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中銀デジタル通貨、発行・保有額の制限も選択肢=日銀決済機構局長

ロイター / 2020年10月15日 22時12分

 10月15日 日銀の神山一成決済機構局長はロイターのインタビューで、中央銀行デジタル通貨(CBDC)を発行する場合には民間銀行の現金預金からのシフトを抑制するために発行額や保有額に上限を設けることも選択肢の1つだと述べた。写真はインタビューに答える神山氏。10月15日、東京で撮影(2020年 ロイター/Takahiko Wada)

和田崇彦 木原麗花

[東京 15日 ロイター] - 日銀の神山一成決済機構局長は15日、ロイターのインタビューで、中央銀行デジタル通貨(CBDC)を発行する場合には民間銀行の現金預金からのシフトを抑制するために発行額や保有額に上限を設けることも選択肢の1つだと述べた。金利のある預金とCBDCの間で資金シフトが生じることは、金融システムの安定上問題だとしてCBDCへの付利に関する議論に言及する一方、「金融政策のためにCBDCの付利を利用するという考え方ではない」と指摘。「CBDCに関する検討はあくまで決済システムをより良いものにするためで、金融政策に使うためではない」と強調した。

日銀は現時点でCBDCを発行する計画はないものの、9日には企業や家計といった広範な主体が利用することを想定した「一般利用型CBDC」について取り組み方針を公表した。神山局長は「今後の技術革新次第では日本でも現金決済からキャッシュレス決済への移行が加速し、国民のニーズが高まる可能性は十分考えられる」と指摘。「CBDCの発行は、デジタル社会にふさわしい決済手段を提供できる可能性がある。今からしっかりと検討し、金融の将来のために準備することが日銀の責務」と語った。

<金融政策に利用せず>

CBDCの検討に当たり、神山局長は「民間の取り組みや金融仲介機能に悪影響を与えないことが重要」と指摘。銀行預金よりCBDCの利便性が高くなると銀行預金が大きく減少してしまい、銀行の信用創造が抑制される可能性があるため「CBDCの発行額・保有額に制限を設けるなどして、CBDCへの資金シフトを抑制することは可能だ」と述べ、CBDCの発行額や保有額に上限を設けることも「選択肢の一つであり、これから考える。利便性とのトレードオフがあり、慎重に検討していきたい」とした。

また、「民間預金には金利がつくのにCBDCにはつかないとなった場合、金利が上がると民間預金に資金がシフトする。逆に民間金利が下がったときにCBDCに資金がシフトする、といった状況は金融システムの安定という観点から問題がある」と指摘。「CBDCに付利をして、それを変動させた方が良いという議論がある」と述べた。

神山局長は「金融政策のためにCBDCの付利を利用するという考え方ではない」と述べた。取り組み方針で銀行券とCBDCの併存を明記したことに触れ「銀行券がある以上、CBDCの金利をどんどん下げることで、マイナス金利の深掘りに役立つとは思わない」とした。

取り組み方針で日銀は、CBDCの基本的な機能を検証する「概念実証フェーズ1」、周辺機能を検証する「概念実証フェーズ2」、利用者や民間事業者も入れて行う可能性のある「パイロット実験」の3段階の実証実験を想定。神山局長はインタビューで「既に準備を始めているフェーズ1を来年度の早い時期に開始し、来年度中にはフェーズ2に移行できたらいいと思っている」と語った。

もっとも、限度額や付利の有無を含めた制度設計については「実証実験の3段階のプロセスを一通り経たうえで、最終的な設計ということになるのではないか」と述べた。

取り組み方針では、一般利用型CBDCに焦点が当てられ、利用者が銀行などに限定されるホールセール型の取り組み方針は示されなかった。神山局長は、2016年に開始した欧州中央銀行との共同プロジェクト「ステラ」でホールセール型CBDCについて詳細に検討を進めてきており、「ホールセール型CBDCに応用しうる技術についてかなり、実験を行ってきている」と指摘。実現しようと思えばできるところまで「相当近づいている」と述べた。

<中銀デジタル通貨、特定国が突出する可能性低い>

中銀デジタル通貨を巡っては、中国人民銀行(PBOC)が開発を進め、深センで実証実験を開始するなど先行。政府・与党内ではドル基軸体制が揺らぐとの警戒感がある。

神山局長は「決済システムの改善にしっかりそれぞれの国が取り組んでいる限りにおいては、特定のデジタル通貨が世界を席巻するということではないだろう」と述べた。「(フェイスブックの)リブラが出てきたとき、それに脅威を感じて色々な国の検討が加速したのは、自分の決済システムを改善しないと(民間のデジタルプラットフォーマーのデジタル通貨にとって代わられる)という感覚が共有されたからではないか」とした。

神山局長はその上で「中央銀行が自らの頭の中でしっかり考えていけば結果として、どの中銀が提供するCBDCも共通する部分も多いものになるのではないかと期待するが、楽観的かもしれない」と話した。

中国人民銀との技術協力の余地について、神山局長は「PBOCとは、G20(20カ国・地域)等や中国も加入しているBIS(国際決済銀行)のCPMI(決済・市場インフラ委員会)等、様々な場で様々な議論を行っていくということだろう」と話した。

(和田崇彦、木原麗花 編集 橋本浩)

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