焦点:テスラ熱に包まれる2つの街、激化する11億ドル工場誘致合戦
ロイター / 2020年7月15日 11時38分
7月13日、テスラ新工場の建設場所決定を数週間後に控え、最終選考に残るテキサス州オースティンとオクラホマ州タルサの戦いは白熱している。写真はカリフォルニア州フリーモントのテスラ工場。2016年7月撮影(2020年 ロイター/Joseph White)
Tina Bellon Andrea Shalal
[13日 ロイター] - 石油産業の街、米オクラホマ州タルサには高さ23メートルの「黄金の石油採掘労働者」像がそびえ立つ。
テキサス州オースティンは、保守的なこの州にあって進歩的な都市だ。ソフトウエア産業が栄え、「とんがって行こうぜオースティン」のスローガンの通り、カウンターカルチャーの印象が強い。
大きく異なる2つの街には、1つ共通点がある。電気自動車(EV)大手テスラ
決定を数週間後に控え、オースティン対タルサの戦いは白熱。テスラのイーロン・マスク最高経営責任者(CEO)は、建設費の節約につながる税控除その他の優遇措置を双方に出させ、競争をあおっている。
オースティンがあるトラビス郡は今週、10年間で総額6500万ドルを超える戻し減税案の一部について、是非を問う住民投票を行う。
テスラはテキサス州幹部らに、工場ができれば少なくとも5000人の新規雇用が生まれると説明。オクラホマ州幹部らには、新規雇用は短期で7000人以上、ゆくゆくは最大2万人に達すると告げている。
しかし、オースティンの住民からは、世界最大級の自動車会社への助成をいぶかる声も挙がっている。最近開かれた郡の聴聞会で、テキサス大の学生は「住民が最低限生活できるだけの賃金を得られるよう集中すべき時に、金持ちの企業に税控除を与えようというのですか。話になりません」と発言した。
テスラはトラビス郡への届け出書類で、新工場の建設に着手し、競合他社と戦う上で、州や地元自治体による税優遇は「決定的な役割」を果たすとしている。
同社に本記事へのコメントを要請したが、回答は得られていない。
一方のオクラホマ州は、テスラ熱に包まれている。
黄金の石油採掘労働者像はというと、地元の「テスラ・ファンクラブ」が最近、胸部にテスラのロゴを、腰にはバックルにテスラの社名を施したベルトを描いてマスクCEO風に変身させた。
マスク氏自身、3日にタルサの街を見下ろす建設予定地へと飛んだ。新工場ではスポーツ用多目的車(SUV)「モデルY」と未来志向の「サイバートラック」を組み立てる予定だ。
オクラホマ州知事のツイッターに投稿された写真によると、マスク氏はうだるような暑さの中、白いテントの下で知事と面会した。
ショーン・クープレン州商務長官は「ここの反応は圧倒的だ」と話し、招致に有利に働くと見る。
地元の小売店までテスラ熱に便乗。州商務長官は最近、自分の子供たちから、近所の店で売られている「テスラ・スペシャル」の氷菓子の写真を見せてもらった。テスラの従業員全員に、無料でパイをふるまうと約束したピザ屋もある。
かつて「世界の石油首都」として知られたタルサだが、現在は10億ドルをかけて市街地を改装し、イメージ刷新に取り組んでいる。今どきのコーヒーハウスやジャズクラブがお目見えし、いかだレースが開催され、リモートワークが可能なホワイトカラー労働者の誘致にも力を入れる。
オクラホマ州幹部らによると、最近タルサに移住したエンジニアらの体験談を集めた最新動画は、マスク氏による閲覧を含めて20万回再生された。
テスラにアピールすることを目的としたウェブサイトも複数立ち上がった。その中の1つは、トーマス・エジソンなど古今の著名人による「推薦の言葉」などを、おふざけで掲載している。
このサイトを作ったデジタルマーケティング企業幹部のジェーコブ・ジョンソン氏は「この街は1920年代に石油ブームの発信地となった。だから、変化が起こっていることをクールな方法で伝えたい」と言う。
テスラは米中部の州から建設候補地を8カ所選び、他にも多くの場所から優遇措置の提案を受けたが、最終候補に残ったのはタルサとトラビス郡の2カ所だけだった。
米自動車業界が州から優遇措置をしぼり取るのは、今に始まった話ではない。テスラ自体、2014年にネバダ州での電池工場建設で14億ドルの優遇を受けたことがある。
しかし、マスク氏の資産規模に比べれば、こうした額もかすむ。販売台数の増加や黒字決算の定着化への期待を背景に、テスラ株は年初から4倍以上に高騰し、マスク氏の報酬は18億ドル相当に届こうとしている。
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