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アングル:「先行指標」ラスベガス労働市場は堅調、FRB念願の軟着陸示唆

ロイター / 2024年9月17日 15時29分

 9月16日、 観光都市ラスベガスを抱えるネバダ州の労働市場は、米国の景気が厳しくなるとその影響が真っ先に表れることが多く、米経済の先行き示す「先行指標」的な存在として注目されている。ラスベガスで2021年5月撮影(2024年 ロイター/Bridget Bennett)

Howard Schneider Ann Saphir

[ラスベガス/リノ(米ネバダ州) 16日 ロイター] - 観光都市ラスベガスを抱えるネバダ州の労働市場は、米国の景気が厳しくなるとその影響が真っ先に表れることが多く、米経済の先行き示す「先行指標」的な存在として注目されている。

今週は米連邦準備理事会(FRB)による利下げが予想される重要局面だが、ネバダ州の経営者や労働組合幹部、エコノミストなどによると、同州で景気悪化の明確な兆候は見られない。

経済問題が米大統領選の勝敗を決する可能性もある中、激戦州ネバダはインフレが峠を越えつつも、雇用に打撃を及ぼすような景気後退は免れそうな兆候にあふれている。これはFRBにとって念願の「ソフトランディング(軟着陸)」だ。

一見すると5.4%というネバダ州の失業率は楽観できないように思える。全米50州中で最も高く、全米平均を1%余り上回っているからだ。しかしこの水準は過去3年間ほぼ変化しておらず、過去に米経済が全国規模で混乱期に入った時の直前に起きたような失業率の急上昇が発生する気配もない。

ラスベガスやリノのカジノ、ホテル、レストラン従業員の有力労働組合「カリナリー・ワーカーズ・ユニオン」の幹部、テッド・パパジョージ氏は、州内200余りのカジノは客足が落ちておらず、最近は建設業で雇用が増えていると指摘。「景気は堅調、観光客数と利益は増加し、成長は上向きだ」と言う。

<迫る利下げ>

17、18日の連邦公開市場委員会(FOMC)は利下げに着手する見込みで、米金融政策は転換点を迎える。アナリストは0.25%ポイントの利下げを予想しているが、金融市場は、FOMCが労働市場の悪化を防ぐために利下げ幅を0.5%ポイントとする可能性を大きく織り込んでいる。

インフレ率はFRB目標の2%まで約0.5%ポイントの水準まで落ち着いてきているため、利下げのペースと規模はFRBが労働市場のリスクをどのように評価するかで大きく左右されるだろう。その労働市場は、金融引き締めや景気減速にもかかわらず底堅さを保っている。

ネバダ州の失業率の動きを見ると、FRBがなぜ労働市場の把握に苦労しているのかが分かる。全国の失業率が50年ぶりの低水準だった昨年の3.4%から4.2%に上がったことが、必ずしも基調的な弱さを示していない理由も分かる。

月ごとの雇用創出は、新型コロナウイルスのパンデミック後の経済再開に伴う急激なペースからは鈍ったが、足元の数字は、FRBが2%の物価目標と整合的だと考える水準に近い。つまり、急激に悪化しているのではなく、FRBが言うところの「正常化」に向かっている。

失業保険給付申請件数など労働市場関連の他の指標もパンデミック直前の水準に戻っており、ここ数カ月はほぼ変化していない。

一方で求職者数は着実に増加している。これはおおむね健全な兆候であり、企業が雇用を続ける限り、失業率が上昇しても、そのペースは緩やかになり得る。

<雇用の創出>

ネバダ州の失業率は17年間にわたって全米平均を上回り、過去2年間に全米平均を1.8%ポイント上回ることもあった。しかし、労働力が2022年初頭から7%余りと全米平均の約2倍のペースで増加しているにもかかわらず、失業率は横ばいだ。

ネバダ州の雇用・訓練・リハビリテーション局のチーフエコノミスト、デビッド・シュミット氏は、州経済は新たな雇用を創出するだけでなく多様化していると指摘。「失業者の過半数は、労働市場への新規参入者か再参入者、あるいは辞職した人々であり、失職者は半分に満たない」状態で、労働市場はダイナミックだと語った。

ネバダ州はパンデミック関連の制限措置により、失業率が30.6%という驚異的な水準に上昇したことがあった。これは全国のピーク水準の2倍だ。しかし今では雇用がパンデミック前よりも10%程度多く、全米で4番目の大幅増加を示している。全米で見ると、2020年2月以降の雇用増加率は4%強にとどまる。

今年初めに電気自動車(EV)大手テスラがネバダ州工場で従業員数百人を解雇した際には製造業の成長が一時的に停滞し、警戒感が広まったが、他のセクター、特に建設業がそれを穴埋めした。ネバダ州の失業率が高いのは「人々が仕事を探しているためで、職を失ったためではない」とシュミット氏は強調する。

ネバダ州の企業関係者によると、同州の経済状況は引き続き堅調で、従業員は主に住宅費などのコスト上昇を懸念しているものの、雇用の確保についてはそれほど心配していない。

リノのカジノ「サーカス・サーカス」のベテランバーテンダー、クリスティ・ストレイク氏は、パンデミック前よりもスタッフは少ないものの、仕事は安定していて、「まあ順調だ」と話した

野球のマイナーリーグのチーム「リノ・エーシズ」のエリック・エデルスタイン社長によると、消費は活発だ。「ファン層はパンデミック前に比べて、より大きく、より騒々しくて、お金もたくさん使ってくれる」。企業スポンサーの更新や来季のシーズンチケットの売れ行きは、今季と同等か、若干上回っている。エデルスタイン氏は「いつ悪いことが起きるかと警戒していたが、まだ起きていない」と語った。

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