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アングル:EUの対中関税、米よりマイルド 切れない経済関係

ロイター / 2024年6月14日 18時14分

 6月13日、欧州連合(EU)が中国製の電気自動車(EV)の関税引き上げを決めたのは、EUの対中姿勢が強硬化していることを反映している。写真は中国・江蘇省の連雲港市の港に並ぶ車両。2019年撮影(2024年 ロイター)

Philip Blenkinsop

[ブリュッセル 13日 ロイター] - 欧州連合(EU)が中国製の電気自動車(EV)の関税引き上げを決めたのは、EUの対中姿勢が強硬化していることを反映している。しかし、中国からの完全なデカップリング(切り離し)を目指す米国の厳しい姿勢には及ばない。

EUの今回の措置自体は、一部の中国メーカーに対する関税を5倍近くに引き上げるもので、中国製EVの輸入関税を4倍に引き上げた米国の上を行く。

しかし、バイデン米大統領の計画はさまざまな中国製品に及び、EVの税率は100%に設定される。これに対してEUの措置はEVに限定されており、関税率は最高48.1%、加重平均すると31%だ。

米国に比べて控えめな措置にとどめた背景には、貿易は国際ルールに基づいて行われるべきだというEUの強い信念と、中国との貿易戦争では失うものの方が大きいという認識がある。

ベルギーのブリュッセルに本拠を置くシンクタンク、ブリューゲルのニクラス・ポワティエ研究員は「米国の措置は中国のEVを排除することを狙っている。EUの意図は中国企業の優位性を奪うことにある」と指摘。EUは「(中国の)補助金による効果を無効にするのが狙い」であり、米国とは違うと話した。

中国は米国の関税を「典型的ないじめ」だと非難したが、EUについては「典型的な保護主義」という少し穏やかな文言にとどめた。

<強硬化するEU>

EUは過去1年間、中国のビジネスに対する監視の目を強めてきた。

EUは10年前の中国製ソーラーパネルに関する調査から教訓を得たようだ。当時は関税を課さず、EU域内の産業は崩壊してしまった。

中国のEV補助金に関する調査は、EUによる対中措置として、ここ数年で最も注目を集めたケースだ。欧州委員会が産業界からの訴えを受けてではなく、独自の判断で調査に乗り出した最初の事例でもある。

欧州委員会は「外国補助金規制」に基づいて一連の調査を行ってきた。この規制は、EU域内で活動し、市場をゆがめる補助金を受け取っている外国企業を抑えつけるのが目的で、中国がその焦点であることは明らかだ。

欧州委はまた、中国経済における国家主導の「ゆがみ」に関する報告書を更新。報告書では、EUの半導体メーカーややクリーン技術を手掛けるメーカーからの苦情にも門戸を開き、鉄鋼やセラミックといった伝統産業に関する潜在的な事例も追加している。他の国について同様の報告書は存在しない。

EUは中国を戦略的ライバルとみなすようになっている。EUの外交部門は2023年末、中国が国内ではますます抑圧を、国外ではますます自己主張を強め、経済的強制や重要鉱物の輸出規制を行うようになっていると指摘した。ウクライナ侵攻後のロシアを中国が支援したことで、EUは一層懸念を募らせた。

EUは今や「デリスク(リスク低減)」を呪文のように唱えている。つまり中国への依存度を下げるということだ。

<ルールを堅持するEU>

英シンクタンク、欧州改革センター(CER)のアスラック・ベルグ研究員は、EUは米国の姿勢に近づきつつあるが、同程度には達しておらず、依然として伝統的な手段を用いていると述べた。

EUが12日に発表した関税措置については「政治的にはセンシティブさを増したが、鉄鋼関税のケースと法的側面は変わらない」と語る。

EUの措置はもっぱら補助金に関するものだが、バイデン大統領は中国の技術移転やサイバースパイ活動の脅威も強調している。

EUはルールに基づいた国際貿易を堅持しており、自らの調査と関税は世界貿易機関(WTO)のルールに適合していると主張している。かたや米国は、WTOのルールでは中国の「非市場的」慣行に対処できないとの立場だ。

ベルグ氏は「EUはまだトランプ前米大統領以前の枠組みで行動している。米国は中国に関しては、WTOの制約から飛び出し、国内政策に従って行動している」と説明した。

米国に比べて慎重なEUの姿勢は、中国との経済的結びつきを反映している。

昨年、米中間の物品貿易総額は5730億ドルで、米国の輸出額は1480億ドルだった。これに対し、EUと中国の物品貿易は7390億ユーロ(7980億ドル)で、EUの輸出は2230億ユーロ(2410億ドル)だ。

ドイツの自動車メーカーは自社モデルの約30%を中国に輸出しており、関税を最も声高に批判してきた。

「EUにとって、米国のやり方を真似るのは合理的ではない」とポワティエ氏は言う。

CERのベルグ氏によると、米国とEUは異なる観点から中国との対抗関係をとらえている。米国は、自国の世界的覇権に中国が挑むのを抑えたいと考え、EUは、中国がさらに強大化した場合どう振る舞うかに、より大きな懸念を抱いているという。

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