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焦点:米大統領令の新型コロナ経済対策、効果乏しいと専門家

ロイター / 2020年8月13日 10時12分

 トランプ米大統領(写真)は8日に議会での合意を待たず、新型コロナウイルス危機への新たな経済対策を、審議を迂回した形で独自に打ち出した。しかし専門家からは、景気浮揚効果は乏しいとの声が上がっている。写真は10日、ホワイトハウスで撮影(2020年 ロイター/Kevin Lamarque)

[11日 ロイター] - トランプ米大統領は8日、議会での合意を待たず、新型コロナウイルス危機への新たな経済対策を、審議を迂回した形で独自に打ち出した。しかし専門家からは、景気浮揚効果は乏しいとの声が上がっている。

トランプ氏が署名した大統領令と大統領覚書は(1)失業給付加算を週600ドルから400ドルに減額した上での継続(2)一部従業員を対象とした給与税の納付猶予(3)学生ローンの返済凍結延長(4)住居立ち退き猶予──といった内容だ。

こうした内容の大統領令を出すことに法的根拠があるのか、という問題を克服できたと仮定しても、対策の効果は薄いとエコノミストは言う。

ムーディーズ・アナリティクスの首席エコノミスト、マーク・ザンディ氏の計算では、今回の経済対策規模は総額4000億ドル余りにとどまる可能性がある。JPモルガン・チェースのエコノミスト、マイケル・フェロリ氏は10日の電子メール文書で、景気刺激効果は「1000億ドルを下回る」かもしれないとした。

これに対し、共和党主導の上院が提案している追加景気対策は1兆ドル規模で、民主党主導の下院を通過している対策案は3兆ドルを超える。

オックスフォード・エコノミクスの上席エコノミスト、リディア・ブースール氏の推計によると、大統領令の対策規模は国内総生産(GDP)の0.2%相当と、「無視してよい規模」だという。

米国では既に週600ドルの失業給付加算が失効し、全米で住居立ち退き猶予措置の打ち切りが始まり、中小零細企業を支援する「給与保護プログラム(PPP)」が終了した結果、今月、経済的に困窮する失業者は何百万人にも上る可能性がある。

専門家によると、トランプ氏が提案した措置の一部は実行に時間を要する上、法的根拠を巡り訴訟になる可能性もある。ザンディ氏はインタビューで「すぐにはだれにも利益をもたらさない」と指摘した。

トランプ氏の対策は、政府の支援に頼る労働者全員に行きわたらない恐れもある。例えば400ドルの失業給付加算は、100ドル以上の失業給付を受ける人にしか適用されず、一部の低所得労働者を排除する可能性がある。給付加算は440億ドルの災害救援基金から捻出される予定だが、フェロリ氏の推計では5─6週間程度しかもたない。

また、失業給付加算400ドルの25%を州政府が負担するよう義務付けているため、ただでさえ新型コロナウイルス危機で逼迫している各州の財政にはさらに重圧がかかる。

ブースール氏によると、給与税のうち従業員負担分の納付を9月から12月まで猶予する措置は、失業していない人しか助けないため、個人消費を促進する目立った効果はなさそうだ。しかもこうした従業員は後々には結局、税金を納める義務がある。

住居立ち退き猶予は、家賃支払いや住宅ローン返済が遅れている人々を直ちに立ち退きの危機から救済する効果はないかもしれない。トランプ氏は住宅都市開発長官と財務長官に対し、貸借人と大家を支援する方法を検討するとともに、住居立ち退き・差し押さえを避けるための法的措置を調査するよう要請しただけで、具体策は一切示していない。

ザンディ氏によると、最も実現可能性が高いのは学生ローン返済凍結措置の延長だ。現在の措置は9月末に期限を迎えるが、トランプ氏はこれを年末まで延長する。

ザンディ氏によると、借り手はこれにより総額150億─200億ドルを手元に確保できる。「学生にとっては大きな話だが、危機に陥ったマクロ経済にとっては全く取るに足らない」

(Jonnelle Marte記者)

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