焦点:ゴルディロックスへの期待高まる、予想下回る10月米CPIで
ロイター / 2023年11月15日 11時45分
11月14日、 10月の米消費者物価指数(CPI)が予想を下回ったことで、米金融市場では連邦準備理事会(FRB)は景気の悪化を引き起こすことなく消費者物価を抑制し、株式と債券の両方にとって恩恵があると考えられている、いわゆる「ゴルディロックス(適温)」経済を実現できるとの期待が高まっている。ニューヨーク証券取引所で10月撮影(2023年 ロイター/Brendan McDermid)
Lewis Krauskopf Saqib Iqbal Ahmed
[ニューヨーク 14日 ロイター] - 14日に発表された10月の米消費者物価指数(CPI)が予想を下回ったことで、米金融市場では連邦準備理事会(FRB)は景気の悪化を引き起こすことなく消費者物価を抑制し、株式と債券の両方にとって恩恵があると考えられている、いわゆる「ゴルディロックス(適温)」経済を実現できるとの期待が高まっている。
株式と債券の両市場では昨年初め以来、FRBの利上げでボラティリティーが上昇。10月末まで数カ月にわたり不安定な動きが続いたが、利上げ打ち止めへの期待感を支えに11月に入って急騰した。
14日発表の10月米CPIは、この1年余りで初めて前月比横ばいに落ち着き、アナリスト予想も下回って転換点が近いという見方を裏付けた。
一方で金融引き締め政策が景気に大きな打撃を与えているという兆候はほとんど見られず、成長を損なうことなく物価をさらに引き下げることは可能だとの見方が強まった。
ノース・スター・インベストメント・マネジメントのエリック・クービー最高投資責任者(CIO)は「景気後退とインフレの両面で、市場全体にネガティブな見方が広がっていた。しかし現実は違っていて、市場全体にゴルディロックスが訪れているように感じられる」と述べた。
10月のCPIを好感して株式と債券は力強く上昇。指標となるS&P総合500種株価指数はこの日1.9%上昇し、1日としては4月下旬以来の上昇率を記録した。同指数は10月の安値から9%上昇し、年初来の上昇率は17%に達している。
米10年物国債の利回りは、先月付けた16年ぶりの高値から50ベーシスポイント(bp)余り低下し、9月下旬以来の低水準となった。
株価の上昇に伴って株式オプション市場でも強気の取引が相次いだ。
トレード・アラートのデータによると、相場上昇に賭けるコールオプション(買う権利)の買いが増加し、プットオプション(売る権利)との差が過去3カ月半で最大となった。
一方で投資家は弱気ポジションの巻き戻しに奔走し、特に金利上昇で苦戦を強いられている高成長株やハイテク株でそうした動きが活発化した。トムソン・ロイター米空売り銘柄指数は6.5%上昇し、1日の上昇率としては過去1年で最大となった。
パイパー・サンドラーのオプション部門責任者、ダニエル・カーシュ氏は「空売りが集中していた銘柄も大きく上昇している。後追いの動きと買い戻しが大量に入っているようだ」と述べた。
RBCキャピタル・マーケッツのデリバティブ戦略責任者、エイミー・ウー・シルバーマン氏によると、小型株中心のiシェアーズ・ラッセル2000ETFなど、今年に入ってアンダーパフォームしていた一部の市場で14日に強気のオプション取引が活発化した。
ラッセル2000は14日に5.4%上昇し、1日としては過去1年で最大の上昇率となった。年初来では2.1%上昇している。
<ハト派転換への期待>
FRBが昨年3月に利上げサイクルを開始して以来、金利上昇は投資家の懸念材料となってきた。しかし10月の米CPI発表を受けてFF(フェデラルファンド)先物市場は、FRBが追加利上げを見送り、来年約100bpの利下げに踏み切るとの予想を織り込んだ。CPI発表前の利下げの織り込み幅は75bpだった。
14日発表のBofAグローバル・リサーチの月例調査によると、FRBが利上げサイクルを終了したと確信しているファンドマネージャーの割合は76%と10月の60%から上昇し、5月の調査開始以来の高水準となっている。
ヘッジファンドのグレート・ヒル・キャピタルのトーマス・ヘイズ会長は10月CPIについて「FRBが利上げを終了したことを示している」と述べた。
それでも一部の投資家はインフレとの闘いで勝利を宣言するのは時期尚早だと考えている。
UBSグローバル・ウェルス・マネジメントのシニアエコノミスト、ブライアン・ローズ氏は「FRBが利上げサイクルの終了を発表するには、インフレはまだ高すぎるし、労働市場はまだ逼迫しすぎている。データが急に悪化しない限り、こうした発表は少なくとも3カ月先になりそうだ」と言う。
FRBが金融引き締めを長く続けすぎて、景気悪化を招くリスクを警戒する声もある。
ハリス・ファイナンシャル・グループのマネジングパートナーのジェイミー・コックス氏は「今問題になっているのは、インフレを完全に克服するためには景気を後退させることが必要だとFRBがなお信じ続けているかどうかだ。そうでないことを願うばかりだ」と話した。
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