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アングル:「世界の工場」目指すインド、ライバル中国との関係改善が先決

ロイター / 2024年9月14日 14時15分

 中国に代わる「世界の工場」を目指すインドには、乗り越えるべき壁がある。まずは長年のライバルである中国それ自体との関係を改善することだ。7月23日、インドのアーメダバード郊外にある工場で撮影(2024年 ロイター/Amit Dave)

Shivangi Acharya Sarita Chaganti Singh

[ニューデリー 11日 ロイター] - 中国に代わる「世界の工場」を目指すインドには、乗り越えるべき壁がある。まずは長年のライバルである中国それ自体との関係を改善することだ。

両国の関係は、2020年にヒマラヤ山脈の国境沿いで衝突して以来、緊張状態が続いている。このため電気自動車(EV)、半導体、人工知能(AI)の需要の爆発的な伸びを尻目に資本、技術、人材の交流は滞っている。

インドのモディ政権はこの間、中国からの投資に対する審査を厳格化し、中国のEV大手BYD(比亜迪)や自動車大手の長城汽車による何十億ドルもの投資を事実上断ってきた。また中国が関わるインド企業に対する規制も強化した。

ただインド政府は現在、規制の一部緩和を検討している。国内生産を促進するため製造業に数々の補助金を支給しているにもかかわらず、企業は生産規模の拡大に苦戦しているからだ。

米イェール大学のスシャント・シン講師は「特にハイテク製品や太陽電池、EVのような特定分野では、中国のサプライチェーン(供給網)に属していないと何もできないことが分かってきた」と語る。

中国からの輸入に対する障壁を支持している企業でさえ、同国からのインプットの必要性を認めている。

インドの鉄鋼大手ジンダル・スチール・アンド・パワーの代表で国会議員のナビーン・ジンダル氏は、中国製鉄鋼への関税を支持しつつ、対中貿易について現実的なアプローチが必要だとも感じている。

「多くの鉄鋼会社が中国から設備や技術を輸入している。中国は世界最大の鉄鋼生産国であり、全てではないが特定の分野において非常に優れている」とジンダル氏は語った。

モディ政権は4年前から、中国からの投資とビザ(査証)を制限してきたが、今では中国に歩み寄ることで、製造業振興策「メーク・イン・インディア」構想に新たな息吹を吹き込もうとしている。

政府内の協議に詳しい高官はロイターに「インド政府は、国境を接する国々に対して2020年に導入した投資規則の緩和を検討している。投資をもっと呼び込む必要があるからだ」と明らかにした。

インドは現在、中国の持ち株比率が10%以下の企業による投資について、政府の承認を不要とする条項を追加することを計画している。これにより、中国企業とサプライチェーンで提携しているグローバル企業による対インド投資が容易になる可能性がある。

一方で安全保障上の懸念に対処するため、政府は犯罪・詐欺捜査機関や銀行監督当局が主導する投資後の監視枠組みを設ける予定だ。

こうした動きは中国からの投資拡大を促すことになるだろう。アナリストによると太陽電池、EV、バッテリー製造などのハイテク分野でインドが世界のサプライチェーンに加わるためには、中国からの投資が不可欠だ。

別の高官によると、モディ政権はこうした緩和案を推し進めている段階であり、省庁間でさまざまな懸案事項の調整が行われている。

産業界の働きかけを受け、インド政府はすでに中国人へのビザ発給を緩和。インド国内生産促進のために政府から補助金を得ているセクターで働く中国人技術者については、ビザ承認を迅速化している。

前述の2人とは別の政府高官によると、専門技術を持つ中国人への短期ビザ承認は2000件近くに上っているもよう。これらは昨年11月から今年7月にかけてのビザ申請件数の大半を占めたという。

インドのジャイシャンカル外相は今週、インドが「中国からの投資に門戸を閉ざして」はいないと発言。どのセクターで、どのような条件で中国がビジネスを行うかの方が問題だと述べた。

<中国サプライチェーンに組み入れ>

インドは2020年に中国と衝突した後、米アップルを誘致するために同社の中国サプライヤーとインド企業との合弁事業を迅速に承認した。

この結果、アップルは2023─24会計年度に世界のiPhone(アイフォーン)組み立ての14%をインドに移すことになった。同年度にインドの携帯電話輸出は42%増えて過去最高の156億ドル(約2兆2300億円)に達した。

それでもなお、インドの製造業が投資に見合うだけの規模を備えているか、あるいは中国の製造業に匹敵する生産性向上を達成できるかは疑問だ。

インド政府のV・アナンサ・ナゲスワラン首席経済顧問は7月、インドが中国のサプライチェーンに参入するのは避けられないと指摘。「輸入だけに頼るのか、それとも部分的に中国からの投資で賄うのかを、インドは選択しなければならない」と語った。

外国からインドへの投資が激減していることも、貿易障壁についての再考を促している。

政治から離れれば、インドでの中国製品需要は引き続き旺盛だ。  

2020年の国境での衝突以来、中国からのモノの輸入は56%急増し、対中貿易赤字はほぼ2倍の850億ドルとなった。中国は依然としてインドにとって最大の商品供給国であり、昨年は工業製品の最大の供給国だった。

インド携帯電話電子製品協会のパンカジ・モヒンドロー代表は「国家安全保障を犠牲にすることなく中国の投資と技術をある程度流入させられれば、われわれはより良い生活を送ることができるだろう」と語った。

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