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焦点:課題山積で始動する菅体制、正当性確保へ人事・解散がカギ

ロイター / 2020年9月14日 16時30分

自民党の新総裁に当選した菅義偉官房長官は、16日に新首相として新たな政権を発足させる。山積する課題の対応の行方を左右するのは、組閣と党役員人事、衆院解散の時期などになりそうだ。写真は新総裁に選ばれ、両手を挙げてポーズを取る菅氏。2020年9月14日、代表撮影(2020年 ロイター)

竹本能文、中川泉

[東京 14日 ロイター] - 自民党総裁選で石破茂元幹事長と岸田文雄政調会長を大差で破った菅義偉官房長官は、16日の首相指名選挙で選出されれば新首相として新たな政権を発足させる。コロナ感染拡大防止と経済再生をどう両立させるか、政権の正当性を確保し、求心力をどう高めるか、米中対立などの問題にどう対応するか。山積する課題に取り組む新首相の姿勢は、閣僚・党役員人事や衆院解散の時期などを通じて探ることになりそうだ。

<政策実現へ政権正当性が必要>

コロナ禍が終息しない中、菅氏のスタンスは明確だ。「経済再生」を重視する姿勢は、感染拡大が収まらない中でのGoToキャンペーンの実施などから明らかだ。ただ経済再生に向けた具体的なマクロ政策などに関する発言は「アベノミクス」の継承といった言葉に集約され、独自色は示されていない。むしろ、省庁縦割りの弊害突破、不妊治療の保険適用といった少子化対策、デジタル庁創設や行政の電子化推進など、中長期的な改革姿勢が看板ともいえる。

このため、こうした中期的な改革断行に必要な政権の正当性と安定性確保が、菅氏が希求すべき課題となる。菅政権誕生の背景に党内の派閥相乗りの構図があることは明らかで、政権運営上最大の課題はこうした構図を脱却すること。解散で正当性を確保することはその解となり得る。

永田町では、解散するなら今秋との声は多い。2021年度予算の概算要求期限である9月末以降に解散、10月25日投開票などのシナリオがささやかれている。

今秋を逃せば、インフルエンザが流行する冬はコロナの問題が懸念されるほか、年明けには来年度予算編成、さらに夏にかけて東京都議選、東京五輪・パラリンピックが控える。年明け以降はタイミングが限られ、年内解散を望む自民党関係者は多い。「菅氏は調整能力は卓越しているが国会答弁は得意とは言えない。年明け通常国会が開けば、内閣・与党支持率が再低下する可能性もある」(自民幹部)との声もある。

<早期解散は矛盾、感染収束と経済再生が条件>

しかし「10月にも解散」とのシナリオがここで浮上することには批判の声も多い。自民党が今回の総裁選で全国の党員投票を見送った理由が緊急事態だったからだ。解散総選挙をして政治空白を作ることと整合性が取れない。

さらには感染拡大防止が喫緊の課題であれば、選挙活動を通じた感染の広がりは厳しい批判にさらされる。

第一生命経済研究所の首席エコノミストの熊野英生氏は「政策実行に向けた正当性の確保か、矛盾した解散への厳しい批判で支持率が下がるリスクか、どちらをとるかが問われる」と難しい状況に置かれるとみている。

現在与党の一角を占める公明党も「解散・総選挙で1カ月半ないし2カ月の政治空白を作ることを国民は今、望んでいない」(山口那津男代表)として年内解散に慎重だ。「秋に解散すれば支持率急落の可能性もある」(公明党関係者)との指摘もある。

市場関係者からは、「解散ができる条件として、感染の収束と経済の持ち直しが必要」(SMBC日興証券・チーフマーケットエコノミスト・丸山義正氏)との声は多い。まさしく菅氏が唱えてきたように「感染防止対策を講じながら、段階的に経済社会活動を再開させていく」ことが必要となる。

ただ実行は難しい。「コロナが収束しないと経済回復は難しく、経済回復とコロナ対策の難しいバランスが必要。10月などの選挙は、難しいのではないか」(ニッセイ基礎研究所の上野剛志シニアエコノミスト)と指摘がある。

今月のロイター企業調査でも、当面コロナの事業への影響が「終息するメドが立たない」との回答が5割以上を占め、5月から減っていない。

カギを握るワクチン開発は、治験の一時中断を余儀なくされるものもあり、確約されもたのではない。菅氏が幾度も「来年の前半までに全国民に提供できる数量を確保する」と強調しているが、それがコロナ禍の終息に結び付く保証はない。

<米中対立激化、日本に対中強硬姿勢要求も>

菅政権として直面するのは内政だけではない。米中対立の激化は日本にも確実に影響しつつある。

11月の米大統領選は「トランプ氏、バイデン氏いずれが勝つかまだ見極められない」(自民中堅)なかで、いずれの候補が勝利しようとも、米国の対中強硬姿勢に巻き込まれていくことは確実だ。

すでに「米国政府は対中経済安全保障で日本に期待している」(外務省関係者)ことから、習近平国家主席の国賓来日の扱いなどを含め、中国との付き合い方は難しい局面を迎えそうだ。

安倍政権下では、「後半は『一帯一路』を承認するなど親中姿勢が明確になり、首相補佐官の今井尚哉氏や二階俊博・自民党幹事長などが親中派として存在してきたと米側では分析している」(元外交官の美根慶樹氏)との見方もある。

このため、菅政権の官邸内や党人事の行方も、対中戦略への影響が小さくないとみられる。コロナ感染の拡大を防ぎつつ、経済再生に向けてどういう具体策をとっていくか。そのためにどういう布陣で臨むかは、解散戦略とも絡み、新政権が本格政権となるかを左右することになりそうだ。

(竹本能文、中川泉 編集:石田仁志)

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