焦点:中国株式市場、期待から失望へ 個人の売り加速
ロイター / 2025年1月15日 7時40分
Samuel Shen Summer Zhen
[上海/香港 14日 ロイター] - 中国のデイトレーダー、ルー・デロン氏の株価上昇への楽観的な見方は、年明け第1週に早くも消え去った。わずか3カ月前には、中国当局による景気刺激策を受けた株高騰を期待してポジションを組んでいたが、株式を売却して損失を計上することを余儀なくされた。
ルー氏のような多くの個人投資家が1月上旬に株式を売却したことから、中国株式市場は過去10年で最も弱い新年のスタートを切った。
ルー氏は「売りは私の理解を超えている。トランプ次期米大統領は中国にとってマイナスの発表を新たにはしていないのに」と首を傾げた。
その上で「説明がつくとすれば、市場はより強力な政策の導入を政府に催促しているということだろう」と語った。ルー氏は昨年9月下旬に中国株について強気の見方に転じたが、1月下旬から始まる旧正月の休暇を控えて現在は現金のみを保有する予定にしている。
経済政策への幻滅や米関税に対する懸念を背景に、個人は売りを加速させており、中国株は数年来の下落トレンドに逆戻りしかねない。
中国株は、コロナ禍や不動産セクターの苦境、消費者マインドの低迷によって3年間続いた下落を経て、2024年は年間でプラスに転じた。
中国の株式取引の約70%はリテールマネーが占めていることから、売りによってレバレッジをかけた取引の無秩序な巻き戻しが引き起こされ、資本市場の安定化に向けた当局の努力が停滞するリスクがある。
北京を拠点とする資産運用会社、凌通盛泰の董事長である董宝珍氏は、中国政府は経済再生のために持続可能な強気市場を必要としているが、ブームが起きてそれがはじければ、富は破壊され、消費は打撃を受け、中国経済に悪影響が広がることになる」と語った。
<中途半端な政策に失望>
中国当局が金利引き下げに踏み切り、市場を防衛する意向を表明した昨年9月下旬、市場は回復の兆しを見せた。投資家は株式を買いあさり、上海と深センの株式市場に上場する有力企業300銘柄で構成するCSI300指数はわずか2週間で40%上昇した。
その後、投資家がより具体的な政策を待つ姿勢に転じたことから、市場は全体的に冷え込んだが、個人の取引は活発な状態が続いた。
ところが、25年に入ると投資家の幻滅の兆しが顕著に表れ、上海総合指数と深セン総合指数はこれまでに約6%下落、世界の主要市場の中で世界最悪のパフォーマンスとなっている。
個人投資家のジャン・ジェアン氏は「当局は枯れ木に火をつけたが、水で消された」と述べ、政策が中途半端だったとの見方を示した。
中国人民銀行(中央銀行)は、機関投資家が株式を購入するための流動性を提供する5000億元(約680億ドル)規模のスワップファシリティーを設立したが、24年末までに利用されたのはわずか500億元にとどまり、機関投資家の懐疑的な姿勢が浮き彫りになった。
外国人投資家も市場から撤退している。ゴールドマン・サックスは、世界のヘッジファンドは昨年の景気刺激策主導の株価上昇時に中国へのエクスポージャーを増やしたが、すぐに解消したと指摘。一方、ロングオンリーファンドは「おおむね様子見を決め込んでいた」という。
<今は忍耐が肝要>
アルパイン・マクロのチーフ新興市場・中国担当ストラテジスト、ヤン・ワン氏は「市場が『ビッグバン』を期待しているのに対して、中国当局は経済成長の状況やトランプ氏の政策を待つ『様子見』モードになっていることが」最大のミスマッチとの見方を示している。
グロー・インベストメントのパートナーでチーフエコノミストのハオ・ホン氏は、トランプ氏が中国製品に60%の関税を課すと脅していることが大きな不確実性の要因になっていると指摘。「今、市場は非常に不安定で、トランプ氏は非常に予測不可能な人物」とし、「政策の変更を待つしかない。チャンスがなければ行動しないことだ」と助言する。
上海在住の投資家のマオ・ジアン氏は、9月末から5000億元相当の借り入れ資金が市場に投入されているため、無秩序な個人投資家の撤退がマージンコールを引き起こし、それに伴う大混乱で上海指数が今月中に重要な節目である3000を割り込む可能性があると指摘した。
前述の個人投資家ジャン氏は、危機再来を回避するために、人民銀のバランスシートを積極的に拡大し、ソブリン市場安定化基金を設立すべきと主張。「湿った木を燃やすにはより大きな炎が必要」と述べた。
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