焦点:堅調な設備投資に足元で強まる逆風、輸出と投資の悪循環も

ロイター / 2019年8月14日 15時26分

 8月14日、6月機械受注統計では、企業の設備投資意欲が非常に底堅く、貿易摩擦の影響をさほど受けていないことが確認された。写真は都内で2016年4月撮影(2019年 ロイター/Toru Hanai)

[東京 14日 ロイター] - 14日発表の6月機械受注統計では、企業の設備投資意欲が非常に底堅く、貿易摩擦の影響をさほど受けていないことが確認された。しかし、米国による対中追加関税や円高など、7月以降の経済環境の変化は、投資意欲に水を差しかねない。国内だけでなく世界的な投資の停滞は、資本財のウエートが高い日本の輸出に打撃となり、投資と輸出が同時に下押しされかねない懸念も浮上する。

<設備投資の強さ確認>

6月機械受注統計では、4─6月期の受注額がリーマンショック直後の08年4─6月期以来の高水準となったほか、製造業では7─9月期まで2期連続で増加となる見通しが示された。内閣府幹部は、鉄道車両などの大型案件が相次いだほか、それらを除いても増加基調を維持していることから、内需は堅調だと指摘。米中摩擦の影響も一般機械などにとどまっているとの見方を示す。

電機や情報通信機械からの受注も増加しており、世界的なIT需要低迷に底打ちの兆しを指摘する声も出始めている。

大和証券チーフマーケットエコノミスト・岩下真理氏は「(機械受注が)どんどん悪くなる状況からは脱したと言える。設備投資はまだ底堅く、日本経済の頑健性はある」と、素直に評価すべきだとしている。

<対中関税第4弾で下ぶれ必至>

ただ、その岩下氏も、今回は6月下旬時点の調査であり、米国による3000億ドル相当の中国製品への10%の追加関税は織り込まれていないことに注意すべきだと指摘。

政府高官の一人は「第4弾(の追加関税)により、景気の不透明感はますます高まっている」と懸念を隠さない。

米国は13日、携帯電話やラップトップコンピューターなど、第4弾の追加関税対象品目の一部について、関税賦課を延期すると発表したものの、SMBC日興証券の宮前耕也・シニアエコノミストは「あくまで米国内の年末商戦に配慮した決定であり、米中協議の行方は引き続き楽観できない。企業にとって設備投資を積極化する状況ではないだろう」とみている。

このため、7─9月期の機械受注で製造業の見通しが前期比プラスを維持しているとしても、今後下振れを余儀なくされると予想する。

<世界的設備投資減退で輸出も打撃>

企業の設備投資を取り巻く環境としては、世界的な需要動向と収益環境の2点が重要なポイントになる。

そのうち、企業収益は、米中摩擦の深刻化により、すでに低迷している。SMBC日興証券のとりまとめでは上場企業の4ー6月期決算で連結純利益(金融を除く)は前年同期比0.9%減と3四半期連続のマイナス。激しさを増す米中貿易摩擦が影を落とし、製造業が28%超の大幅減益となったという。加えて足元では円高傾向が強まっており、輸出企業にとっての逆風も投資意欲に水を差すことになる。

一方の世界の需要動向も急速に悪化している。オランダ経済政策分析局が作成している世界貿易量は18年後半以降、伸び率が大きく低下し、足もとではマイナスに転じている。前述の政府高官は、貿易取引に多大な影響を与える中国経済について、景気対策の効果がまだ小さく、しばらくは停滞しそうだとみている。

貿易摩擦の一段の深刻化は世界経済の不透明感を高める。特に米国の対中制裁関税第4弾以降は、世界的な株安の進行や為替変動も新たなリスク要因となる。

第一生命経済研究所の新家義貴・主席エコノミストは「先行き不透明感の強まりから、世界的に企業が設備投資を手控えるリスクがあるだろう。日本の輸出は資本財が占める割合が大きいため、設備投資需要の減少が日本の輸出下振れにつながる可能性がある」と指摘する。

輸出の4割近くを占める資本財の需要が世界的に悪化すれば、輸出減退を通じて設備投資に影響していく、という流れに拍車がかかるリスクも生まれる。

(中川泉 編集:石田仁志)

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