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アングル:オンラインスポーツ賭博急増、米で依存症危機

ロイター / 2024年8月18日 8時2分

アッシャーさんが2022年、初めてギャンブル依存症患者の集まり「ギャンブラーズ・アノニマス」の集会に出たとき、参加者は10数人だったが、今では60人に増えた。写真はニューヨークで2022年2月、スマートフォンを使用する人(2024年 ロイター/Andrew Kelly)

Avi Asher-Schapiro Carey Biron

[ロサンゼルス 12日 トムソン・ロイター財団] - アッシャーさんが2022年、初めてギャンブル依存症患者の集まり「ギャンブラーズ・アノニマス」の集会に出たとき、参加者は10数人だったが、今では60人に増えた。新規参加者の大半はオンラインスポーツ賭博の依存症だ。

アッシャーさんはオンラインポーカーによってギャンブルに引き込まれた。

「オンラインでギャンブルのアカウントを開設するのはとても簡単だ。ある時は中毒で50万ドル以上(約7370万円)を失い、もう少しで家族も失うところだった」と明かす。

UCLAのギャンブル研究プログラムの共同ディレクター、ティモシー・フォング氏によると、以前はカジノやスロットマシーンで貯蓄を失った比較的高齢の中毒者がクリニックに殺到していた。しかし最近では、オンライン賭博のほか、リスクの高い暗号資産(仮想通貨)や株の取引にはまる若い男性が増えており、特にオンラインスポーツ賭博の中毒者が多い。

「全てが変わった」とフォング氏は言う。

米連邦最高裁判所が2018年、スポーツ賭博の可否を決める権限は州にあるとの判決を下したことが、変わり目だった。

以来、米国ゲーミング協会によれば38州と首都ワシントンがスポーツ賭博を合法化し、昨年は110億ドル以上の収益をもたらした。

アーバン・ブルッキングス租税政策センターのプリンシパル政策アソシエイト、リチャード・C・オーシエ氏は、新型コロナウイルスのパンデミックによる経済混乱と闘っていた州や市の当局にとって、この新たな収入源に課税できることは魅力的だった、と説明した。

ただオーシエ氏は、州は業者の収益に課税するため、ギャンブラーが負けたときだけ州がもうかる理屈だと警告する。

<大きな収入>

米国勢調査局が2月に発表したところによると、昨年第3・四半期に州政府のスポーツ賭博収入は5億0500万ドル以上と、前年同期から20%増えた。

スポーツ賭博の税率は州によって大きく異なり、最も高いニューヨーク州とロードアイランド州では51%だ。

近年、賭博からの税収は州や地方の予算の約1%を占めており、非常に大きいとオーシエ氏は言う。

一方、オンラインスポーツ賭博の合法化に伴ってギャンブル依存症も急増する例が多いと一部の専門家は指摘する。フロリダ州では昨年、オンラインスポーツ賭博のアプリが導入された後に、ギャンブル依存症ヘルプラインへの問い合わせが倍増した。

全国ギャンブル依存症対策協議会のキース・ホワイト事務局長は「ヘルプラインに電話する人の多くは、年収の2倍以上のギャンブル負債を抱えている」と語る。

同協議会は全国的なヘルプラインを運営しており、2020年から23年にかけて電話やメールがほぼ倍増した。

<安全策と治療>

米国ゲーミング協会によると、各州は昨年、ギャンブル依存症対策費として1億ドル近くを確保した。財源のほぼ全ては業界自身が納めた税金だ。

全米ギャンブル依存症対策協議会は、賭博収益の2%を治療プログラムに充てることを提唱。同協議会は、米国におけるギャンブルの社会的コストは、医療費や投獄にかかる費用を含め、年間100億ドルに上ると推定している。

同協議会はまた、各州に対し、オンラインギャンブルに39の安全基準(入金制限、ユーザーが特定のアプリをブロックするツール、依存症ヘルプラインへのリンクなど)を設けるよう求めている。

一方、オンライン賭博の台頭は、安全策を講じる新たな機会をもたらすとの声もある。

マサチューセッツ州ゲーミング健康評議会のマーリーン・D・ワーナー氏は、人工知能(AI)ツールを使って厄介な事態が起きる前に個々人のリスクを評価できる可能性があると指摘。「AIであれ人であれ、問題のある道を進み始めた人にメッセージを送ることができれば、それは素晴らしいことだ」と語った。

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