アングル:相次ぐ中国社債デフォルト、海外資金流入一服で冷や水
ロイター / 2020年11月18日 7時15分
11月13日、足元の中国の社債市場では、それなりに有名な企業のデフォルト(債務不履行)が幾つか発生し、中国政府の支援が当てにならないとの不安から売りが広がった。写真は人民元紙幣と中国旗。2017年5月撮影(2020年 ロイター/Thomas White)
[シドニー/香港 13日 ロイター] - 足元の中国の社債市場では、それなりに有名な企業のデフォルト(債務不履行)が幾つか発生し、中国政府の支援が当てにならないとの不安から売りが広がった。バンカーやアナリストは、これによって外国人投資家の強気姿勢が一服し、社債発行環境に冷や水が浴びせられる公算が大きいとみている。
市場を驚かせ、規制当局も調査に乗り出す事態になったのは、国有石炭会社の永城煤電控股集団のデフォルトだ。同社は3週間前に起債し、10億元(1億5100万ドル)を調達したばかりだった。
10月末にはドイツBMWの合弁相手の親会社、華晨汽車集団もデフォルトを引き起こした。さらに国有半導体メーカー、清華紫光集団は有力格付け会社から債務返済リスクを指摘されて上場株の取引が一時停止され、不動産開発大手の中国恒大集団<3333.HK>も債務問題を抱えるなど問題が噴出している。
13日にはおびえた投資家が社債全般や、社債を保有する銀行の株式を投げ売りし、中国社債への投資熱が後退した。
バンク・オブ・シンガポールの香港駐在債券アナリスト、ジュディ・クウォク・チャン氏は「政府支援に対する市場の信頼感が非常に揺らいでいる表れで、年初に比べて市場参加者の不安がやや高まっている。引き続きどの程度支援があるのか、支援を受ける企業はどこかをわれわれは探っている途中で、政府が支える企業とそうでない企業を見極めようとしているところだ」と述べた。
今年に入って中国のソブリン債と社債には投資家の資金が活発に流入。特に一部の国際的な投資家は、同じ格付けの欧米社債に比べて利回りが高いことを理由に、強気の立場を続けていた。
ところが新型コロナウイルスのパンデミックをいち早く収束させた中国で景気回復の勢いが鈍り、回復の足並みにもばらつきが出ていることが判明するとともに、債務水準の高さやキャッシュフローの不確実さなど、それまで棚上げされていたリスクが再浮上してきた。
ムーディーズ(香港)のアソシエート・マネジングディレクター、イバン・チョン氏は「状況が落ち着いた後では、社債市場でこの種の脆弱さがまたあらわになり、それが理由でデフォルトが増えている」と説明した。
<求められる選別眼>
こうした市場の問題に加え、中国政府が不動産開発会社の債務圧縮を促していることで、年内の社債発行は抑制され続けそうだ。中国の高利回り社債のほとんどは不動産開発会社が発行するが、リフィニティブのデータによると、今年これまでの世界全体の高利回り社債発行高に占める割合は5.4%と2017年以降で最も小さい。
DBS銀行のグローバル債券責任者クリフォード・リー氏は「中国社債の緊張が懸念要素として浮上してきたのは間違いない」と語り、起債をストップさせるわけではないが、発行が手控えられつつあるとした。
香港のある債券資本市場バンカーは、逆に社債を発行している企業は財務状態が比較的良好だからこそ市場にアクセスできるわけで、資金繰りに窮しているはずはないと考えられると話す。
確かに中国では年初来400億ドル相当の高利回り社債が発行されており、一部の投資家は発行体がふるいにかけられ、当局が監視を強化する事態を歓迎するだろう。
しかしゴールドマン・サックスが指摘するように、最近の一連のデフォルトは昨年より規模が大きく、国有企業絡みも増えており、社債市場で進む「淘汰」に巻き込まれないためには細心の注意が必要なことがはっきりと分かる。
ゴールドマンのアナリスト、ケネス・ホー氏とチャッキ・ティン氏はノートに「中国不動産企業の高利回り社債は引き続きわれわれが好むセクターの1つになっている。だが個別リスクの管理が大事になるだろう」と記した。
(Tom Westbrook記者 Scott Murdoch記者)
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