焦点:先行きGDP、プラス想定も霧晴れず 交易条件悪化に懸念
ロイター / 2021年11月15日 12時13分
[東京 15日 ロイター] - 2021年7―9月期国内総生産(GDP)が2四半期ぶりのマイナス成長となった。行動制限の緩和が後押しして10―12月期はプラスに転じる見込みだが、世界的な原油高に円安が重なり、交易条件の悪化を懸念する声も根強い。先行き経済の霧が晴れず、年末にかけ下押し圧力がかかる展開も予想される。
10―12月期GDPの動向について、政府関係者の1人は「宣言解除に伴う消費心理の好転と、自動車減産の緩和という2つのリバウンドが期待される」と話す。
内閣府が先月29日に発表した消費動向調査によると、10月の消費者態度指数(2人以上の世帯・季節調整値)は、前月から1.4ポイント上昇し、39.2となった。消費者心理の改善で19年5月以来の高い水準となり、内閣府は4カ月ぶりに基調判断を上方修正した。
個人消費につながる消費者心理に加え、供給制約に見舞われた自動車メーカーからは「最悪期を脱した」との声も聞かれ、生産活動にも改善の兆しが出始めている。
主要企業の生産計画をもとに経済産業省が算出した生産予測指数は、10月が前月比6.4%の上昇、11月は5.7%の上昇だった。このうち、自動車を含む輸送機械は10月に17.9%上昇、11月は35.0%の上昇と、それぞれ急回復する想定となっており、実現すればGDP押し上げに寄与しそうだ。
<第2次石油危機以来の伸び>
もっとも世界的な原油先高観が解消されないうえ、原油輸入の際の為替レートが円安に振れる現状では、経済の先行きを楽観できない。
原油高と円安が同時進行する影響は、企業間で取引される商品の価格上昇につながっており、日銀が11日発表した10月の国内企業物価指数は前年同月比8.0%上昇の107.8だった。第2次石油危機の余韻が残る1981年1月以来、40年9カ月ぶりの伸びとなる。
石油・石炭製品を中心に幅広い品目で値上がりがみられ、こうした流れが続けば「物価上昇が実質所得を押し下げ、(個人の)購買意欲の高まりに水を差すおそれがある」と、信金中央金庫の角田匠・上席主任研究員は言う。
みずほ証券の小林俊介チーフエコノミストは「潤沢な家計貯蓄もあり、さほど深刻化するとは見ていないが、原油高が長引けば期待されたほどのリベンジ消費が実現しない可能性がある」と話す。
<所得移転27兆円の試算も>
買い控えで販売価格に転嫁できなければ企業のコスト増要因となり、景気への影響は避けられない。資源の多くを輸入に頼る日本は、原油を含む資源高で交易損失が拡大しやすく、消費や投資を通じたGDP下押し圧力も抱える。
大和総研の試算によると、11月以降の交易条件が10月から横ばいで推移した場合、10―12月期以降の日本の交易損失対実質GDP比は最大で1.3%に拡大する。
「資源高による海外への所得移転は21年度を通して27兆円に上る可能性がある」と、同総研の神田慶司シニアエコノミストは言う。
シェール革命で原油生産量を増やした米国や、カナダ、オーストラリアなどの資源国は逆に交易利得を増やしており、日本が、コロナ禍からの経済回復で後れをとる懸念も拭えない。
(山口貴也、金子かおり 編集:石田仁志)
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