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アングル:中国のミサイル戦力抑止、イランによるイスラエル攻撃が教訓に

ロイター / 2024年10月16日 17時37分

 複数のアナリストによれば、イランが今月イスラエルに対して大量のミサイル攻撃を行ったことは、4月の同様の大規模攻撃と合わせて、インド太平洋地域における中国との紛争の可能性に向けて、米国とその同盟国によるミサイル迎撃体制の効力と弱点を示唆している。写真はイランが発射した弾道ミサイル。10月1日、イスラエルのテルアビブ上空で撮影(2024年 ロイター/Ammar Awad)

Gerry Doyle

[シンガポール 14日 ロイター] - 複数のアナリストによれば、イランが今月イスラエルに対して大量のミサイル攻撃を行ったことは、4月の同様の大規模攻撃と合わせて、インド太平洋地域における中国との紛争の可能性に向けて、米国とその同盟国によるミサイル迎撃体制の効力と弱点を示唆している。

双方のシナリオには差異があるため得られる教訓は限られるものの、今年に入ってイランがイスラエルに向けて発射した400発近いさまざまなタイプのミサイルは、米中両国にとって、何が攻防の成否を分けるのか、幾つかの手がかりを与えている。

10月1日のイランによる攻撃は、近代的な防衛システムに対する弾道ミサイルによる攻撃として、これまでで最も多いサンプルを提供した。シンガポールのS・ラジャラトナム国際学院のコリン・コー氏は、米政府にとって最大の収穫は、イランに比べて中国によるミサイル攻撃は迎撃が困難であり、大規模攻撃を阻止するには反撃能力が必要になるかもしれない、という教訓ではないかと話す。

「純粋に抑止力という観点で考えれば、もはや拒否的抑止、つまり効果的な防衛によりミサイル攻撃の有効性を低下させることができるという希望だけに期待をかけることはできない」とコー氏は言う。「今後は、懲罰的抑止が当たり前にならざるを得ないのではないか」

インド太平洋地域でミサイル攻撃を伴う紛争が直ちに発生する懸念はない。双方を隔てる数千キロの距離は、中東地域よりも大きい。中国の兵器はより高度であり、機動式弾頭と精密誘導を採用している。標的となる地点は地域全体に分散しており、大量攻撃を実施するハードルは高い。

中国軍は14日、台湾近海で新たな軍事演習を実施しており、「独立勢力による分離主義的行為」に対する警告だとしている。台湾の安全保障当局者は、これまでのところミサイルが発射された兆候はないと述べている。

米国は今年、中国に対抗するために、AIM-174B空対空ミサイルや、SM-6およびトマホークミサイルを発射できる地上配備型中距離ミサイルシステム「MRCタイフォン」のフィリピン配備など、インド太平洋地域において新たな兵器の開発・配備を進めてきた。

米国のインド太平洋軍司令部と中国国防省にコメントを求めたが、今のところ回答はない。

<中国のミサイル、長射程だが低精度>

一方、米カーネギー国際平和財団のアンキット・パンダ氏によれば、イランが大量のミサイルを一斉発射し、その多くが迎撃されたことを踏まえて、攻撃・防衛システムの能力についての情報が充実するだけでも、紛争の可能性を低下させることにつながるという。

「どこの軍であれ、長距離ミサイルによる攻撃を想定するならば、ミサイル防衛の潜在的影響を考慮して計画を練る必要がある」とパンダ氏は言う。「言うまでもなく、任意のミサイル防衛システムがどの程度機能するか明確でなければ、大幅なエスカレーションにつながりかねない」 

イスラエルは、長射程の「アロー」システムから、より低速で単純な脅威に対応する「アイアンドーム」まで、多層的な防空・ミサイル防衛を展開する。イランなど大国による誘導式の弾道ミサイルと国境間近から発射される無誘導のロケット弾が入り交じる、当面の脅威に合わせた体制だ。

米国とその同盟国にとって、インド太平洋地域における状況は大幅に異なる。米国側はミサイル防衛として、ロッキード・マーチンとレイセオンが製造する「パトリオット」、地上配備型ミサイル迎撃システム(THAAD)、水上艦のイージスシステムを用いている。戦略国際研究センターのミサイル防衛プロジェクトでは、中国が最も多く保有する通常型中距離弾道ミサイル「東風(DF)26」の命中精度を半径150メートルと推定している。また東風21は最大射程こそ劣るが、一部の改良型は50メートルの精度を誇る。

どちらもインド太平洋地域における米国及びその同盟国のほとんどの目標を攻撃できる。東風26は米軍の主要軍事施設が集まるグアムまで届く。米国防総省は、中国は東風26を数百発保有している可能性があると推測している。

対照的に「ファタハ1」などイランが使用するミサイルは、理論上は数十メートル以内と命中精度には優れるが、最大射程ははるかに短い。こうした新型ミサイルの数は公表されていないが、ケネス・マッケンジー米中央軍司令官は昨年、連邦議会において、イランはすべての種類を合わせると3000発以上の弾道ミサイルを保有していると証言した。

オーストラリア戦略政策研究所のマルコム・デービス上級アナリストは、中国の能力はほかの面でもイランを上回っていると指摘する。ミサイル攻撃は、防衛を困難にするために設計された対衛星攻撃やサイバー戦争と連携して行われる可能性が高いという。

「インド太平洋地域における西側の(統合防空・ミサイル防衛)システムが、数百発、あるいは数千発のミサイルで構成される中国の大規模ミサイル攻撃を撃退するのは、イランの攻撃に対する防衛に比べて、はるかに困難になるだろう」とデービス氏は述べている。

(翻訳:エァクレーレン)

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