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アングル:反トランプから一変、バンス副大統領候補の政治信条とは

ロイター / 2024年7月16日 18時26分

 7月15日、米共和党の副大統領候補に選出されたジェームズ・デービッド・バンス上院議員(写真)はかつて、トランプ前大統領を「ばか(idiot)」で「非難すべき人物」と呼び、同僚との私的なやりとりで「アメリカのヒトラー」とも揶揄(やゆ)したが、今やトランプ氏擁護の急先鋒の一人となった。ウィスコンシン州ミルウォーキーで開かれた共和党全国大会で撮影(2024年 ロイター/Mike Segar)

Gram Slattery Helen Coster

[ミルウォーキー 15日 ロイター] - 米共和党の副大統領候補に選出されたジェームズ・デービッド・バンス上院議員(39)はかつて、トランプ前大統領を「ばか(idiot)」で「非難すべき人物」と呼び、同僚との私的なやりとりで「アメリカのヒトラー」とも揶揄(やゆ)したが、今やトランプ氏擁護の急先鋒の一人となった。

バンス氏のように態度を180度変えてトランプ氏の側近になった例は他にあまりない。

民主党員や一部の共和党員はバンス氏の転身について、政治思想ではなく日和見主義に基づいている可能性を指摘する。

一方、トランプ氏や同氏の助言役の多くはバンス氏の転身が「本物」だと感じている。一国主義と経済ポピュリズムをミックスさせたバンス氏の政治信条がトランプ氏と一致し、両氏ともに外交タカ派や自由市場の伝道師が影響力を持つ党の旧勢力と意見が対立していると指摘する。

バンス氏が師と仰ぐワイオミング州選出のジョン・バラッソ共和上院議員はロイターに対し、バンス氏がトランプ氏に対する見方を変えたのは「大統領として国にもたらした成果を見たからだ」と説明。

ロシアの侵攻を受けるウクライナへの支援に反対するバンス氏の姿勢は、トランプ氏の最も保守的な盟友を喜ばせた。

保守派コメンテーターのタッカー・カールソン氏は、バンス氏が「トランプ氏の主張を理解し、同意している」とロイターに語った。

<異例の経歴>

バンス氏はオハイオ州南部の貧しい家庭に生まれた。近郊のペンシルベニア州やミシガン州などを含む「ラストベルト(さびた工業地帯)」でトランプ氏の得票を押し上げるとの期待もあるが、バンス氏の保守的見解が穏健派を遠ざける可能性もある。

海兵隊に所属後、エール大ロースクールを経てサンフランシスコでベンチャーキャピタリストとして勤務。2016年に出した回想録「ヒルビリー・エレジー」がベストセラーとなり一躍有名になった。同著では故郷が直面している社会経済的問題を探求し、貧困にあえぐ白人の間でトランプ氏が人気を集める背景を説明しようと試みた。

16年大統領選やトランプ氏の1期目序盤において、バンス氏は同氏を強烈に批判。16年の同僚宛てのフェイスブック上のメッセージで「トランプ氏はニクソン(元大統領)のような単なる皮肉屋のろくでなしで、結果それほど悪くなくむしろ役に立つ可能性があるのか、それともアメリカのヒトラーと見なすべきかどうかで揺れている」と書いている。

ヒトラー発言が最初に報じられた22年、広報担当者は否定することなく、もはやバンス氏の見解ではないと述べた。

バンス氏は22年に上院議員選に出馬。その時は既にトランプ氏に忠誠心を示しており、トランプ氏の推薦を受けて予備選で勝利した。

バンス氏はメディアのインタビューで、トランプ氏に対する見方が変わった「決定的瞬間」はなかったと語っている。

6月にニューヨーク・タイムズ紙のインタビューで「私はトランプ氏の発信スタイルに注目するあまり、外交政策や貿易、移民問題で違いを鮮明にしていたことに完全に気づいていなかった」と述べた。

例えば、自由貿易が国内製造業を壊滅させて中間層の空洞化を招いたという見解や、歴代大統領が拙速に外国の戦争に巻き込まれたという主張に同意しているとした。

バンス氏は今回、ロイターの取材に応じなかった。

同氏がトランプ氏と意見が一致しているとみられる政策の一つは人工中絶への対応だ。

バンス氏は21年のインタビューで、レイプや近親相姦の被害者でも出産するよう義務付けられるべきとの考えを示唆し、昨年11月にはオハイオ州憲法に人工妊娠中絶の権利を明記することになった住民投票の結果を「腹を殴られた」と表現した。

<トランプ氏との関係>

事情に詳しい複数の関係者によると、バンス氏はトランプ氏と関係を築く前に、同氏の長男ドナルド・トランプ・ジュニア氏と親密になった。

このうち1人によると、バンス氏が22年のオハイオ州上院選共和党予備選でウクライナ支援に反対し、他の候補と意見が対立したことがジュニア氏の目に留まったという。

バンス氏とトランプ前大統領の個人的な関係は、今年初めの大統領選予備選の間に進展。バンス氏は今回副大統領候補に名前が挙がった複数人の一部よりも早い23年1月にトランプ氏支持を決め、忠誠心を鮮明にしていた。

資金調達活動に詳しい関係者によると、バンス氏は舞台裏で富裕層の献金者にトランプ氏への寄付を働きかけてきた。

バンス氏の国内大企業への懐疑的姿勢、関税支持、外交関係への意欲の低さ、そしてその若さは、支持者の目に大企業よりも労働者階級を重視する新しい共和党の代表として映るだろう。

バラッソ上院議員は「共和党の候補者として米国の家庭が感じている痛みを他の誰よりもうまく表現できるはずだ」とバンス氏を評した。

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