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アングル:ウクライナ、越境攻撃での制圧地確保に試練 ロシアの逆襲も

ロイター / 2024年8月16日 14時4分

 ウクライナは1週間余り前にロシア西部クルスク州への越境攻撃を開始して以来、幾つかの勝利を手にしてきたが、そうした戦果を失うリスクが生じつつある。制圧地の確保に向けた計画が必要となっている上に、ロシアの逆襲も見られるためだ。写真はウクライナ軍の戦車。8月15日、ウクライナ北東部スムイ州のロシア国境付近で撮影(2024年 ロイター/Viacheslav Ratynskyi)

Tom Balmforth Pavel Polityuk

[キーウ 15日 ロイター] - ウクライナは1週間余り前にロシア西部クルスク州への越境攻撃を開始して以来、幾つかの勝利を手にしてきたが、そうした戦果を失うリスクが生じつつある。制圧地の確保に向けた計画が必要となっている上に、ロシアの逆襲も見られるためだ。

この越境攻撃にウクライナは数千の兵力を投入し、ここ数カ月で初めてロシアから戦争の主導権を奪い取った。

14日には複数のウクライナ政府高官が、制圧した地域をロシアの攻撃に対する「緩衝地帯」として利用すると発言。シルスキー総司令官は15日、クルスク州内に軍司令官事務所を設置したと述べ、長期制圧の構えを示唆している。これまでに掌握したロシア領は1150平方キロメートルを超えるという。

ウクライナ元国防相のアンドリー・ザゴロドニュク氏はインタビューで、越境攻撃の目的はウクライナ東部ドンバス地方からロシア軍を引き離すことだとの見方を示した。同地方でロシア軍は何カ月も着実な前進を続けており、最終的には全て占領しようとしている。

ただ今のところ、ウクライナが意図するようなロシア軍の兵力移動の兆しは見えていない。

ロシア政府はウクライナの越境攻撃について「テロリストの侵攻」と断じ、民間施設を標的にしていると非難。プーチン大統領は、ロシアも「相応の反応」をするが、差し当たってはロシア領内から全てのウクライナ軍を駆逐すると述べた。

ウクライナ外務省の報道官は今週、制圧したロシアの地域を永久に占領する意向はないと強調した一方、プーチン氏はウクライナが最終的な和平交渉の「持ち札」にするためロシア領土を欲しがっていると指摘している。

キーウの軍事アナリスト、セルヒー・ズグレツ氏は、ウクライナがリリスク、コレネボイ、スジャの各都市と国境の間の土地を維持し、ロシア領において約20キロの幅の帯状の領有権を得るだろうと予想。この地域ならば長距離砲と防空システムを駆使した少数の兵力で防衛できると分析する。

ズグレツ氏は「道路が少なく、河川が多いこの戦線を守るのは難しくない」と述べ、ウクライナ領内からの補給も容易だと付け加えた。

ウクライナ軍は、側面攻撃の脅威にさらされる恐れがある州都クルスクまでは前進しないだろうというのがズグレツ氏の見立てだ。

一方別の専門家は、ウクライナ軍が制圧地を確保し続けようとすれば、兵力不足の問題から多大な犠牲を強いられてもおかしくないと警告した。

越境攻撃という「大きな賭け」は目先で実を結んでいるとはいえ、ロシアがドンバス地方でじりじりと前進している点を考えれば、やがてメリットよりも犠牲の方が大きくなるという。

<ウクライナ兵士の葛藤>

越境攻撃当初こそ混乱が広がったロシア側だが、最終的にはゆっくりと盛り返しているように見える。

あるロシア軍司令官は15日、国境付近の1つの集落からウクライナ軍を追い出したと明かした。衛星画像には、クルスク州の国境付近でロシアが新たに築いたと思われる塹壕が複数写っていた。

この戦争に関する公開映像を研究しているフィンランドのブラック・バード・グループのアナリスト、パシ・パロイネン氏は、ロシア軍にはドンバス地方の最も活発な最前線から軍を撤退させなくても、クルスク州で反撃に使える十分な予備兵力があるはずだと指摘した。

ウクライナ軍内部には越境攻撃を巡る葛藤もある。スジャ方面の部隊に属するある兵士は、戦争が早く終結し、この攻撃によってロシアとの交渉でウクライナが対等の立場になれるよう願っていると言う。他方で、ロシアの攻撃を撃退する必要な作戦だとみなしつつも、外国の領土に侵攻する違和感を払しょくできないと明かした。

「正直に言えば(ロシア人らが)してきたのと同じことをするのは良い気持ちがしない」と、この兵士は語った。

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