アングル:パリで露天商一斉摘発、五輪控え偽造品の取り締まり加速
ロイター / 2024年7月14日 8時18分
今月26日に開幕するパリ五輪で多くのアスリートが競い合うメインスタジアム「フランス競技場(スタッド・ド・フランス)」。この場所に近いサントゥアンでは4月3日、普段は観光客でにぎわうのみの市に警察官が押し寄せ、偽ブランド品のバッグや靴を販売していた11店を強制閉店させた。写真は6月、五輪公式グッズが販売されるパリ・シャンゼリゼ通りの「メガストア」で撮影(2024年 ロイター/Gonzalo Fuentes)
Helen Reid Layli Foroudi Mimosa Spencer
[パリ 9日 ロイター] - 今月26日に開幕するパリ五輪で多くのアスリートが競い合うメインスタジアム「フランス競技場(スタッド・ド・フランス)」。この場所に近いサントゥアンでは4月3日、普段は観光客でにぎわうのみの市に警察官が押し寄せ、偽ブランド品のバッグや靴を販売していた11店を強制閉店させた。
ルイ・ヴィトンやナイキのコピー商品を含む衣類や靴、革製品など約6万3000点が押収され、その場でごみ収集トラックに投げ入れられたほか、10人が逮捕された。
県内でパリ五輪の陸上・水泳競技の試合、閉会式の式典を担当するセーヌサンドニ県警のミシェル・ラボー警備主任は、今回の取り組みはパリ五輪に向けた違法な模造品対策の一環だと述べた。
偽造ファッション商品は、いわゆる「ビッグビジネス」だ。欧州連合知的財産庁(EUIPO)は、衣類のブランド模倣品だけでも、2018-21年の仏国内企業の売り上げに年間平均17億ユーロ(約2970億円)の損失をもたらしたと推測している。
「過去2年間ずっと、偽造品問題が議題に上がっている」とラボー氏は述べ、警察は取り締まりの強化を検討していると話した。成果に差はあるものの、2008年の北京や、12年のロンドン、16年のリオデジャネイロなど過去の五輪開催地と同様、「世界的なファッションの都」パリでも警察による摘発が行われている。
フランスの公式統計によれば、セーヌサンドニ県では住民の3人に1人が貧困状態で暮らす。同地での露天商の取り締まりは、既に経済的苦境に直面している住民をさらに困難な状況へ追いやりかねないと非難する声もある。
フランス国立科学研究センターで都市計画などを研究するアクセル・ウィルモー氏は、パリ郊外の非公式な販売業者に対する警察の存在感や圧力が過去3カ月間で急速に高まったと指摘する。警官の巡回頻度が増えたほか、露店を設置させないための金属製バリケードも導入されているという。
「社会不安や貧困、望ましくないものの痕跡を消し去ろうとする意志が見え隠れしている」
ウィルモー氏は、警察は偽造品の売り手と正規の中古品販売者を区別せずに取り締まる場合も多いと指摘した。
パリ警察にコメントを要請したが、返答は得られなかった。
区長から内務大臣への書簡をロイターが確認したところでは、パリを象徴するモンマルトルの丘付近での非公式販売業者への警察による介入は、2月以降増加。6月上旬の4日間にわたって10回の一斉摘発が実施され、およそ1000の業者を抱える市場が解体された。この書簡によると、今年3月だけで70トン分の商品が処分されたという。
<多額の儲けが見込まれるイベント>
パリ五輪にはおよそ1500万人の来場者が見込まれている。こうした人々は高級品の購入にも関心を持つ傾向が高く、偽造品販売者にとっても格好のターゲットだ。
パリ大会委員会や国際オリンピック委員会(IOC)は昨年、公式グッズの偽造品への懸念から知的財産権利者団体ユニオン・デ・ファブリカン(UNIFAB)に加入した。同団体は会員のブランドと連携し、安全規定に違反し犯罪の資金源となることも多い偽造品にまつわるリスクの啓発活動を行っている。
パリ大会のスポンサーである仏高級ブランドLVMH(モエ・ヘネシー・ルイ・ヴィトン)もUNIFABの会員に名を連ねている。偽造品取り締まりを巡り、LVMHにもコメントを求めたが、返答はなかった。同社は過去に、知的財産権を主張し消費者をコピー商品から守るため、当局や税関と連携すると発表している。
フランスは既に、偽造品を取り締まる姿勢を強めている。5月に発表されたデータによると、仏税関は2023年に約2050万件の模倣品を摘発。22年の1150万件に比べ、78%増加した。
UNIFABは今春、税関職員1200人に対して、赤い大会マスコット「フリージュ」や五輪関連グッズが純正品かどうかを識別できるようトレーニングを行った。また、仏当局は国内外の犯罪ネットワークを撲滅すべく、インターネット上に出回っている偽造品を取り締まる捜査官を70人配備している。
「パリは、ヨーロッパにおけるコピー商品の中心地として認知されては困ると考えている」と主に知的財産法を扱う弁護士のジョン・コールドハム氏は言う。同氏は12年のロンドン五輪に先駆けて行われた偽造品撲滅運動「フェイクフリー・ロンドン」で、法律事務所ガウリングWLGの担当者としてブランド企業に協力した。
ただフランスのファッション企業にとっては、偽造品による収入減よりも、五輪期間中に外国人消費者がパリに訪れることを避ける傾向に起因する懸念の方が大きいかもしれない。
仏航空大手エールフランスKLMは先週、一部の外国人観光客が旅行先にパリを避ける傾向があるとして、6-8月のユニットレベニュー(座席キロ当たりの収入単位)に最大1億8000万ユーロの悪影響がある可能性があると警鐘を鳴らした。LVMHやライバル企業も五輪による収入増は見込んでいないとし、他の分野に注力するかもしれないとの考えを示している。
投資会社バーンスタインの高級品アナリスト、ルカ・ソルカ氏は「高級ブランド企業は仏南部コートダジュールや伊ミラノなど、パリ以外の場所で購入者を受け入れる態勢を整えているようだ」と分析した。
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