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情報BOX:米大統領の自己恩赦、法的には拒めるか

ロイター / 2021年1月18日 16時46分

 弾劾裁判や他の訴訟が待ち受ける米大統領として4年の任期を終えようとしているトランプ氏は、自身に大統領恩赦を与えるのか。写真はメリーランド州のアンドルーズ空軍基地で12日撮影(2021年 ロイター/Carlos Barria)

[16日 ロイター] - 弾劾裁判や他の訴訟が待ち受ける米大統領として4年の任期を終えようとしているトランプ氏は、自身に大統領恩赦を与えるのか。その胸中は定かでないが、合衆国憲法で米大統領に付された広範な恩赦権限がそうした行為を許すかどうかには疑問がわく。

司法省は以前、憲法は現職大統領には訴追は認めていないとの見解を打ち出した。ただ、退任後はそうした保護はなくなる。

大統領が自身を恩赦することが憲法上、どう問題になり得るか、そうした行動に出たとしても退任後のトランプ氏の法的な窮地は終わらないとみられるのはなぜかを説明する。

<自己恩赦は合憲なのか>

この疑問に明確な答えはない。合憲である可能性を憲法は明示していない。これまで試した大統領もいなかった。だから法廷も審理したことはない。

トランプ氏は2018年のツイッターで、自分を恩赦できる「絶対的な権限」があると記していた。ホワイトハウスの報道官はトランプ氏が自己恩赦する可能性について論評を拒んだ。

多くの学者は違憲との考えを示してきた。だれも自分の訴訟を自分で裁いてはならないとの基本原則を犯すという理由だ。

合憲と主張する学者もいる。恩赦権限は憲法に極めて幅広に規定されているためという。歴史的な文書では、18世紀の建国の父たちが「自分自身への大統領恩赦」について議論し、その権限を明示的に制限することは避けたことが明らかになっているという。

憲法は「弾劾を除き、合衆国に対する犯罪で刑執行の猶予を与えたり恩赦したりする権限が大統領にはある」としている。ミズーリ大学のフランク・ブラウン法学教授によると、ここで使われる「与える」や「恩赦」の言葉は、歴史的には、その条項に基づく大統領の権限が他者への恩赦に限定されることを示唆している。

司法省がこの問題を扱ったのは直近では1974年。法律顧問局の法律専門家がメモを作成している。当時のニクソン大統領が自身を恩赦するのは違憲になると結論付けたメモだ。「誰も自分を裁くべきではないという根本的な原則からは、大統領は自身を恩赦できない」と記していた。ニクソン氏は同年、ウォーターゲート事件で辞任した。

ただ、当時のメモは、ニクソン氏が一時的に退任し、副大統領に恩赦され、その後に復位することは可能だとの考えを論じていた。このメモには法的な正統性はない。

大統領恩赦が適用されるのは連邦犯罪だけで、州で扱われる犯罪は対象外だ。

<自己恩赦は法廷ではどう審理され得るか>

米国の法律では、裁判所は助言的意見は出さない。専門家によると、自己恩赦の正当性について裁判所が判断を下すには、司法省がトランプ氏を犯罪で訴追し、トランプ氏が弁護側として恩赦を申し立てる必要がある。

ロヨラ・ロースクールのジェシカ・レビンソン法学教授によると、自己恩赦の動きは、検察のトランプ訴追を勢い付けるだけかもしれない。トランプ氏が何かを隠していることを示唆するためという。

<トランプ氏は犯罪の責任に問われるのか>

トランプ氏は幾つかの面で犯罪の責任に問われる可能性がある。

一部の専門家は、トランプ氏が今月2日にジョージア州の州務長官にかけた電話が連邦法と州法に違反している可能性があると指摘する。トランプ氏は州務長官に対し、同州での大統領選投票で自分が敗北したとの結果を覆せるだけの票を「見つける」よう圧力をかけた。

選挙の不正を勧誘する犯罪についてのジョージア州法は、だれかが他人に対し、「選挙不正に関わるよう意図的に勧誘したり要請したり命令したりする」ことを違法と規定する。

これと別に連邦法は、人々から「公正公平に行われた選挙手続き」を奪ったり、これに関して欺くことを違法とする。

この疑いについて、トランプ氏は州務長官に個人的な意見を示しただけで、選挙結果に介入するよう命じてはいないと主張する可能性が高い。

一部の専門家によると、トランプ氏の支持者が今月6日に連邦議事堂に乱入、バイデン次期大統領の選挙勝利認定の審議を中断させ、議員らを退避させ、5人の死者を出した事件で、直前にトランプ氏が群衆をあおるような演説をしたことの法的責任を問われる可能性がある。

この件では、別の専門家によると、トランプ氏は自分の発言について憲法が保障する言論の自由に守られていると強く主張する可能性がある。

トランプ氏は別の州法違反で検察から訴追される可能性もある。ニューヨーク州マンハッタン地区検察のサイラス・バンス検事は既に、トランプ氏の事業の脱税調査を先導している。ただ、まだ訴追はされていない。トランプ氏は調査が政治的動機に基づくと訴えている。

<自己恩赦の範囲はどう表現され得るか>

大統領への恩赦が極めて幅広く表現された前例はある。ニクソン氏は最終的に後任のフォード大統領から「完全で無条件の恩赦」を得た。この恩赦により、ニクソン氏は「大統領として米国に対し犯した可能性のあるいかなる罪」も免責されることになった。

連邦最高裁がこうした幅広の恩赦が適法かどうかについて判断をしたことはない。専門家には、建国の父たちは恩赦は特定の事柄に絞ることを意図しており、恩赦の範囲は暗黙の制限があるとの見方もある。

<恩赦は予防的に出せるのか>

将来の行為は恩赦できない。ただ、まだ訴訟手続きに至っていない行為を恩赦できるという意味では、予防的に出せるかもしれない。

ニクソン氏への恩赦はその一例だが、他にもある。カーター大統領は1977年に、ベトナム戦争の懲役忌避者数十万人を予防的に恩赦した。

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