日銀短観、2四半期連続の改善も依然低水準 非製造業先行き厳しく
ロイター / 2020年12月14日 12時35分
日銀が12月14日発表した12月の全国企業短期経済観測調査(日銀短観)は、大企業・製造業の業況判断指数(DI)がマイナス10となり、9月調査のマイナス27から17ポイント改善した。ロイターの予測中央値マイナス15を上回り、2四半期連続で改善した。写真は都内で昨年1月撮影(2020年 ロイター/Issei Kato)
[東京 14日 ロイター] - 日銀が14日に発表した12月短観は、大企業・製造業の業況判断指数(DI)がマイナス10、非製造業がマイナス5で、ともに2四半期連続で改善した。自動車の改善が幅広い業種に波及し、製造業は約18年ぶりの大幅上昇となった。ただ、水準としては依然低い。非製造業はGoToトラベルなどの恩恵もあり一時的に改善したものの、新型コロナウイルスの感染再拡大などが懸念され先行きは厳しい。
<大企業・製造業の業況判断DI、予想上回る改善>
大企業・製造業の業況判断DIは、前回9月調査のマイナス27から17ポイント改善。ロイターの予測中央値マイナス15も上回り、改善幅は2002年6月調査以来の大きさとなった。
「自動車」は前回調査のマイナス61からマイナス12へ48ポイントの大幅改善。改善幅は東日本大震災後のサプライチェーンの混乱などから回復途上にあった11年9月調査以来の大きさ。自動車の需要回復が「繊維」、「化学」、「鉄鋼」、「非鉄」、「金属製品」、「はん用機械」、「生産用機械」など幅広い業種に波及した。
自動車需要以外では「化学」、「はん用機械」、「生産用機械」などの業種から米国や中国向けなど外需の好調を指摘する声も聞かれた。住宅用資材の需要回復などから「木材・木製品」の改善もみられた。
先行き判断DIは、自動車関連の回復継続や外需の好調が期待されマイナス8とさらなる改善を見込む。一方、「石油・石炭製品」からは原油価格の先行き不透明感を懸念する声も出ていた。
<非製造業の先行き、コロナ再拡大の影響懸念>
大企業・非製造業の業況判断DIは、マイナス5と前回調査に比べて7ポイント改善。予測中央値のマイナス6を上回った。政府の観光促進策「GoToトラベル」により、宿泊・飲食・対個人サービスの景況感が改善した。改善幅は10年9月調査以来の大きさ。
「不動産」から商業施設への客足の改善、「物品賃貸」から情報端末のリース需要の増加、「卸売」や「運輸」などからは製造業の生産活動の好影響を指摘する声もあった。
ただ、先行き判断DIはマイナス6に悪化する見通し。建設の投資需要減少や、小売や情報サービスなどでは巣ごもり需要の反動を警戒する声も出ている。
とりわけ中小企業は厳しく、足元の業況判断DIはマイナス12、コロナ感染再拡大の影響を懸念する声が幅広い業種から聞かれ、先行きはさらにマイナス20への悪化が予想されている。
今回の短観の調査期間は11月11日から12月11日。回答基準日は11月27日で、約75%が回が回答していた。国内のコロナ感染再拡大は11月20━23日の3連休手前から意識され始めており、その影響が先行きの見通しに織り込まれている。
企業金融では資金繰り判断DIが大企業、中堅企業、中小企業でいずれも改善。金融機関の貸出態度は大企業、中堅企業、中小企業でいずれもプラス圏ながら前回よりも悪化した。
20年度の設備投資計画では、全規模・全産業が前年度比マイナス3.9%で前回9月調査から1.3%ポイントの下方修正となった。12月調査時点でマイナスとなるのは09年度以来。
20年度の新卒採用計画は6月調査から中小企業を中心に下方修正され、全規模合計で前年度比マイナス2.6%減少する見込み。21年度の新卒採用計画についても前回から下方修正され、全規模合計で同マイナス6.1%減少する見込みとなった。
事業計画の前提になっている想定為替レート(全規模・全産業)は、20年度のドル/円が106.79円、ユーロ/円が121.04円。ドル/円が9月調査の107.34円より円高方向に振れる一方、ユーロ/円は120.42円から円安方向にシフトした。
企業の物価全般の見通しでは、1年後が前年比プラス0.3%と前回から変わらず。一方、3年後はプラス0.7%、5年後はプラス0.9%と、ともに前回を0.1%ポイント上回った。
*内容を追加しました。
(和田崇彦、杉山健太郎 グラフ作成・編集:田中志保)
この記事に関連するニュース
-
日銀にまた逆風~「ゲタ」に変化、7月「展望レポート」24年度成長率見通しは下振れ必至~(愛宕伸康)
トウシル / 2024年7月3日 8時0分
-
日本株:4-6月決算発表に期待、業績好調継続か。6月日銀短観DIは高水準(窪田真之)
トウシル / 2024年7月2日 8時0分
-
実質GDP「年率2.9%減」…異例の同時発表となった「日銀短観(6月調査)」と「GDP統計(1~3月期GDP改定値)」の要点【解説:エコノミスト宅森昭吉氏】
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年7月2日 7時0分
-
大企業・製造業2期ぶり改善、物価見通しは引き上げ=6月日銀短観
ロイター / 2024年7月1日 10時58分
-
製造業景況感、2期ぶり改善 日銀短観、値上げ進展
共同通信 / 2024年7月1日 10時38分
ランキング
-
1「土用の丑の日」物価高でも…あの手この手の“うなぎ商戦” 大手スーパーの目玉は「超特大」
TBS NEWS DIG Powered by JNN / 2024年7月22日 19時59分
-
2イタリア人が営む「老舗ラーメン店」の人生ドラマ 西武柳沢「一八亭」ジャンニさんと愛妻のこれまで
東洋経済オンライン / 2024年7月22日 11時30分
-
3「最高益の会社」の株価が上がらない当然の理由 相場に影響を与えるのは過去のデータではない
東洋経済オンライン / 2024年7月22日 16時0分
-
4日本企業が「20年で世界から没落した」2大理由 日本企業の「現場」で"何が"起こっていたのか
東洋経済オンライン / 2024年7月22日 9時40分
-
5なぜユニクロは「着なくなった服」を集めるのか…「服屋として何ができるのか」柳井正氏がたどり着いた答え
プレジデントオンライン / 2024年7月22日 9時15分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください