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焦点:「気づけば頭上を飛んでいた」 ドローンによる監視は米憲法違反か

ロイター / 2024年2月17日 7時53分

 米ミシガン湖畔の自宅で暮らすトッド・マクソンさん(51)は以前、隣人から「あなたの家の上を何か変なものが飛んでいた」と教えられたことがあった。そして、ある日突然「それ」は目の前に現われた。写真はカリフォルニア州カストロバレーで行われた製品デモで飛行する、エアスペース・システムズの自律型ドローン「インターセプター」。ドローンの追跡が可能。2017年3月撮影(2024年 ロイター/Stephen Lam)

Carey L. Biron

[ワシントン 12日 トムソン・ロイター財団] - 米ミシガン湖畔の自宅で暮らすトッド・マクソンさん(51)は以前、隣人から「あなたの家の上を何か変なものが飛んでいた」と教えられたことがあった。そして、ある日突然「それ」は目の前に現われた。

マクソンさんは2018年の出来事について「飼い犬と子どもを連れて家を出たら、ドローンが飛んでいた。私のちょうど真上を」と語る。

ドローンはその前にも、数カ月で少なくとも2回、2ヘクタールに渡って広がる敷地の上を飛んでいたことが分かった。マクソンさんは古い車のレストア(復元)という趣味に絡んで、土地利用を巡る争いに巻き込まれており、地元であるロングレイク行政区に監視されていたのだ。

だがその監視は、前もって令状を取ることなく行われていた。マクソンさんと弁護士らは、不当な捜査を拒否する憲法上の権利を侵害するものだと指摘する。

ここ数年で何度か差し戻しと上訴を繰り返した後、昨年10月にミシガン州最高裁判所で口頭弁論が行われた。数カ月以内に下される判決は、全米に影響を及ぼす判例となる可能性がある。

「ひどいプライバシー侵害だ」と、マクソンさんはトムソン・ロイター財団に語った。

「監視はほかにも複数回にわたって行われたかもしれない。知らないうちに監視されているのは不安だ」とマクソンさん。「子どもや妻、ペットを監視するドローンも現われるかもしれない」

マクソンさんによると、当局は他の地域住民に対しても、土地利用規制を守らせるためにドローンを利用してきたという。

ロングレイク行政区は訴訟が係争中であるとしてコメントを控えているが、以前には、住宅地域内に無許可で廃棄物集積場を設けたとしてマクソンさんを告発したことがある。本人は事実無根と反論している。

当局は、ドローンによる画像撮影はマクソンさんの敷地以外も対象に含まれており、正当な理由のない「不合理な捜索および押収または抑留から、身体、家屋、書類および所有物の安全を保護する権利」を保障する米国憲法修正第4条の対象ではないと主張している。

マクソンさんの弁護士はこの論理に反論した。

「政府が証拠収集を目的とし、何者かに依頼して誰かの不動産の上空全域でドローンを飛ばすのであれば、修正第4条に規定される捜索に相当する。これは、当然期待されるプライバシーを侵害する」と語るのは、マクソン家の代理人を務める公益法律事務所インスティチュート・オブ・ジャスティスのロバート・フロマー上席弁護士だ。

「こうした捜査を実施したければ裁判所に相応の根拠を提示すれば済む話で、当局者が独断専行に走るのは問題だ。ふと気づけば、あらゆる人の上をドローンが飛び回っている、という状況になる。当局は、違反を探し回ろうとするだろうから」

ドローン技術の利用が広がり、入手も容易になる中で、今回の事件で司法における判例が確立される可能性があるという。

「今回の判決が先例となる。ドローンによる監視を司法がどう扱うか、ミシガン州だけでなく全米規模で今後の流れに影響するだろう」

米連邦航空局(FAA)と業界団体の国際無人機システム協会は、訴訟が係争中であることを理由に本件についてのコメントを控えた。

<判例は時代遅れに>

米連邦最高裁判所はかつて空撮による監視という主題について司法判断を行ったことがあるが、主要な判決は1980年代に出ており、有人機に関するものだ。

連邦最高裁は当時、有人機による私有地の監視は修正第4条違反には当たらないと判断した。だが、今回のミシガン州での訴訟で弁論趣意書を提出したデジタル関連の言論の自由擁護グループ、電子フロンティア財団に所属するハナー・ツァオ弁護士は、現代のドローンによる監視との相違点は大きいと指摘する。

同弁護士によると、有人機は人間が操縦するため監視能力に限界があるだけでなく、コストもかかる。機体は大きく、騒音を出すため、監視中だということが分かりやすいと指摘する。

「80年代に有人機による監視について議論していた頃には、これほど小さく操縦性もはるかに優れたものを、私有地の上空に飛ばせるとは想像もできなかっただろう」とツァオ弁護士は語る。

近年、空撮による監視計画が訴訟に持ち込まれたケースとしては、監視用ドローンを1日12時間飛行させるボルチモア警察の計画が裁判所により2021年に却下された例がある。

一方、各地の警察署では、緊急通報への初期対応としての出動も含め、ドローンの活用が増えつつある兆候が見られる。

米国自由人権協会(ACLU)は昨年「(米国は)警察権力によるドローン利用の急増という変化に直面」しており、こうした手段が特に社会的に弱い立場にある貧困層に対し使用されがちだとの懸念を表明した。

電子フロンティア財団の追跡調査によれば、ドローンを調達もしくは活用している法執行機関の数は1500に迫っている。

米司法省が発表した2020年の報告書では、法執行機関によるドローンの使用は、群衆の監視や一般的な監視のほか、捜索・救助活動、武装した容疑者の捜査、災害対応、犯罪や事故の再現などが許可されている。

<「プライバシー保護法制が追いつかない」>

だがツァオ弁護士は、技術が進歩する一方で法律は旧態依然であり、多くの警察署では、運用の是非を決定するのにおおむね内規に依存しているという。

「私たちは皆、プライバシー保護法制がドローン技術の急速な進化ペースに追いついていないという事実を気にかけるべきだ」とツァオ弁護士は語る。

ドローン利用について何らかの透明性の基準を設けるよう求める法律を制定した州は、まだ一握りにすぎない。たとえばミネソタ州は、州政府がドローンを利用する場合には令状とともに飛行記録をとることを義務付けている。

ツァオ弁護士は、ミシガン州における判決はこうした問題を巡る全米の裁判所による対応に影響を与え、米連邦最高裁が改めて空撮による監視を俎上(そじょう)に載せる際の指針となる可能性があるという。

トッド・マクソンさんもまさにそれを望んでいる。自分の訴訟が、大切な最初の一歩だと考えているからだ。

「これはもはや、私個人の取るに足らないトラブルではなくなっている」とマクソンさん。「正しい判例が示されなければ、誰もが政府による監視から守られなくなる」

(翻訳:エァクレーレン)

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