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アングル:エヌビディア株のジレンマ、投資集中でリスクも増大

ロイター / 2024年7月16日 15時37分

 7月15日、米半導体大手エヌビディアの株式保有を際立って膨らませたポートフォリオマネジャーは、そのおかげでリターンが押し上げられた。写真は2022年5月、米サンタクララの同社本社で撮影。同社提供(2024年 ロイター)

David Randall

[ニューヨーク 15日 ロイター] - 米半導体大手エヌビディアの株式保有を際立って膨らませたポートフォリオマネジャーは、そのおかげでリターンが押し上げられた。一方、エヌビディア株の反落が視界に入る事態になれば、こうしたポジションは一転して大きなリスクをはらむことになる。

エヌビディアの株価は昨年初めから約785%、今年だけでも約160%も跳ね上がった。同社の半導体が人工知能(AI)分野で盤石の標準製品になるとみなされ、需要が拡大し続けているからで、6月には時価総額がマイクロソフトを抜いて世界一に躍り出る場面もあった。

株価高騰に伴い、資産運用担当者の保有規模も非常に大きくなっている。モーニングスターのデータからは、今年第1・四半期末時点で、預かり資産の5%かそれ以上をエヌビディア株に振り向けたアクティブ運用型ファンドは355本と、前年同期の108本をはるかに上回ったことが分かる。

モーニングスターのシニアアナリスト、ジャック・シャノン氏は「一部のポートフォリオマネジャーは、アップルやマイクロソフト(の株価高騰)に乗り遅れたので、AIでは失敗したくないという心境にある。(だから)彼らは(エヌビディア株を)売りたがらない」と指摘した。

エヌビディア株の保有規模拡大は、ごく一握りの大型成長株に資金が集中し、かつてないほどに限られた銘柄が相場上昇をけん引する構図も浮かび上がらせている。S&Pダウ・ジョーンズ・インデックスによると、今年のS&P総合500種の上昇率(17%弱)の3分の1前後をエヌビディアがもたらした。

BofAグローバル・リサーチのストラテジストの分析に基づくと、今年前半にS&P総合500種をアウトパフォームした構成銘柄の割合はわずか24%と、1986年以降で最低にとどまった。

今のところエヌビディア株を組み込んだファンドがその恩恵を享受しているのは確かだ。モーニングスターのデータは、エヌビディア株を保有するアクティブ運用型の米国株ファンドは今年前半の平均リターンが16.3%で、エヌビディア株に投資していないファンドの平均リターンは5.7%だったことを示している。

とはいえエヌビディア株の動きが変調を来すようなら、単一銘柄への集中的な投資で打撃を受けかねない。LSEGのデータを見ると、アナリストが設定した同社株価の目標は平均133.45ドルと、現在の水準より3%ほど高い。それでも複数の市場参加者が挙げるのは、競争激化やエヌビディアの増産による供給不足の緩和、割高化といった株価下落につながる要素だ。

エヌビディアの予想利益に基づく株価収益率(PER)は39.3倍で、業界中央値を50%前後も上回っている。

フェデレーテッド・ハーミーズのチーフ株式市場ストラテジスト、フィル・オーランド氏は「運用資産の6%かそれ以上を1つの銘柄に投じることで並外れたリスクが生まれるか。答えは間違いなくイエスだ。1つの銘柄がロケットのように突出したからと言って、1つの籠に多くのたまごを入れるのが賢いということにはならない」と述べた。

投資家は先週、特定銘柄にポジションを集中させると上下双方向のリスクがあることを痛感した。米消費者物価指数(CPI)の下振れをきっかけに大型ハイテク株から資金が逃げ出し、11日のエヌビディア株は1日としては過去2週間余りで最大となる6%弱の下げを記録したほか、ナスダック100も2.2%下落。しかし翌日にはいずれも値下がり分を取り戻す展開になった。

<売りを後悔する声も>

エヌビディア株への資金配分比率が最も大きいのはハイテク専門ファンドで、モーニングスターによると、フィデリティの4本のファンドは預かり資産に占める割合が18%を超える。ただ多様なセクターに投資しているファンドも、例えばバロン・フィフス・アベニュー・グロース・ファンドはこの割合が15%、フィデリティ・ブルーチップ・グロース・ファンドも約13%で、似たようなリスクを抱えている。

ジーベンバーゲン・キャピタル・インベストメンツのポートフォリオマネジャー、アンソニー・ザカリー氏は2016年以来エヌビディア株を保有し、資産の中核に据え続けているが、同社のリスク許容指針を守れるよう定期的に保有規模を縮小してきた。この指針は、ラッセル3000グロース指数の構成に連動させるために成長株ポートフォリオにおける単一銘柄の比率を最大13%にしなければならないと定めている。

ただザカリー氏はエヌビディアについて「ハイテク分野における次のトレンドの最前線に位置する」と語り、評価の高さは変わらない。

一方で、長らく保有していたエヌビディア株を全て売り払った向きもある。

ファーストハンド・キャピタル・マネジメントのケビン・ランディス最高投資責任者は、慎重を期して数年間持っていたエヌビディア株を2020年に利益確定のために売却したが、そのまま持ち続けていた場合に得られた利益への執着を捨てきることができない。

投資情報のスクリーンに目を向ける際には「後悔で胸を痛めずにはいられない」という。

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