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アングル:極右色緩和狙う仏ルペン氏、反ユダヤ主義抗議デモ参加で波紋も

ロイター / 2023年11月16日 18時47分

11月12日にフランスの首都パリで行われた反ユダヤ主義に抗議するデモで、群衆に合流した一つの政治グループが異彩を放った。写真はマリーヌ・ルペン氏。パリの仏議会で7月撮影(2023年 ロイター/Stephanie Lecocq)

Michel Rose

[パリ 15日 ロイター] - 12日にフランスの首都パリで行われた反ユダヤ主義に抗議するデモで、群衆に合流した一つの政治グループが異彩を放った。それは極右政党、国民連合(RN)の支持者と前党首のマリーヌ・ルペン氏だ。

マリーヌ・ルペン氏の父で、RNの前身の国民戦線を率いたジャンマリ・ルペン氏がかつて、ナチス・ドイツによるホロコースト(ユダヤ人大量虐殺)について「第2次世界大戦の歴史におけるささいな出来事」との暴言を吐いたことを踏まえると、今回のデモにRNが登場したのは、これ以上ないほど注目に値する動きと言える。

デモへの参加は、マリーヌ・ルペン氏が進めてきた、RNを「普通の政党」と印象付ける戦略が功を奏しているという最も明らかな証拠であり、有権者の極右アレルギーが一段と薄らぎ、将来の選挙を通じて同氏が政権を握る可能性を高めている、と複数の専門家は解説する。

このような戦略は、イタリアやドイツ、英国など他の欧州諸国の極右勢力も、人種差別主義者とのレッテルを貼られるのを避けながら、移民反対を堂々と掲げる手段として取り入れている。

専門家の話では、フランスの場合、ルペン氏が非常に効果的な形でこれを実行したため、極右を権力の座から阻んできた「見えない壁」が壊れつつある。

一方で、ルペン氏を政治的な機会主義者と批判する人々は、RNは人種差別的な本当の正体を隠していると警戒感を強める。

ルペン氏はかねてから、失言や暴言を繰り返す父親と距離を置く努力を続け、特に党首の座を引き継ぎ、2018年に党名をRNに変更した後は、その姿勢に拍車がかかった。

しかし、フランスの他の政党は、いわゆる「防疫線」を設けて極右とともにデモなどの政治行動をするのを拒絶してきた。

そうした流れに終止符が打たれたのが12日のデモで、さまざまな政治家や専門家の間では、RNの歴史にとって転換点だとの見方が広がっている。

RN支持者やルペン氏らは、デモ行進の後方に回り、先頭を歩く主催者や2人の元大統領、政府高官らと肩を並べたわけではないが、合流する際に以前のように手荒に扱われることはなかった。

世論調査会社ハリス・インタラクティブの政治アナリスト、ジャン・ダニエル・レビー氏は、ロイターに「ルペン氏は、このデモから得られる全てのものを獲得した。2027年(の大統領選)に向けて、ルペン氏に反対する根拠はちょっと前までと比べても少なくなった」と語った。

環境保護派の政治家、サンドリーヌ・ルソー氏は、(デモに)ルペン氏が出現したことで不快になったと打ち明けた上で「RNにとっては転換点で、反ユダヤ主義の出自をごまかそうとしている」と批判した。

<欧州極右に共通する流れ>

RN内部では、ルペン氏の側近たちが大喜びした。その1人は、ロイターに「ルペン氏は行進の途中で何度も拍手をもらった。本当に変わった点は、われわれを悪魔化する試みはもう通用しないということだ」と言い切った。

反ユダヤ主義にノーを突き付けるルペン氏の戦略は、他の欧州の極右勢力にも共通する。例えば、イタリアでは、メローニ首相の政権が、イスラエルとイスラム組織ハマスの戦闘が始まってからずっと、断固としてイスラエルを支持する姿勢を打ち出している。

若いころにはネオファシズム運動に身を投じていたメローニ氏だが昨年、ムッソリーニのファシスト政権時代の法律に基づいて処刑されたユダヤ人ジャーナリストを追悼する場で、いかなる種類の差別や反ユダヤ主義とも戦うと約束した。

ドイツでも、治安当局から党内に反ユダヤ主義が存在しているとされた極右政党ドイツのための選択肢(AfD)が、イスラエルとの連帯を表明。政府に対して、イスラム系移民から持ち込まれた「反ユダヤ主義」を防止する策を講じるよう求めた。

英与党・保守党の右派は、強固な親イスラエル姿勢を採用するとともに、パレスチナを支持する大規模デモを「ヘイト(嫌悪主義の)行進」と切り捨てている。

<ユダヤ社会も懐疑の目>

フランスの幾つかのテレビ討論で、父親の過去の発言について追及されて苦境に置かれたルペン氏は、その後、何人かの有力なユダヤ系フランス人から「援護射撃」をもらった。

法学者でナチス残党の追跡活動をしているセルジ・クラルフェルド氏は、フィガロ紙のインタビューで「私からすると、極右のDNAは反ユダヤ主義だ。だから、一つの大きな政党が反ユダヤ主義やホロコースト否定論を捨て去り、共和国の価値観を求めて行進するのはうれしいことだ」と語った。

ただ、ユダヤ人の各団体は、ルペン氏の行動について大いに懐疑的だ。

フランス・ユダヤ人団体代表評議会(CRIF)を率いるヨナサン・アルフィ氏は「デモをうまく利用した形で、非常に不愉快だ」と述べた。

実際、RNが反ユダヤ主義のイメージを払しょくするための闘いは、まだ続いている。2021年にはRNの元経済顧問が、同党はユダヤ人を差別していて、勝てそうな選挙区の候補に彼らを起用していないと主張。ルペン氏がこの発言を誹謗中傷だと裁判所に申し立て、9月には審理が始まった。

マクロン政権の報道官は「極右の意図に誰もだまされはしない。それはあるコミュニティーを支持し、別のコミュニティーをうまく排除するのに役立てるということだ」と語った。

それでも専門家の話では、ルペン氏とRNは世論や有権者の認識を変えることに成功しているという。政治アナリストのレビー氏は「彼らは有利な方向に論調を変化させている。有権者は、危険をもたらすのは極右ではなく、イスラム系の政治勢力だと信じるようになった」と指摘した。

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