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アングル:長期化するコロナ後遺症、「慢性疾患化」の指摘も 世界の関心薄れる中

ロイター / 2024年11月17日 7時55分

 10月14日、 ケニア人実業家のワチュカ・ギチョヒさんには耳にしたくない言葉がある。写真は長期にわたるコロナ後遺症に苦しむシャノン・ターナーさん。フィラデルフィアの病院で2023年5月撮影(2024年 ロイター/Leah Millis)

Jennifer Rigby Julie Steenhuysen

[ロンドン 14日 ロイター] - ケニア人実業家のワチュカ・ギチョヒさん(41)には耳にしたくない言葉がある。新型コロナウイルス感染後の後遺症に4年間も悩まされ、倦怠感や痛み、パニック発作などを起こし、夜には命の危険を感じるほどの症状に苦しんできた身にとって、「早く良くなってね」、「すぐに回復しますように」などと言われるのはつらすぎるのだ。善意から出た言葉だということは分かっている。それでも「完全な回復はありえないということを受け入れざるを得ない」のを悲しく感じている。

最近の研究からギチョヒさんのようなコロナ後遺症患者は、症状が長引けば長引くほど完全な回復の可能性が低くなることが分かってきた。英米の研究によると、回復可能性が高いのは感染後の最初の6カ月間。初期症状が軽くワクチン接種を受けている方が回復しやすい。半面、症状が6カ月から2年間続くと完全回復の可能性は低下する。

さらに後遺症が2年超続くと完全に回復する可能性は「非常に低い」と、リーズ大学のマノジ・シバン教授は指摘。こうした症状を「持続型コロナ後遺症」と呼び、慢性疲労症候群や線維筋痛症などと同じ慢性疾患と位置付けるべきだと訴えている。

<注意力の低下>

コロナ後遺症とは、感染時から症状が3カ月以上続く場合を指す。症状は強い倦怠感、思考力や集中力の低下、息切れ、関節痛など多様で、程度のばらつきも大きい。これまでのところ確立された診断テストや治療法はないが、リスク高い人や原因を探る研究は一定の進展を見せている。

英国のある研究によると、症状が12週間続いたと報告した人の約3分の1が1年以内に回復していた。一方で回復率はもっと低いとする研究もあり、入院した患者ではこうした傾向がより顕著となっている。

英国家統計局の調査によると、今年3月時点でコロナ後遺症を患っていると報告した人は200万人で、うち30.6%に当たる約70万人が少なくとも3年以上前から症状を抱えていた。コロナの後遺症があった人は全世界で6500万─2億人と推計されており、シバン氏はこの数字に基づいて1950万─6000万人が長期のコロナ後遺症に苦しんでいると見ている。

米国やドイツは引き続きコロナ後遺症研究に資金を投入している。しかし20人を超える専門家、患者擁護者、製薬会社幹部を取材したところ、これまで大規模な研究に資金を提供してきた他の先進国ではコロナ後遺症への関心が薄れ、資金も減っていることが分かった。中低所得国はもともとこの分野に資金を投じていなかった。

ユニバーシティー・カレッジ・ロンドンのアミタヴァ・バネルジー教授は「関心が他の分野に移っている」と現状を危惧。コロナ後遺症は心臓病や関節炎と同じように、患者の生活を改善するために治療すべき慢性疾患として位置付けるべきだと訴えている。

<深刻な症状>

ブラジル北東部に住むレティシア・ソアレスさん(39)は2020年に新型コロナに感染して以来、激しい倦怠感と慢性的な痛みに苦しんでいる。状態の良い日には5時間だけベッドから出ることができる。「症状は本当に深刻。いつも『悪化するのか』と不安に感じながら過ごさなければならない」という。抗ヒスタミン薬など日常的に手に入る薬を服用し、なんとか毎日の生活をしのいでいる。

一方、主流となっている治療法ではあまり効果がない患者もいる。

ギチョヒさんは医師がギチョヒさんの症状と親身に向き合ってくれなかったため、心と体を総合的に治療する「ホリスティック医療」の専門家に頼ることにした。ナイロビの忙しい生活から離れ、ケニア山の近くの小さな町に引っ越し、疲労を防ぐために活動量を調整。薬を服用しつつ、鍼治療などを受けている。「回復を追い求めることから、今の現実を受け入れることに気持ちを切り替えることが重要だった」という。

世界保健機関(WHO)の新型コロナ専門医のアニタ・ジェイン博士はコロナ後遺症について、現状では対処療法を取らざるを得ないと指摘する。

ただ、複数の研究によると、コロナに再感染するとコロナ後遺症が悪化する可能性もある。

シャノン・ターナーさん(39)はフィラデルフィアのキャバレー歌手で、2020年3月末から4月初めにかけて新型コロナに感染した。もともと自己免疫疾患を抱え、定期的にステロイドや免疫療法を受けていたが、今年夏にコロナに再感染。その後再び極度の疲労に悩まされるようになり、移動には歩行器を使っている。それでも音楽業界でキャリアを追求するという決意は揺らがない。「ベッドの中で一生を過ごすつもりはない」と述べ、コロナ後遺症と闘う覚悟だ。

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