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焦点:トヨタ会長に相次ぐ反対推奨、統治と認証不正 株主どう判断

ロイター / 2024年6月17日 13時38分

トヨタ自動車が18日に開く定時株主総会は、豊田章男会長をトップとする企業統治に米議決権行使助言会社大手2社が揃って疑義を唱え、昨年以上に注目されている。写真はバンコクで2023年5月撮影(2024年 ロイター/Athit Perawongmetha)

Maki Shiraki Daniel Leussink

[東京 17日 ロイター] - トヨタ自動車が18日に開く定時株主総会は、豊田章男会長をトップとする企業統治に米議決権行使助言会社大手2社が揃って疑義を唱え、昨年以上に注目されている。グループ企業で相次ぎ明らかになった認証不正がトヨタ本体でも発覚する中、創業家出身の社長、会長として同社を15年間率いてきた豊田氏の取締役選任案に対する賛成票比率が焦点となる。

<前年は賛成票比率が10%超低下>

昨年は米議決権大手2社のうち、グラスルイスが豊田会長の取締役選任に反対を推奨し、トヨタ株主総会に対する関心が例年以上に高まった。今年はインスティテューショナル・シェアホルダー・サービス(ISS)も反対を推奨し、一段と注目を集めている。

グラスルイスは昨年と同じく「取締役会が十分に独立性を保っていない」などと企業統治のあり方を問題視。早川茂副会長の取締役選任案にも反対を推奨し、「その他のガバナンス(企業統治)上の問題」を理由とした。

ISSはグループ企業で起きた認証不正を反対推奨の理由に挙げ、「最終的な責任は、経営トップを長年務めてきた豊田氏にある」と指摘した。取締役候補者の顔ぶれやトヨタが公表した再発防止策から判断すると、企業文化を変えるという会社の主張に反し、実際は企業文化を維持する傾向が疑われるとした。

SBI証券の遠藤功治企業調査部長は「昨年度の業績は過去最高。結果を出してトヨタを成長に導いた豊田氏への評価は高いはずで、本来であれば議決権行使助言会社から反対は推奨されないはずだが、実際には反対が推奨された。賛成票比率が過去最低となるのではと(金融市場や自動車などの関連)業界で懸念されている」と話す。

グラスルイスが豊田氏選任に反対を推奨した昨年、米公的年金基金のカルフォルニア州退職年金基金(カルパース)は反対票を投じた。賛成票比率は22年までの過去5年間は約95―98%で推移していたが、23年は84.57%と22年の95.58%から下がった。

マッコーリーキャピタル証券アナリストのジェームス・ホン氏は、「豊田会長が再任されないとは思わない」とする一方、賛成票比率が下がり続ければ「経営陣にとって警戒すべき兆候だろう」とみる。

取締役の選任には出席株主の過半数の賛成が必要で、18日の総会当日は承認されたかどうかだけが明らかになる。比率の詳細は19日に判明する。

トヨタ広報はロイターの取材に、「間違いをしたときには立ち止まり、まずは何が起きているのか事実を確認することが、トヨタが大切に育んできた本来の企業風土」とコメント。「これまで培ってきた風土を取り戻す取り組みを会長の豊田自らが取り組んでおり、今後も豊田を中心に実効性のあるガバナンスをグループ各社と共に取り組んでいく」とコメントした。

<会見での発言>

豊田氏は、トヨタがリーマン・ショックで創業以来初の赤字となった直後の2009年6月から約14年間にわたり社長を務めた。同社を再び成長軌道に乗せ、会長に就いた昨年はグループ世界販売で4年連続首位を達成した。しかし、その間、トヨタ車の生産を任せていたダイハツや日野自動車、トヨタの源流企業でもある豊田自動織機で不正が行われていた。

豊田氏は今年1月、不正に気づけなかった理由を会見で問われ、リーマン・ショックや大規模リコール問題、東日本大震災、タイの洪水など「危機が連続し、正直ゆとりがなかった。トヨタを何とか立ち上がらせるのに正直精一杯だった」と説明、今後はグループ責任者として再生に尽力すると宣言した。

グラスルイスとISSが豊田氏選任の反対推奨を明らかにしたのは5月下旬。その後の6月3日、国土交通省はトヨタなど6社から認証不正の報告があったと発表した。

トヨタの試験不正は現時点で6つ判明している。豊田会長は会見で「自動車メーカーとして絶対にやってはいけない」と謝罪したが、一部の不正は国の基準よりも厳しい条件で試験を行ったとも釈明。また、現行の認証制度については記者の質問に答える形で、「非常にあいまい、もしくは属人的な技能に頼るケースも多い」「今回をきっかけに国と自動車会社がすり合わせをして、何がお客様のためと日本の自動車業界の競争力向上につながるか、制度自体をどうするのかという議論になっていくと良い」などと答えた。

こうした発言が他人事のような印象を与え、認証制度への責任転嫁などと一部では受け取られた。企業の法令順守に詳しい郷原信郎弁護士は「問題を提起して解決を図る力を有する立場にありながら、全く主体性をもって行ってこなかったことへの反省がみられない」と語る。

トヨタ広報はロイターの取材に、「関係する皆さまにご心配とご迷惑をお掛けし、深くお詫び申し上げる。間違ったときには立ち止まり、現地現物で真因を追求し、改善を続けていく」とした。

トヨタの株価は軟調に推移している。3日から14日までの10営業日中、前日終値を上回ったのは2日しかない。3月に一時60兆円を突破した時価総額は、足元で50兆円割れが続いている。SBI証券の遠藤氏は「コンプライアンス(法令順守)問題が背景にあるのは明らか」と話す。

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