情報BOX:「目には目を」 中国の反外国制裁法の内容
ロイター / 2021年6月14日 16時22分
6月11日、中国は「反外国制裁法」を成立させた。これは、人権や香港の問題に関して外国がとった懲罰的措置に対し、中国が報復措置を講じるのを合法化する動きとみられる。上海で3月撮影(2021年 ロイター/Aly Song)
[北京 11日 ロイター] - 中国は10日、「反外国制裁法」を成立させた。これは、人権や香港の問題に関して外国がとった懲罰的措置に対し、中国が報復措置を講じるのを合法化する動きとみられる。
新法は、外務、商務両省がこれまでに打ち出した外国からの制裁への対抗措置を土台にしたもので、直ちに発効する。中国の対抗措置の範囲も明確にされている。
◎法律の対象
10日に公表された法律全文によると、中国国民に対する差別的措置の立案、実施、あるいは中国への内政干渉に関わった個人や法人はブラックリストに掲載される可能性がある。
個人がブラックリストに掲載された場合、その親族や、個人が上級管理職を務める、もしくは支配権を持つ組織もリストに載る可能性がある。
中国政府の「関係部局」は、だれをブラックリストに載せるか、あるいはリストから外すかを決めることができる。
◎ブラックリストに載るとどうなるか
ブラックリストに載った人々や法人は、中国への入国を拒否されたり、国外追放されたりする可能性がある。中国国内の資産が封鎖、押収、凍結されることもある。
中国国内の法人は、ブラックリストに載った法人との間であらゆる形態の取引、協力、その他の活動への参加を制限される可能性がある。このためブラックリスト掲載法人は、中国での活動が制約を受ける可能性がある。
中国の市民や組織は、自分たちを差別する外国の措置の実行者を中国の裁判所に訴えることができる。
◎過去との違い
外務省はこれまで、主に欧米の政治家や学者など、個人に対する制裁措置を発表してきたが、その際、法的根拠として特定の法律を引用してこなかった。
その制裁が及ぶ範囲も、必ずしも明確ではなかった。
商務省は、外国企業を標的とした、いわゆる「信頼できない企業リスト」などの仕組みを発表してきたが、企業がリストに掲載された具体的事例は知られていない。
新法は、中国企業による賠償請求訴訟の許可や、ブラックリスト入りした人物の入国拒否など、外務・商務両省によるこれら行政命令の多くの特徴を兼ね備えている。
北京のアナリストによると、新法はブラックリストに載せることができる人物と制裁内容を明記しているため、制裁が無作為に行われる度合いは低下するもようだ。
◎支持者の見解
中国の国営メディアや専門家は新法について、西側諸国による内政干渉を抑止するのに必要な、待望の「法的武器」だと述べている。
新法を可決した全国人民代表大会(全人代=国会)常務委員会の副委員長14人全員が昨年、国家安全維持法(国安法)を可決したことで米国の制裁を受けている。国安法は、香港の政治的自由を損なったとして批判されている法律だ。
このほか、米国は1月に新疆ウイグル自治区での人権侵害と強制労働を理由に、同地区からの綿花とトマトの輸入を禁止した。
香港城市大学の法学教授、王江雨氏は、欧州連合(EU)には米国の制裁に対抗するための法律「ブロッキング規制」があるため、中国が同様の法律を持っても非難されるべきではないと述べた。
中国人民大学の国際学准教授、Cheng Xiaohe氏は「新法は『にんじんと棍棒』外交の棍棒に当たる。しかし攻撃的ではなく防御的な性質であり、他国が先にわが国に制裁を加えてきた場合にのみ使われる」と語った。
◎批判派の意見
EU商工会議所のヨルグ・ウットケ会頭は、外国企業は政治的なチェスの捨て駒として使われるとの懸念を強めていると述べた。
中国の専門家によると、この法律は外国からの投資環境を悪化させる可能性がある。ただ、中国政府はこれを、国益を守るためなら支払う価値のある代償だと計算しているという。
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