1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 経済
  4. 経済

アングル:エヌビディア優位のAI半導体、新興企業が資金調達難

ロイター / 2023年9月15日 15時39分

 9月11日、 米半導体大手エヌビディアが人工知能(AI)向けコンピューターチップの分野で優位性を高めている影響で、同社に挑もうとする新興企業の資金調達が困難になり、調達件数が前年比で80%も減る事態となっている。写真はエヌビディアのロゴ。台北で5月撮影(2023年 ロイター/Ann Wang)

Max A. Cherney

[11日 ロイター] - 米半導体大手エヌビディアが人工知能(AI)向けコンピューターチップの分野で優位性を高めている影響で、同社に挑もうとする新興企業の資金調達が困難になり、調達件数が前年比で80%も減る事態となっている。

エヌビディアは、大規模言語モデルに使われる半導体の市場で支配的地位を強めている。このため、同社に対抗する半導体の開発を目指す新興企業に投資するのはリスクが高いとみて、ベンチャーキャピタルが多額の投資を渋るようになった。

半導体の設計を向上させて実用レベルの試作品を作るには5億ドル以上を要する場合もあるため、仮に失敗すれば新興企業はすぐに存続が脅かされる。

エクリプス・ベンチャーズのパートナー、グレッグ・ライチョウ氏は、「エヌビディアの優位が続いていることは、この市場への参入がいかに難しいかを如実に示している。これらの企業全部とは言わないまでも、多くの企業への投資は減少した」と話した。

ピッチブックのデータによると、米国の半導体新興企業が今年1─8月に調達した額は8億8140万ドルと、昨年第1─3・四半期の17億9000万ドルから大きく減っている。今年1─8月の調達件数は4件で、昨年第1─3・四半期の23件から急減した。

エヌビディアはコメントを控えた。

AI半導体新興企業のマイシックは昨年資金が底を突き、報道によると操業停止の瀬戸際に追い込まれた。今年3月になり、比較的少額ながら資金を調達することができた。

同社のデーブ・リック最高経営責任者(CEO)は、エヌビディアが「間接的に」AI半導体企業全般の資金調達難をもたらしていると語る。投資家は「巨額の投資、巨額のリターンが期待できるホームラン型の投資」だけを望んでいるからだという。

<投資家の厳しい要求>

資金調達を目指す半導体新興企業は、投資家からの厳しい要求に直面している。関係筋によると、求められているのは発売から数カ月以内の製品か、既に売り上げを生み出している製品を有することだ。

2年ほど前には、半導体新興企業への新規投資は2、3億ドル程度の案件が多かった。ピッチブックのアナリスト、ブレンダン・バーク氏によると、今では1億ドル程度に落ち込んでいる。

少なくとも2つのAI半導体新興企業は、潜在顧客や著名経営者との関係を誇示することで、消極的な投資家の腰を上げさせることに成功した。

その1社、テンストレントは8月に1億ドルを調達するためにジム・ケラーCEOの経歴を宣伝した。アップルや半導体大手アドバンスト・マイクロ・デバイセズ(AMD)、電気自動車(EV)大手テスラの半導体を設計した、伝説的とも言える半導体アーキテクトだと強調したのだ。

また今年の売上高が1000万ドルに満たないと予想されているD・マトリックスは先週、1億1000万ドルを調達した。追い風となったのは、マイクロソフトから資金援助を確保するとともに、来年発売する新しいAI半導体を試用するとの約束を取り付けたことだ。

エヌビディアの陰でこうした半導体メーカーが苦戦している一方、AIソフトウエアやその関連技術の新興企業はそうした制約に直面していない。ピッチブックのデータによると、これらの企業は今年1─8月に約240億ドルを調達した。

AIコンピューティングで優位に立つエヌビディアだが、この分野で揺るぎない地位を築いているわけではない。AMDは今年、エヌビディアに対抗する半導体を発表する予定だし、インテルも買収によってライバル製品を獲得し、開発を飛躍させた。消息筋らは、これらが長期的にエヌビディアの対抗製品になる可能性があるとみている。

またライバル勢にとっては、エヌビディア製品に隣接するようなアプリケーションが突破口となる可能性もある。例えば、予測アルゴリズムのためのデータ集約型コンピューティングを行う半導体は、新たなニッチ分野だ。エヌビディアはこの分野を支配しておらず、投資の機が熟している。

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください