アングル:共和党「内紛」による米議会機能不全、収まる気配なし
ロイター / 2023年10月16日 16時22分
Patricia Zengerle Richard Cowan
[ワシントン 15日 ロイター] - 中東やウクライナで戦火が広がっている中で、米議会は野党共和党の「内紛」によって機能不全に陥っている。これには、しばしば問題の原因となってきたトランプ前大統領の支持者からさえ心配の声が出ており、米国と対立する勢力に利する事態になりつつある。
米下院は共和党保守強硬派8人の造反によってケビン・マッカーシー氏の議長解任動議が可決されてから12日間、リーダー不在が続く。そのためウクライナの追加支援の審議はストップし、イスラム組織ハマスと交戦するイスラエルに対する支持表明もできない。
共和党は13日、ようやく次期下院議長候補としてジョーダン司法委員長を選出したものの、トランプ氏に近く長らく党主流派の意向に背いてきたジョーダン氏が本会議で議長就任に必要な賛成票を得られるかどうか定かではない。
マッカーシー氏が議長解任に追い込まれたのは、難航していた新年度予算の審議を受けて必要となったつなぎ予算の承認にこぎ着ける際に、与党民主党の協力を仰いだことが原因。民主党が優勢な上院やバイデン大統領の署名が不可欠である以上、こうした取り組みは避けられなかったはずだが、共和党の保守強硬派は猛反発したのだ。
こうした中で共和党のマコール下院外交委員長は「世界では戦争の炎が燃えさかり、米国の敵はわれわれの挙動を注視している。かなり率直に言えば、彼らはこの事態を好ましいと思っている」と苦言を呈した。
さらにマコール氏は「今は多くの脅威が存在するが、最も大きな脅威の一つはこの議会にある。なぜならわれわれは合議体として一体になれないからだ」と嘆いて見せた。
既に議会への信頼を低下させていた米国民は、こうした機能不全で一層不信感を募らせている。今月のロイター/イプソス調査でも、回答者の3分の2はワシントンの政治家が党派対立を脇に置いて国益に尽くせるとは考えていないと述べ、半数は議員たちが最も基本的な役割である法案可決さえ実行できないとみていることが分かった。
<11月にまた波乱も>
ハマスがイスラエルを攻撃した問題については、民主・共和両党の議員とも個人的なイスラエル支持姿勢を打ち出しているとはいえ、リーダー不在の下院は正式な行動を起こせないでいる。
共和党のザック・ナン下院議員は、自身の選挙区のある家族がイスラエルから脱出できなくなっていることや、このまま議会が11月のつなぎ予算期限までに新年度予算を成立させられず、政府機関が閉鎖されれば軍兵士たちの給与支払いも停止する点などを挙げて「予算可決手続きを始め、われわれの安全保障を先に進めて、中東におけるわれわれの最も強力な同盟国(イスラエル)に寄り添おうではないか。そして一番大事なこととして、政府を機能させ続けよう」と訴えた。
民主党側もこれに賛同。同党下院指導部の1人、ピート・アギラー議員は「共和党議員たちが自ら引き起こした混乱に終止符を打ち、国民のための統治に乗り出せるようになることを期待する」とコメントした。
問題は下院だけにとどまらない。
上院でも共和党のトミー・タバービル議員が2月以降、多数の軍幹部の承認を拒否し続けており、イスラエルとハマスの交戦が始まった後も、方針を変えるつもりはないと断言している。国防総省の人工妊娠中絶に関する施策への不満が理由だ。
議会全体でも、多くの共和党議員がウクライナに対する追加的な軍事支援に反対し、バイデン政権のウクライナ支援継続に暗雲が立ち込めている。
戦略国際問題研究所(CSIS)の議会・政府問題ディレクター、エリザベス・ホフマン氏は「目下はウクライナとイスラエル向けの追加支援がすぐにも必要な状況で、下院議長の不在は大いなる問題だ」と批判した。
その上、共和党保守強硬派が財政赤字を抑えるための大幅な歳出カットを要求し続けている新年度予算を巡る議会の対立も解消される兆しは見えない。
バイパーティザン・ポリシー・センターのシニアバイスプレジデント、ウィリアム・ホーグランド氏は、つなぎ予算の期限が迫る11月初旬には与野党の本格的な衝突が起きるという感触を持っていると述べた。
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