アングル:米大統領選、トランプ氏の敗北受け入れ拒否で混乱も
ロイター / 2024年10月17日 17時28分
10月16日、トランプ前米大統領は大統領選で敗北した場合、4年前の前回と同様に不正があったと主張し、結果を受け入れないと明言している。写真は15日、ジョージア州アトランタで開かれた選挙集会で登壇するトランプ氏(2024年 ロイター/Dustin Chambers)
James Oliphant
[ワシントン 16日 ロイター] - トランプ前米大統領は11月5日の大統領選で敗北した場合、4年前の前回と同様に不正があったと主張し、結果を受け入れないと明言している。選挙戦がこうした展開になった場合、既に分断が深まっている米国は政治的に不安定な状態に陥りそうだ。
共和党候補のトランプ氏は9月にミシガン州で開いた選挙集会で「もし負けたら――言っておくが、それは起こり得る。なぜなら彼らは不正をするからで、われわれが敗北するなら理由はそれしかない。彼らは不正をする」と言い切った。
トランプ陣営と支持者は2020年の前回の大統領選後に選挙結果を覆そうと数十件の訴訟を起こしたが、最終的に集計の結果を変えたり、手続きを遅らせることはできなかった。
今回の選挙ではトランプ氏には現職大統領の権限がなく、この点が前回と大きく異なる。また、新たな州法や連邦法の施行で選挙結果への介入は以前より難しくなっている。
それでも、トランプ氏とその支持者は数カ月前から、民主党候補ハリス副大統領が勝利した場合に不正が行われたと主張するための準備を進めてきた。訴訟を起こしたり、自身の支持者が選挙結果の正当性に対する疑問を抱くよう仕向けたりすることで、不測の事態を招く恐れもある。
<トランプ氏の戦術>
共和、民主両党は、11月5日の投票以降、数日間にわたり郵便投票の集計確認などが行われるため、結果の確定が遅れる可能性があると見ている。トランプ氏は、敗北の兆しが表れれば、この投票結果確定までの期間をとらえて不正があったと主張し、選挙管理委員会の信頼を損なおうと図るだろう。支持者に抗議行動を促すかもしれず、既に「不正行為」に関わった選挙管理委員や公務員の逮捕をちらつかせてもいる。
また、トランプ氏は証拠のないまま、SNSや記者会見、インタビューを通じて国民に直接訴えかけることもできる。
<激戦州の動き>
共和党は既に選挙後の異議申し立ての準備として主要な激戦州で、大勢の外国人が投票するなどと主張して100件余りの訴訟を起こしている。
両党とも選挙監視員と呼ばれる、数千人の訓練を受けたボランティアを投票所に派遣し、投票行動と集計を監視して不正行為を報告するよう指示しており、専門家からは共和党の選挙監視員が混乱を引き起こすのではないかと懸念する声も聞かれる。
トランプ陣営は2020年と同様に、主要州で選挙管理委員や州議会議員、場合によっては裁判官を使い、不正を理由に結果確定の手続きを遅らせようとする可能性がある。こうした取り組みは前回成功しなかったし、専門家は州法によれば地方当局には票を無効にしたり、集計を妨げたりする権限がないことは明確だと指摘している。
激戦州7つのうち5州は民主党知事がいる。ただジョージア州は選挙管理委員会に選挙結果を調査する権限を与えており、悪意を持った者が集計結果に異議を唱えたり、集計を遅らせたりすることが可能だとの指摘もある。もっとも同州の裁判所は今週、地方当局は選挙結果を認定しなければならず、認定しない裁量はないとの判断を下した。
米国の大統領選は、各州の選挙人団が12月に集まって投票する前に、全州が認定済みの集計結果を提出する必要がある。投票結果は翌1月の連邦議会で最終認定される。トランプ氏の陣営や支持者が法的な異議申し立てを行ったり、認定手続きに遅延が発生したりすると、州の結果提出が期限に間に合わず、議会で共和党が異議を唱える足掛かりとなりかねない。
専門家の間からは、結果認定を巡る裁判の結果を予想するのは難しく、特にトランプ氏寄りの裁判官がこうした案件を担当する場合は危険だと懸念する声も出ている。
<議会に最終決定権>
2020年の大統領選後に議会は、トランプ氏が行ったような異議申し立てのハードルを高くすべく法改正を行っており、例えば副大統領が国全体の結果認定を遅らせたり、州の結果を無効にしたりする権限を持たないことが明確になった。また、州の選挙人の投票に対する異議申し立てを行うには上下両院のそれぞれの5分の1の議員の賛同が必要で、さらに異議申し立ての可決には上下両院の過半数の賛成が必要だ。
ただ、トランプ氏が今回も選挙で不正があったと主張すれば、2021年1月6日の連邦議会襲撃のような事件が再び起こる恐れがある。リベラル系シンクタンク「ピープル・フォア・ザ・アメリカン・ウェイ」のピーター・モンゴメリー氏など専門家は、極右グループによる暴力的な行動よりも、むしろ票を集計している選挙職員が危険にさらされるのを警戒している。モンゴメリー氏は激戦州の州都で暴力的なデモが発生する可能性もあると警鐘を鳴らしている。
この記事に関連するニュース
-
トランプ氏、閣僚人事の議会承認で共和党に結束呼びかけ カーター氏の国葬出席も表明
産経ニュース / 2025年1月1日 14時32分
-
トランプ氏、ジョンソン下院議長の続投支持を表明 混乱回避へ交代論抑え込み
産経ニュース / 2024年12月31日 7時7分
-
トランプ氏、米政府系放送局トップに共和党強硬派レーク氏指名
ロイター / 2024年12月12日 15時13分
-
民主主義存続には多元主義への深い関与不可欠=オバマ元米大統領
ロイター / 2024年12月6日 13時4分
-
米下院選の議席数が確定、共和党トライフェクタも民主党とは僅差(米国)
ジェトロ・ビジネス短信 / 2024年12月6日 10時0分
ランキング
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください