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アングル:新興国資産、米選挙とワクチン期待で市場の強気鮮明に

ロイター / 2020年11月13日 9時29分

 欧米の有力投資銀行や資産運用会社の間で、新興国市場資産に対する強気姿勢が鮮明化しつつある。写真はブラジルレアル紙幣と米ドル紙幣。2015年9月、リオデジャネイロで撮影(2020年 ロイター/Ricardo Moraes)

[ロンドン 11日 ロイター] - 欧米の有力投資銀行や資産運用会社の間で、新興国市場資産に対する強気姿勢が鮮明化しつつある。米大統領選におけるトランプ氏の敗北が確実になったことと、米製薬大手ファイザーの発表により有望な新型コロナウイルス感染症ワクチンが登場したと受け止められたことが背景だ。

天然資源の輸出や低賃金の労働力提供、観光業などで経済が成り立つ新興国は、世界的な貿易と旅行が回復すれば追い風になるし、米国の政策面での不確実性が後退してもプラスに働く。このためモルガン・スタンレーは11日、「新興国は全て買いだ」という実に単純なメッセージを発信した。

モルガン・スタンレーが大規模なポジションを組むのは、中国人民元、メキシコペソ、ブラジルレアル、南アフリカランド、コロンビアペソ、ロシアルーブルといった各通貨や、ウクライナの成長連動ソブリン債からメキシコ国営石油会社ペメックスの社債までさまざまなドル建て債券だ。

同社のジェームズ・ロード氏は「不透明感が和らいで、待機していた潤沢な(投資家の)流動性がリスク性資産に行き場を見つけ出し、新興国資産の値上がりが来年第1・四半期にかけて続く可能性は十分にある」と述べた。

シティのアナリストチームは、さらに楽観的な姿勢が目立つ。投資家が貿易と観光を主な産業としている新興国に戻ってくるので、特にインドネシアルピアとタイバーツが堅調に推移するとの見立てだ。アナリストのダーク・ウィラー氏は「観光収入が実際に入ってくるのはまだ数カ月先かもしれないがトンネルの出口が見えた。さらにタイ政府に対する抗議を巡る不安も低下している」と分析し、これが1ドル=30バーツを目指すようなバーツ高をもたらすとみている。

世界銀行データによると、昨年のタイ国内総生産(GDP)に占める観光業の割合は10%強で、世界有数の高さだ。

シティはメキシコとコロンビアの自国通貨建て債にも買いを入れている。米大統領・議会選を受けて既に中南米を「オーバーウエート・デュレーション」としているが、有効なワクチンが出てくればこの地域が世界で一番恩恵に浴すると期待する。

バークレイズのクリスチャン・ケラー氏は、ファイザーのワクチンのニュースが、世界経済成長、特にコモディティなどの需要見通しが改善したことから新興国資産の値上がりを一層加速させたと指摘。新興国は米国の選挙における「勝ち組」にもなると付け加えた。

<利回り面の妙味も>

新興国資産を巡る熱狂は、ワクチンや米国の「政策正常化」期待だけが理由ではない。

ソシエテ・ジェネラル(ソジェン)とシティは11日、ともにトルコリラについても弱気から強気に転換した。これはエルドアン大統領が中央銀行総裁を解任、財務相が辞任した後、エルドアン氏が政策の大幅な軌道修正を約束したからだ。ソジェンのフェニックス・カレン氏は「トルコが経済政策をより正統的な枠組みに戻す方向への劇的な姿勢転換を図りたがっているという証拠が急速に蓄積されている」と述べた。

国際通貨基金(IMF)の推計では、春先におよそ1000億ドルもの資金が逃げ出した新興国には最近数カ月間、着実に資金が流入している。その要因としては、先進国の金利が事実上ゼロかマイナスに沈む中で、新興国の相対的な高金利という、以前から存在した魅力も挙げられる。

資産運用会社カルミニャクの戦略投資委員会に所属するディディエ・サンジョルジュ氏は「われわれは、とりわけ中国を含むアジアの新興国債購入を拡大している。これらの地域は西側よりもずっと高い実質利回りが得られる」と説明した。

UBSの新興国市場戦略責任者マニク・ナライン氏は、中国債と米国債の実質利回り差は少なくとも過去10年で最も大きく、中国債にそうしたプレミアムがあるゆえに、人民元は上昇が続くと見込んでいる。

ナライン氏は「目下の大きなテーマは、人民銀行(中央銀行)がどこまで人民元高を容認するかだ。トランプ氏が中国たたきを始めた2018年序盤に付けた1ドル=6.4元に達するのもそう遠くない」と述べた。

(Marc Jones記者、Tom Arnold記者)

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