焦点:大統領選間近の米経済「回復」、トランプ氏追い風なるか
ロイター / 2020年9月17日 7時28分
9月11日までの週に発表された米国の労働市場や経済の動向を示す経済指標はいくらか改善した。写真は13日、ネバダ州ヘンダーソンで選挙集会に参加するトランプ米大統領(2020年 ロイター/Jonathan Ernst)
[11日 ロイター] - 9月11日までの週に発表された米国の労働市場や経済の動向を示す経済指標はいくらか改善した。好況が現職大統領の再選に有利になる歴史に基づけば、そうした改善はトランプ大統領の勝利に朗報なはずだ。
しかし、経済の改善には影を落としているものがありそうだ。新型コロナウイルス関連の事業閉鎖でなお数千万人が失業中。政府のコロナ追加対策が近日中に成立するのは見込み薄との懸念も強まっている。
労働省がこの週に発表した7月求人件数は660万件に急増し、新型コロナ前の水準近くに戻った。
8月の物価統計も堅調で、経済成長を阻害するデフレへの懸念を薄れさせた。小売店や飲食店の週間ベースの客足動向調査もある程度の経済改善を示した。
ところが、経済の姿は本格的な回復に向かうにはほど遠い。労働省が10日発表した週間失業保険統計によると、8月22日時点で少なくとも2960万人がなお失業手当を受給している。直近週の新規失業保険申請件数は88万4000件と高止まりした。
コロナ追加対策を巡る議会の動きの膠着は、当面は米経済にとって今以上に良い進展はない可能性を示唆する。
上院では10日、約3000億ドルの共和党案の採決に向けた動議が否決された。一方で民主党は3兆ドル規模の対策を導入しようとする。
バンク・オブ・アメリカのエコノミストチームは11日のノートで、「経済の健全な回復は気前の良い財政刺激策のおかげで進む部分がある。しかし、そうした政策の実現性は薄れ始めた」と指摘。追加策の成立が大統領選本選に間に合う可能性は低くなったとの見方を示した。
3月に成立した2兆3000億ドルの対策のうち、週600ドルの失業保険手当上乗せは7月いっぱいで失効。中小零細企業向けの数千億ドル規模の給与保護プログラムも大半が既に使われた。
こうしたことから、さらに労働市場が勢いを取り戻すことができなければ有権者には問題だろうと話すのは、ステート・ストリート・グローバル・アドバイザーズの首席投資ストラテジスト、マイケル・アローン氏。「現職大統領にはやや厄介な状況になる」という。
トランプ氏が大統領令で承認した失業給付の週300ドル上乗せ案は、幾らかの緩和にはなるかもしれないが、その資金は6週間の支払い分しかない。
米国の新型コロナの新規感染者数は7月以降、減少しているが、感染者数がまだ多いことには変わらず、多くの事業者は設備稼働率を下げて何とか事業を続けている状態だ。まったく再開できていない事業者もある。全体で見れば米国の経済成長は足が引っ張られている。
スタンダード・チャータード銀行のマネジングディレクター、スティーブン・エングランダー氏は「景気が上向くほど、景気が回復しつつあると希望を持つ人々も増える。そうなればたぶん、トランプ氏の再選にはプラスだ」と指摘。しかし、11月3日の投票日が近付いている中で政府の対策支援が先細りになる流れは「トランプ氏にはかなりタイミングが悪いかもしれない」と語った。
(Ann Saphir記者)
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