフランシスコで9月撮影(2024年 ロイター/Manuel Orbegozo)

Avi Asher-Schapiro

[ロサンゼルス 10日 トムソン・ロイター財団] - 米国では、考えるだけで操作できるコンピューターゲームや集中度を測るヘッドフォンなど、脳の信号を読み取る電子機器が一般に出回るようになり、プライバシー権の観点から個人の脳神経データ保護を法制化しようとする動きが起きている。カリフォルニア州は先月、ニューサム知事が脳神経データ保護を定めた新たな法案に署名し、国外でも同様の法律の導入や検討が進んでいる。

フェイスブックなどを運営するメタは先月、神経信号を感知するリストバンドが付いている眼鏡型の拡張現実(AR)端末「オリオン」の試作機を公表した。

また脳に関するITを扱う「ニューロテクノロジー」企業のニューラブルも先月、脳の電気的活動を計測する脳波(EEG)を読み取ってユーザーの集中度を測定するヘッドフォンを発売した。

カリフォルニア州が新たに導入した法律は、こうした機器がユーザーから取得する脳神経データを手厚く保護する。法案に携わったカリフォルニア州議会のジョシュ・ベッカー上院議員は、消費者データに関する個人情報保護規則にとって重要な一歩であり、「プライバシー権の新たなフロンティアだ」と述べた。

この法律は脳神経データを、DNAや正確な位置情報と同等に保護程度が高い「センシティブ個人情報」のカテゴリーに定義している。ベッカー氏によると企業は今後、データの使用目的について開示義務を課せられ、カリフォルニア州の住民は企業に対して当該データの削除を要求したり、共有の制限を指示することができるようになる。企業によるデータの収集、集めたデータに基づく製品やサービスの提供は認められている。

法案作りを支援した個人情報保護団体「ニューロライツ財団」の弁護士、ジャレッド・ゲンスラー氏は「こうした新しい権利が今後の脳神経データ規制の基準となることを期待している」と述べた。

<海外でも法制化進む>

近年、消費者向け電子機器が医療向け並みのデータを取得できるようになったことで、脳神経データ保護に向けた取り組みが活発になっている。このためニューロライツ財団の専門家などは、取り扱いに注意を要するデータがユーザーの精神状態を読み解くために、ユーザーの許可なく使われる恐れがあると警告している。

チリは2021年に、脳のプライバシーを法律と憲法で保護したほか、メキシコ、ブラジル、ウルグアイなど他の中南米諸国でも同様のルールが提案されている。

チリの最高裁判所は昨年、ニューロテクノロジー企業に対してユーザーのデータを削除するよう命じる世界初の判決を下した。

国連教育科学文化機関(ユネスコ)もこの問題に取り組んでおり、8月に専門家パネルが脳の法的保護の策定に関する新しい提言案を公表した。

米国ではカリフォルニア州に先立ってコロラド州で同様の法案が成立している。

<企業から反発も>

カリフォルニア、コロラド両州では脳神経データ保護の法案を巡ってIT業界団体から反発があり、専門家の間でも適用範囲について議論が起きた。

メタ、アップル、アマゾンなど大手IT企業を代表する団体テックネットは、カリフォルニア州の法案の範囲を「中枢神経系」からのデータに限定しようとした。しかしベッカー州上院議員は、手首など体の他の部分から得られる神経信号も精神状態を読み取る材料になり得るため、適用範囲に「末梢神経系」のデータも含むことが重要だと主張。最終的に両州の法案では末梢神経系も対象に含まれた。

しかしデューク大学法学部の教授でユネスコの枠組み作りにも関与しているニタ・ファラハニ氏は、眼球の動きなど思考の読解に使われる他のデータが除外されており、法案の適用範囲は「まだ足りない部分が多い」と危惧を示した。

ニューラブル共同創業者のアダム・モルナー氏は、同社はカリフォルニア州とコロラド州の神経データ保護法に準拠してデータを扱っていると述べた。トムソン・ロイター財団はメタに対し、オリオンがカリフォルニア州の法律にどのように準拠するのかについてコメント求めたが回答がなかった。

ニューロライツ財団が今年公表したリポートによると、脳神経技術を使った消費者向け機器30件のプライバシーポリシーを分析したところ、個人情報保護に重大な不備が見つかった。機器の半数は、企業がユーザーの脳データを第三者と広範に共有することを認めていた。

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